第59話 ペーパー会議
「さ、ヨウ君行きますよ。君の車はどこかな?
じゃ、みゆきちゃんまたね〜。」
ヨウが何か言う前に、ペイがどんどん話を進め、勝手に歩き始める。というか、小走りだ。
「えっと、確か……。あ、あれですね!!」
なぜ知っているのか、ペイは駐車場に停めてあるヨウのクルマを見つけ、早くドアの鍵を開けろとせかす。戸惑いながら追いついたヨウが鍵を開けると、いつの間にかすっと車に乗り込んでいた。
ものすごい早業だ。
ペイは細い。というより細長い。軽自動車だから、膝が思いっきり曲がって、体育座りみたいになっている。ペイは、そんなことを少しも気にせずに、ヨウに言葉を放つ。
「さぁ、行きますよ!!才能が眠っている高校生20人ですね。時間がありません。さっさとしないと社長に叱られてしまいます。会議も移動しながらやりましょう。これが『アオソラ』名物ペーパー会議です。」
……。
『アオソラ』の社員も大変なのね。まぁ、社長があんな人だからなぁ。
すでに昨日の夜、テンに語った話が、ペイによって動き始めていた。
「で、どこに行けばいいですか?」
ペイは考える時間を与えてくれない。
とにかく要求に応えようと、ヨウはカーナビの検索ボタンを押した。
「あ、カーナビはいらないです。とにかく勘で走りますよ。あと3ヶ月しかないんですから。さ、とにかく、しゅっぱ〜つ。」
ヨウは駐車場代を払うと、夢中競馬場の近くを流れる夢中川沿いに車を走らせた。
「……。
ところで、ヨウさんはお金持ってますか?」
車を走らせている間、一瞬静寂の時が流れた後、不意にペイがたずねてきた。
「どれくらいですか?」
ヨウがたずね返す。
「500万くらい必要かなぁ〜。」
額を聞いて、思わずハンドルを握る手がおぼつかなくなり、車が右に左に蛇行する。
「そ、そんな大金ないですよ、テンさんが準備してくれないんですか?」
「テンリーグを坂本造園が作るから手伝えって言われてるだけですよ。テンリーグを高く買ってもらいましょう。」
ま、まじか……。
確かに500万円ポケットにある。まだ換金してないけど……。
「あの、それでそのお金で何するんですか?」
「そんなの決まってるじゃない、調査費用ですよ。日本中の美味しいものを食べに行きましょう!!あ、それと温泉も行きますよ〜。」
おいおいおい……。
この人、絶対に俺が500万円持ってるって知ってるぞ……。




