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第57話 さかつくの未来②

「では、再確認しましょう。

坂本造園の目標は、再来年度の天皇杯に出場して制覇。うちのエースが高校を卒業するまで」


「勇気君だね」


「……、なんか、いろいろ知ってるんですね」


「そりゃ、そうだよ。

僕だって、さかつくOBなんだから。これでも気にしてるんだよ」


 どうにもテンのペースに乗せられてしまう。

対抗するためにも、ヨウは目の前のビールを飲み干し、おかわりをする。酔いとともに、舌も回りだす。


「テンさんのやりたいことは、バトルコロシアムですよね。酔っ払いの妄想を始めましょう。


 まず大前提として、テンリーグの収益源は、リーグ運営会社の本業で賄うことにしましょう。テンリーグ参加者は、そこで働くことも可能です」


 テンは、同業他社の相談に乗っている町工場のオヤジのように深く親身になって話を聞いている。


「テンリーグには、登録すれば誰でも参加できます。サッカーで活躍すれば、リーグでしか使えないポイントがもらえる。ポイントがあれば、リーグ内で暮らせる。足りなければ、働いて稼ぐ。

それだけです」


 ヨウのテンションが、だんだん上がってきた。


「あ、監督枠やコーチ枠も作りましょう。

どんなメンバーでもいいので、規定を満たしたチームに所属しないと試合に出られない。

監督、コーチ、選手、救護班。役割があれば、それぞれにポイントが貯まる。」


「ふ〜ん」


 テンはグラスを傾け、泡だけを一口すすった。

形だけ酒の席に出ることに慣れているような所作だ。


「続けて」


 テンがにこにこしながら、続きを促す。


「あと、サポーターとして声を上げるだけでポイントゲット。サポーターポイントで衣食住をまかなう人も出てくるかもしれないですね」


「みんなサッカーをやりに来てるんだから、ヨウ君の言う本業で働いてくれるかねぇ」


「それは制度の作り方次第でしょうね。

より上のカテゴリーに所属できたら暮らしていける。上のカテゴリーで手に入るものが多ければ、働いてしがみついて滞在したくなると思いますよ」


「ふ〜ん。それをたった5000万円でできるの?」


「分かんないですよ。テンさんのやりたいことのスケールもスピード感も。私がいまやれるのは、まず小さく始めて、構想を膨らませるのが限界です」


「小さいねぇ、ヨウ君……」


「ちょうど、ユースとかでうまくいかない子を獲ろう、という話が出ていたんです。

 彼らを青空市に呼んで、高校に通わせながら、

テンリーグ構想のテストケースにするっていうのはどうでしょうか?5000万円ってのは、高校生20人くらいを生活費含めて卒業させるために必要な費用かなと。

 あ、言っときますけど、全部適当に話を進めてますよ。まさにブレストです」


「わかってるさ。見栄えのいいプレゼンとか、とってつけたようなエビデンスの提示には、僕はもう本当に飽きちゃってるんだよ。たくさんの人から売り込みを受けたり、自慢されたけどさ……。

……全員、500万円の馬券も当てられない連中さ」


 俺もそっち側だと思うんだが……。

今日はずっと、冷や汗が止まらない。


 え〜い。もっと飲もう。


 ヨウはビールをさらに注文した。


「で、ヨウ君はどうしたいの?」


「わさびの望む居場所を作りたいだけですね。

そこに、いきなり大資本のテンリーグがど〜んと入ったら壊れちゃう……。

壊れないように、テストケースを経てやらせてください。テンリーグについても、リーグの中で収益を上げて自活する形にしないと、テンさんの気分次第で終わっちゃう。

それこそ、バブル期に作ったリゾートホテルみたいな廃墟の出来上がりですよ」


「じゃぁ、僕はどう絡むの?」


「まぁ、これならリーグは大丈夫かな、ってのが完成したらテンリーグを買収してください。

たまには、そういう夢の買い方をしてもらえると、

私としてはやりやすいですね」


「わさびちゃんの望む居場所か……。」


「5000万円払えばできるんだね!じゃ、やろう」


 え!?


 ヨウは、酔っ払いの絡み酒のような、中身のあるような、ないような熱弁をした結果、坂本造園への5000万円の出仕を受けることになった。

 少なくとも、総務課長としては、十分な仕事を果たした形だ。


 む、むちゃくちゃだな……。


 ヨウは、ぼ〜っとしながらテンを見つめている。


「今日、君に会えて良かった。

本当は、この後、部下にテンリーグ発足を指示するところだったんだよ」


 テンは、そう言ってから、にやりと笑った。


「さて、明日から僕の左腕と一緒に仕事をしてもらうよ!」


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