表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/61

第54話 テン・カウント

「とりあえず、僕の会社においでよ。」


「……聞いてます?」


 ヨウが呆れながら、テンに何度目かの否定をした。


「う〜ん、ちょっと待ってね。」


 テンはおもむろにスマホを取り出し、すらすらと画面を操作した。


「あ、もしもし。僕だよ、僕。テン。

あのさ、君のところのヨウ君。ちょっと借りるね。

うん、うん。じゃ、よろしく。」


 ガチャ。


 あまりにも一方的な通話を終え、テンは何事もなかったかのように振り返る。


「レンタル、いいってさ。」


「……もしかして、イレさんに電話してたんですか?」


「うん、そうだよ。」


「今の電話、かなり一方的でしたよ。 

私から、改めて電話します。」


 ヨウは苛立ちを隠さず、スマホをズボンのポケットから取り出した。


「それはやめたほうがいい。」


 テンは穏やかな声で言った。


「イレ君とは話がついてる。今、君が連絡すると話がややこしくなる。もちろん、葵ちゃ……いや、わさびちゃんにも。」


 なぜだか、わさびの存在まで知っている。

その言い直しが、妙に引っかかった。

穏やかな表情。だが、その瞳の奥に、感情らしいものは見えなかった。


「どうしてですか?

私は、やりかけの仕事が山ほどあります。

同僚にも迷惑がかかります。」


「迷惑かければいいじゃない。」


 テンは、まるで天気の話でもするように続ける。


「でもさ、君がいなくても会社は回る。それが組織ってものだ。」


「……そんな言い方、初対面の人間に向かって言うことですか!」


 なぜ、初対面のこの男に。 

なぜ、こんな拘束じみた真似をされなければならないのか。


 怒りと戸惑いをそのままぶつけるように、ヨウは食ってかかった。


「まぁまぁ、落ち着きなよ。」


 テンは肩をすくめ、にこりともせずに言った。


「君の敵にはならない。安心していい。」


 その言葉のどこをどう信じればいいのか、ヨウには分からなかった。

それでも、スマホをゆっくりとポケットに戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ