第52話 推しのためなら
「推し~~~~~!?」
乱入してきた夏海が、まくし立てるように美香に詰め寄る。
「だ、だ、だ、だ、誰ですか……。ま、ま、ま、まさ、まさか、ももも、もんちゃんさん?」
「ももももんちゃんさん?」
美香が、きょとんとして答える。
「私の推しは、未来様一択です」
「え? 未来?たしかにあいつは人気あるけど、この町では、勇気か真さん(もん弟)で二分してて、未来の人気はいまいちっすよ?」
「この町の人気は関係ありません。私の推しは未来様。それ以外はジャガイモです」
「ま、マジっすか」
「でも、彼はまだ高校生よ。だいぶ年下好きなのね」
「年齢は関係ありません。とにかく、彼のために生きているのです。
あ、勘違いしないでくださいね?レベルの低いストーカーまがいの推し活とは、わけが違いますから。私の推し活は、崇高な思いを具現化しているだけなのですから。」
「そ、そうなのね。一体なんで、そんなに?」
「それは、私が社会人として銀行に勤め始めた頃、仕事がうまくいかず、公園でひとり悩んでいたときのことです。
公園でサッカーをしていた少年時代の未来様……。彼にかけられたひと言を、私は胸に刻んで生きています。
未来様にお声がけいただいたその日から、仕事も、それ以外のことも、とにかくすべてが良い方向に向かっていったのです」
あ~、未来君、天性の応援者だったのね。
そう考えれば、神じいさんに未来が選ばれたのも頷ける。
「で、これからどうするの?」
わさびが尋ねる。
「とにかくこの町に家を見つけて、できるだけ近くで暮らしていきます」
「仕事は?銀行は辞めて来ちゃったんだよね?」
「そんなものはどうでもいいんです。幸い、私には絵師という裏の顔があります。SNSでそこそこ稼げていますので、この町で未来様と共に羽ばたいていきます」
「そ、そうなんだ。じゃぁ、明日、うちの社長に頼んで家を探してもらおう。今日はここに泊まってね」
こうして美香と出会った。




