第40話 青空湖畔花火大会 ②
ヨウが外向けに『あおい庭園』を紹介するとき、”200メートルのトラックがある学校の校庭と同じくらいの広さ”と説明している。
つまりは、一般的な小中学校の運動場と同じくらいの広さになる。全校生徒600名の中規模な学校の運動会を思い浮かべてもらえば分かるが、この広さなら総勢1000名以上のイベントも不可能ではない。
そう考えれば300名という規模はゆったりしたイベントなのだが、『まちカフェあおい』にとっての300名は、関係者だけでイベントを安全に進めるためにギリギリの人数だった。
開催規模については、来年以降の課題とする。
出店は、全部で7店舗設営した。
A. お好み焼き by 『お好み焼き てっぱん』
A. そば&天ぷら by 『蕎麦 やまだや』
A. アルコール&ソフトドリンク
by 『酒屋 こだわり』と『喫茶 みのり』
B. 花飾り by 『花屋 ひまわり』
B. フルーツ飴 by 『青空いちご農園』
B. 射的ならぬ蹴的 by 『さかつくサッカー部』
B. さかつくグッズ販売
by 『本・文具 ブンチン堂』
飲食エリア(Aの出店)を入口付近に、お楽しみエリア(Bの出店)を庭園の奥の方に配置した。
まだ花火までは時間があるため、早くも出店が賑わっている。
そば屋は博多の屋台のような作りにしてある。
厨房を真ん中にして、コの字にカウンターを配置。カウンターの上にはたくさんの種類の山盛りの天ぷらを置いた。値段も思い切って、何個取っても500円と大奮発した。
お客さんは、それらを『食べ歩きセット』に詰め込むと、大きな木陰の下に敷かれたゴザの上で食事ができる。それらをつまんでもらっている間に、お好み焼きを待つ仕組みにした。
これでお祭り特有の行列しなくて済む!
なかなかに好評で、まだ夕方なのにおじさん達の酒盛りが始まっている。
一方、若者向けには、ユミの花飾りやフルーツ飴、さかつくの景品狙いのゲームも大人気だ。
カップルが、ユミの花飾りを楽しそうに選んでいる光景は実に微笑ましい。さかつくメンバーの蹴的(コルク銃の代わりにボールを蹴る)も、子供たちに大人気。さかつくグッズも……まぁ……ちょびちょび売れている……。
いつか本当にJリーグ昇格したら、プレミアになるかもね。
「みなさん~。本日は、『あおい庭園』へのご来場、ありがとうございます~。今日は天気に恵まれて、ほんとうに嬉しいです~。」
活気のある空気の中、庭園中に張り巡らせたスピーカーから、アリスのかわいい声が響き渡った。
「これから~、本日の『青空湖畔花火大会』のプログラムをご紹介します~。みなさんお手持ちの『食べ歩きセットVer.1.1』の巾着袋を裏返してください~。」
お客さんは、「なんだなんだ?」と巾着袋を裏返し始める。こういうイベントで、アナウンスの声にここまでみんなが反応することはないのだが、アリスの声がとても魅力的なのでしっかり伝わっている。
「はい~。気づきましたね~。この巾着袋は、わざと裏返してみなさんにお配りしていました~。」
巾着袋を裏返してみると、白地に大きく”第48回 青空湖畔花火大会”と書かれており、花火のプログラムが印刷されていた。
「この花火大会は~、古より果物と共にある青空市の、豊穣を願うお祭り『本山祭』を起源にしています~。この町の豊穣を願い、たくさんの花火が打ち上げられます~。花火の打ち上げ開始は、18時30分からになります~。なので、17時30分くらいになったらみなさん観る場所を探してください~。カフェ前広場で芝生に寝転んで観るのが私のオススメです~。」
今はちょうど17時20分くらい。
みな、思い思いに場所を探し始める。
*****
18時30分。
ボシュ
静まりかえった会場に、湖の方から発射音が響き渡る。
ピューーーーールルル
ドドドーーーーンンン
みなが固唾を飲んで見守る中、眩い閃光とほとんど同時に体がビリビリするほどの音が衝撃とともにやってきた。
ワァァァァァ!!!!!
みなが歓声をあげる。
ピュ、ピュ、ピュピュー
ドドドドドドドーーー
続けて、これでもかというくらいの花火が打ち上がり、薄暗くなってきた青空湖を色とりどりに照らす。
5分ほど続いた後、唐突に静寂が訪れる。
「みなさん~。『第48回 青空湖畔花火大会』が始まりました~。プログラムをご覧ください~。
オープニングは、青空市のブルーベリーの実りをイメージした大スターマインでした~。キレイでしたね~。この庭園から花火を観るのは今年が初めてなんですが、青空湖に花火が映り込んで、キレイな青い色に包まれた気がしました~。
……すご〜くキレイでした~。」
アリスがうっとりと感想を述べ、お客さんも、うんうんと共感している。
「さぁ、続いての演目は、青空商店街協賛の花火です~。20号という大きな花火を打ち上げます~。
なんとこの花火、70キログラムもあるんだそうです~。打ち上げたら、500メートルもの大きなお花が咲くんです~。今日は、この20号が3回打ち上がりますので要注目です~。その1回目が、あと少しで打ち上がりますよ~。打ち上がったら、お決まりのあれを叫びますよ~。」
あぁ、あれな!とみんなも理解してくれたようだ。
「じゃぁ、練習しますよ~。せ~の~。」
「「「た~ま~や~」」」
それから約2時間は、休む暇もないくらいに大迫力の花火が頭上と湖を染め続けた。
運営側も警備をしたり、迷子対応などをしながらも花火を十分に堪能することができた。
トイレの混雑等もなく、あっという間に花火大会の終了の時間が訪れる。
ピュ、ピュ、ピュピュー
ドドドドドドドーーーンンン
ンンンンン………………………………
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「みなさん~。
花火大会は、これで終了となります~。今年もブルーベリーがたくさん実っていますね~。
実り多く、楽しい夏となりますように~。
それでは、閉園は23時です~。今からは、ゆっくり余韻を楽しみましょ~。私は未成年なので、これでお仕事おしまいで〜す。」
ワァァァァァ
パチパチパチ
拍手喝采が起きた。花火は確かに素晴らしかったけど、アリスの解説が素晴らしさを何倍にもしてくれた。アリスは、本当に天才だ。
あぁ、俺なんでここにいられるんだろう?本当に人生は分からんよ。
さて、これからは酒盛りだ!と言っても、社員は我慢。未来と勇気は未成年なので、アリス達と余韻に浸る。
「ヨウは酔っ払うのが仕事だよ。」
「まじ?」
「そうだよ。ちゃんとお客さん達を楽しませてきてね。歩けなくなったら置いてくから、心置き無く飲んでね。」
うわ~。相変わらず、わさびさんは厳しいな~と思いつつ、ビール瓶片手に忙しく挨拶回りをした。
*****
「あ、あの……。もんちゃんさん……。う、嬉しいっす。」
いそいそと仕事をしていたはずの夏海が、もじもじともんちゃんにお礼を言っている。
ユミの手伝いをしているもんちゃんが、通りがかった夏海に気づき小さなヒマワリの髪飾りをプレゼントしたようだ。
「やっぱりヒマワリと言えばなっちゃんだもんね。素人の俺が作ったやつだから無料!」
真っ赤になって、恥ずかしがる夏海であった。
隣の花火エリアでは、アリスと未来、勇気が線香花火をしている。
各々、青春を謳歌しつつ、夜が更けていった。




