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第21話 まちカフェ あおい

「わさび、場所はココに決めたよ。」


 ヨウは、わさびが作ったオススメポイントのひとつを指差す。


「だよね。ユミちゃんのこともあるけど、とにかく場所がいいよね。」


「じゃ、まずは、俺が何をしようとしているか共有するよ。」


 ヨウは、オープンカフェプロジェクトと書かれたノートを広げる。


 オープンカフェプロジェクトの目的

 ・生活圏内の活用できていない(雑草が生い

  茂る)場所を、オープンカフェとして活用

  する。

 ・ビジネスモデルとして成立させて、町の

  美化につなげる。


「お客さんには、何を求めて来てもらうイメージ?」


「面白いと思うものは、こんな感じかな~」


 ノートに書いたメモ書きを見せる。


 ・勉強する空間

 ・生の音楽を聴く

 ・ペットと過ごす

 ・スポーツなどの中継を観戦する

 ・ダーツなどのゲームをする

 などなど。


「よし!!ヨウ、みんなを集めよう。」


「だじゃれ?……で、何でみんなを集めるの?」


「目的は良いんだけど……やろうとしてるサービスの発想が貧困すぎる。」


 ココに集合!とわさびが地図を指差す。


「私は商店街に行って準備するから、ヨウはさかつくメンバーとイレさんを呼んでね。時間は18時からね!」


「18時!?いま16時だから、かなり急がなきゃ。」


 ヨウは、まず、もんちゃんに連絡した。


 *****


 日も長くなってはきたが、辺りは薄暗くなろうとしている。これから、わさび提案の『オープンカフェプロジェクト設立討論会&食事会』を開催する。


 食事と飲み物は、わさびが商店街の店に声かけして準備した。


 わさびの指定したココは、雑草生い茂る草むらだったのだが、坂本造園の職人達がやって来て、あっという間に開けた場所を作ってしまった。

 照明や机、椅子は、もんちゃんを中心にしたさかつくメンバーが準備してくれた。


 たった2時間で、ちょっとしたお祭り会場のようなものができあがり、約束の18時になった。


「え~。あ、あ。み、みなさん。本日は、忙しい中お集まりただき…………」


「ヨウさん、咬みまくり!!」


 もんちゃんが叫ぶと、参加者から笑いが起こる。


「じゃ、私から。」


 わさびがマイクを奪い取る。


「今日は、みなさんありがとうございます。

私たち、坂本造園は、新しいビジネスモデルとして、この草むらにオープンカフェを作りたいと思います。

 この場所を目指して、たくさんの人が青空駅に訪れ、そして笑顔で帰っていく。そんな未来を想像してみてください。私たちはこの草むらに、楽しくて、喜びに溢れた夢を見ています。

 そして、今日集まっていただいたみなさんは、オープンカフェプロジェクトメンバーです。一緒に楽しい夢を見ましょう。そのために、たくさんの楽しいアイデアを教えてください。

 みなさんのアイデアをいっぱい取り入れた、この町一番の場所にしたいと思います。」


 拍手が沸き起こる。わさびさん、すご。


「さて、今日の参加者を紹介します~。」


 なぜか、アリスが司会を始めた。


「青空市議会議員の山下さん~。

 駅前商店会長さん、3名の理事のみなさん~。

 青空町内会長さん、4名の役員のみなさん~。 

 青空駅長さん~。

 青空中学校の校長先生、PTA会長さん~。

 お好み焼き『てっぱん』の親父さん~。

 酒屋『こだわり』の親父さん~。

 お蕎麦『やまだや』の大将さん~。

 本、文具の『ブンチン堂』の店長さん~。

 挽きたてコーヒー『みのり』の奥さま~。

 お花屋『ひまわり』の店長さん、ユミさん~。

『AO大学サッカー部』の芦沢さん~。

『青空高校』から、12名の女子高生のみなさん~。

『坂本造園』から、社長さん、職人さん、

 さかつくサッカー部のみなさん、計30名~。


 全員で63名のみなさんです~。」


 アリスの司会はお世辞にも上手とは言えないが、そのおっとりした雰囲気に癒されて、みんな聞き入ってしまう。アリスもすごい才能の持ち主だな。


 参加者には女子高生がたくさんいるけど、みんな勇気のファンなんだってな。うらやま。

 あと、もん弟もいるな。手伝いさせられてた。一応、バイト代払うらしい。


「次はすぺしゃるサンクス~。

今日は、食べ放題、飲み放題です~。商店街のたくさんのお店が協力してくれました~。」


 オォォォォォ


 拍手喝采だ。


「それから、みなさんにはこのTシャツを着ていただきます~。このTシャツは、『ブンチン堂』さんが作ってくれました~。」


 黄色いTシャツが、どんどん配られる。

Tシャツには『まちカフェ あおい』とプリントされている。


「このプロジェクトは『まちカフェ あおい』プロジェクトと命名します~。まちのカフェとして楽しい場所になって欲しいから、私が名前を決めちゃいました~。『あおい』は、わさびさんの本名です~。」


 またも、拍手喝采だ。名前に異論はないみたいだ。ヨウと全く関係なく、どんどんプロジェクトが進化していく。


 全員にTシャツが配られたところで、おじさんが前に出てきた。


「え~。この間の青空中学校100周年の記念Tシャツですが、オレンジと黄色間違えて発注して困ってたんです。こうしてお役に立てて良かったです。」


『ブンチン堂』の店長さんがマイクを受け取り裏事情を語ると、『そうだったんか』『言ってくれよ~』『よし、次もお前んとこに頼むからな!』とそこかしこから声があがった。


 わさびの影響力

 もんちゃんの機動力

 アリスの魅力

 イレさん、てっぱんおやじの人脈


 わさびが思い付いてから、たった2時間でお祭り会場ができあがった。みんなすごすぎます。


「ということで、63名のみなさんに集まっていただきました~。

 みなさんの今日のお代はいりません~。

ただし、タダではありません~。みなさんには、私たちのプロジェクトにアイデアを出してもらいます~。それでは、プロジェクトの紹介を、坂本造園のプロジェクトリーダー松本さんどぞ~。」


 1人プロジェクトだけどね。


 ヨウは、マイクを受け取る。


「え~。簡単に言うとですね…………。坂本造園がこの辺りを綺麗にするので、カフェを作らせてください。そして、たくさんの人がカフェに遊びに来たくなるようなアイデアをください。」


 ん?あんまり反応ないぞ?

 すると、再びわさびにマイクを奪い取られた。


「つまりはね。この場所が笑顔溢れる場所になるような、そんな夢を一緒に見ましょう。そんなアイデアをみんなで出しあいましょう。」


 俺の立場って…………。


「それでは、ルールを説明します。まず、みなさん、今日は好きなだけ飲食を楽しんでください。ただし、必ず全員、この場所が楽しい場所になるようなアイデアを言ってください。

 アイデアは、1人3つまでです。どんなにご飯が美味しくても、他人がアイデアを発表している時はちゃんと聞くこと。

 そして、決してアイデアに批判や反論をしないこと。これが一番大事!絶対に守ってください。」


 ブレストって、そうは言っても必ず批判しちゃうやついるよね。前の会社の上司で、『何でも言えブレストだ』と意見を求められたので発言したら、『それは無理だろ』といきなり言うやついたな。その後の会議は、全員上司の顔色を伺った発言しかなかった……。つまり、『上司のあなたの意見に賛成です』の意見しかでなかった。

 挙げ句の果てに、なんの成果もあげられない原因は、お前みたいにズレたやつがいるせいだなんて言って俺を更正しようとしてきたな。なんの宗教だっちゅうの。


「さて、始めます~。」


 説明が終わる頃には暗くなり始めたので、もんちゃん達が持ってきた投光器をガンガン点灯していった。


「じゃ、帰りが遅くならないように、そちらの女子高生から始めます~。

 じゃ、一番左のテーブルから~。えりちゃんから左回りでお願いします~。」


 わさびがマイクを持っていく。


「えっと。SNS映えするパンケーキを売る。」


「はい、次~」


「スマホの充電しに来る。」


「みんなで勉強できる場所にする。」


「はい、次~。がんばって、どんどんアイデアください~。」


「えっと、じゃ、カラオケしに来る。」


 お~。ぱちぱちぱち


 わさびが事前にサクラを仕込んであり、カフェっぽくなくね?というアイデアが出たら拍手で褒め称えるようにしてあるらしい。

 こうすることで発言しやすくできる。批判するやつも出てこない。


「やだ、勇気君も拍手してくれてる。」


 女子高生達に、がぜんやる気がみなぎってきた。ここからはカオスになり、拍手は鳴り止まない。


「花火ができる」


「えっと、学校行ったことになる。」


「受験免除になる。」


 もうむちゃくちゃだが、会場はスタンディングオベーションだ。


 やっと女子高生ステージを抜け、商店街のメンバーになる。


「うちの商品を出前で食べれる。」


 お~。現実的だね。さすが商売人。


 どんどんアイデアが披露され、次はヨウに惚れてるユミちゃんの番だ。


「あの……」


 おとなしくも、みんなを引き付ける声だ。色っぽくもあるな。


「お花を買って、そのお花をテーブルに飾ってお食事ができる。」


 お~。ぱちぱちぱちぱち


 これにはサクラは不要だった。

確かに、そういうサービスを知らない。

SNSで考えても、個性ある花の選び方をアピールできる。『誰かが作ったおしゃれな場所に来ている私はおしゃれアピール』よりも圧倒的におしゃれだ。


 かわいいし、色っぽいし、センスいいし。

惚れてしまいそうです…………。


 そんなこんなで、100出しも終わり、楽しい宴が本格化していく。


 そのあとは、本当に楽しかった。

議員さんやら、商店街のみなさんやら、たくさんの人たちとたくさんの話ができた。


 今は会の終盤、ヨウともんちゃんと2人でのんびり飲んでいる。


「まことの野郎め~。」


 もんちゃんが愚痴を言う。それというのも、勇気ファンとして訪れた女子高生達は、もん弟にもメロメロになってしまったからだ。

勇気ともん弟は、女子高生達に囲まれていた。


「ま、もんちゃんにも春は来るさ。」


「ヨウさんは、わさびさんがいるから余裕なんすよ。」


「だからさ、そういうんじゃないんだよ。いろいろあるのよ。それにしても、もんちゃん達の行動力は半端ないね。電話してから2時間でここまで仕上げちゃうなんて。そもそも、Tシャツ2時間で作れるのかな?」


「実はさ、昨日、ヨウさんがてっぱんを手伝ってる間、わさびさんから今日の準備をお願いされてたんだ。『ブンチン』さんにTシャツが余ってることも、わさびさんは知ってたみたいだよ。」


「ま、まじっすか!!もう、俺はいらないね……。」


「いやいや、そんなことないもんね。わさびさんが言ってたんだ。『私達は、お祭りみたいに楽しく動いちゃうけど、本当に実現するのはとっても大変だと思うの。

 きっと私達は夢を見るだけで叶えられない。でも、私達が見た夢をちゃんと伝えれば、ヨウはきっと叶えてくれると思うの。だから、明日はみんなでがんばろうね。』だってさ。

 確かにそうだ、ヨウさんに夢を伝えよう!ってことで、今日の朝からみんなで動いてたんだ。

 あ!?飲み食い放題と、Tシャツは経費から出せと社長が言ってたよ。」


 えっと、一体いくらくらい使ったんだ?プロジェクト費用(100万円)足りるかな~。

 それにしても、こりゃ、責任重大だ。

わさびの責任取るだけじゃ、すまなくなった。


「ま、気楽に行こうよ。俺たちは、ヨウさんについてくもんね。」


 もんちゃんは、本当にいいやつだ。


 *****


 片付けは、イレさんの指示で、翌日さかつくメンバーがやることになった。


 けっこうゴミが散らばっている。


 なんかさ、大量生産、大量消費の使い捨て社会って、ゴミの廃棄とか考えたらかえって非効率なんじゃないか?


 野性動物にごみ問題なんてないもんな…………。


 よし。カフェのコンセプトに、『ごみを出すことで、我々の貴重な時間を無駄にしないようにする』を入れよう。

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