第20話 集まりはじめたもの
「食事は楽しめた?」
楽しい、楽しい『てっぱんの日』から帰宅した2人は、荷物の片付けをしながら会話を始めた。
「もう最高、楽しかったよ。勇気君も、アリスちゃんと一緒で嬉しそうだったな。あの2人、あとちょっとなんだけどね~。」
「え?アリスには好きな男がいるって言ってたじゃん。」
「いろいろあるのよ……。
それにしても、ヨウがお店を手伝ってくれたのは嬉しかったけど、もっと丁寧にお皿とか取り扱ってよね。洗い方も雑だから、やり直したんだからね。」
「す、すいません。」
完全に力関係ができあがっている。俺たちゃどんな関係なんだ?
「ところで、わさびに話があるんだ。」
片付けを終えると、ヨウはわさびを縁側に誘う。散りかけの夜桜を眺めながら、イレさんの夢の話をした。
「……というわけなんだ。」
「なるほど、面白そうね。じゃ、私も仲間ね。」
簡単に言うな~。
「あ、そういえば、今日確信したんだけど、3人目の『能力者』を見つけたよ。」
「え?誰?」
あまりに突然の話に、ヨウも身構える。
「勇気君だよ。」
「マジか!どんなチカラ?」
「『周りの期待を、自分にプラスするチカラ』」
「なるほど……。どおりで天才と言われるわけだ。」
「本人は気づいてないから、内緒だよ。」
天皇杯の目標といい、勇気にはいっぱい秘密にしないとな。ナイーブだからな……。
「つまりさ……俺と、わさびと、勇気。それに、前に横浜で見たあいつも含めて……何かが、少しずつ集まり始めてるってことだよな。」
なんか俺以外若いな、とヨウは思う。
「で、俺達のチカラは、会社の目標に活かせるんだろか………。」
「ヨウ。成せば成るよ。やろう。」
「んな簡単に~。」
「大丈夫、ヒントもあったんだよ。」
「え?どんな?」
「なぜか、かばんの中からこれが見つかりました~。」
来週の川崎フューチャーズの試合チケット2枚が出てきた。
「じゃぁ、とりあえず行ってみようか。」
「ヨウはダメだよ。練習あるでしょ。試合は、アリスちゃんと行くことになってるから。」
「そ、そっか。アリス人選もヒント?」
「そう。アリスちゃんと一緒にいる時に、かばんからチケット見つけたんだ。
見つけた瞬間、アリスちゃんに電話がかかってきて、川崎に行くことになったの。なぜか失くしたお財布が、川崎で見つかったんだって。しかも、スタジアム最寄り駅の交番だよ。」
……神じいさん、財布盗んじゃいけませんよ。
川崎か。やっぱり、もう1人の『能力者(高校生)』につながるのかな?最初は、横浜SCのスタジアムで見かけたんだもんな。となり街だし、あり得るだろう。
「わかったよ。気をつけて行ってらっしゃい。」
俺は、オープンカフェを成功させなければ。
「わさび、オープンカフェのアイデア相談するからね。」
「いいね!私も明日は歩き回ろう。」
「毎日、働きづくめで、休みの日も歩き回るの?無理したらだめだよ。」
「楽しいからいいの。」
ほんと、わさびはすごいな~。
「じゃ、俺も行くかな。」
「ヨウはダメ、おじいさんなんだから、家でおとなしく体力回復させなさい。ご飯はキッチンに置いておくからね。」
「うへ~。参りました。」
*****
次の日は、家でのんびり過ごした。
夕方、わさびが帰ってくると、いくつかのポイントを提案してくれた。
「ヨウ、ココと、ココと、ココと、ココが良いと思うよ。特に、ココがおすすめだよ。」
わさびが地図を広げ、丁寧にヨウに説明する。
「たった1日でよく調べたね。的確にポイントついてるよ。」
「ヨウの資料見ながら歩いたからね。」
「ところで、なんでココがいいの?」
「ココの近くのお花屋さんのユミちゃん、あっ、店員さんがね、ヨウのこと好きなの。かわいい女の子だよ。」
「え……え~~~~~?なんで??」
「散歩中にちょっと立ち寄って世間話したら、すぐに分かっちゃった。仕事中にヨウと話してるうちに、好きになっちゃったみたい。
アプローチしてごらん。すぐにラブラブになれるよ!!」
あ~。駅前の花屋『ひまわり』の店員さんか。
確かに、いつも、いろいろ教えてもらってるな。20歳前後の、ちっちゃくて、おとなしくて、花を愛する清楚な感じの女性だったな。
「あんな、かわいい娘が俺のことを。誘惑に負けちゃいますよ…………。
だいたい、わさびはいいのか?俺に恋人ができたりしたら、また不幸が始まるんじゃないの?」
「別に恋人がいたって、寄り添えばいいだけじゃない。」
うわ、これはトラブル未来しか目に浮かばない。そもそも、ユミちゃんは、こんなおっさんとじゃ釣り合わないよ。
……いや待て。俺とユミちゃんの親、年齢ほぼ一緒だろ。現実見ろ、ヨウ。
神じいさんのルールを思い出すと。わさびは、神の能力を『能力者』と寄り添い、世の中を面白くしなければならない。ルールから外れると、わさびに不幸が訪れる…………。
わさびのおかげで今があるんだ。わさびが不幸にならないようにしよう。
「と、とにかく、ココのポイントで始めよう。駅から近いし、途中に商店街もあるし、狙ってた場所の1つだったしね。」
「ユミちゃんと仲良くね!!」
「あのさ……俺、わさびさんに嫌われてないかな~。」
「私もヨウのこと好きだよ!!」
お~、元気いっぱいに告白してくれた。
初めて会った時から比べると、ものすごい進歩だ。
でも、うん。なんか違う気がする。恋人ではない好きなんだろうな。
って、俺はなに考えてるんだ~。どうしたいんだ~。ハーレムか?ハーレム作りたいのか~?
ヨウが悶絶していると、わさびに見透かされて軽蔑の目で見つめられた。
だってしょうがないでしょ。
なんか、周りに美女が増えてきたんだもん。




