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第11話 インターセプター

 さかつく部員は、毎週火曜日に休日をもらえる。

県リーグは原則として日曜日に開催されるため、

月曜日の午前中に簡単な反省会とケガの確認を行う。午後は仕事道具やサッカー用具の点検と整備をして解散し、火曜日を完全オフにする、という勤務サイクルになっていた。

 他の職人さん達は当然仕事に行くわけで……会社でスポーツをやらせてもらうってのは、本当にありがたいことだなとしみじみ感じる。


 何はともあれ、月曜の夜は、楽しい楽しい『てっぱんの日』である。『てっぱんの日』は、さかつく部員だけでなく、坂本造園社員なら誰でも特別価格なので大にぎわいだ。『てっぱん』にとって、大忙しの一晩である。

 ヨウとわさびが、初めて『てっぱん』に来た日もちょうど月曜日だった。どうりで、さかつく部員がわさわさ飲み食いしてたわけで、本当に人生って、縁の巡り合わせだ。


 一方、わさびはビールジョッキを両手に抱えて忙しく動き回っている。

 昨日の日曜練習では、さかつくでマネージャーをやりながら食事を作り、今日も朝から働いている。


 わさび、無理してないかなぁ。そもそも、わさびだって社員なんだから、くつろぐ側なんだよ。っても聞かないか……。まぁ、当の本人が楽しそうに仕事してるからいいのかな~。


「ヨウさ~ん、こっちで飲も~、作戦会議だ!!」


 勇気ともんちゃんに呼ばれたので、ヨウは席を移動し、3人で『さかつくスペシャル』を頬張りながら作戦会議をすることになった。


「で、ヨ、ヨウさん……わさびさんとは、いつご結婚予定で……。」


 もんちゃんが、真剣な眼差しでヨウに問いかけてくる。作戦会議というから、こっちのテーブルに移ってきたんだけど、恋の作戦ですか?


「いやいや、俺とわさびは恋人関係じゃないよ。」


「え~。じゃぁ、なんなんすか?」


「う~ん……。うまく説明できないんだけど、同志?」


「ど、どうし……?????」


 もんちゃんは、同じ屋根の下に暮らす同志?恋人じゃない?……とつぶやきながら、ヨウに詰め寄る。


「じゃ、じゃぁ……。俺が恋人に立候補してもいいんすか?」


「決めるのは俺じゃないよ。」


「よっしゃーーーーー!!ぜってー幸せにしてやるもんね~~~~~。」


 そう叫ぶと、もんちゃんは、席を飛び出して、わさびに告白をしに行った……

と思ったら、帰ってきた?


「フラれたもんね………。」


 瞬殺だった。


 隣の席でガックリ肩を落とすもんちゃんは、ぶつぶつとつぶやき始める。


「ヨウさんが羨ましいっす。毎日、あんな美女と……。」


「もんさん、サッカーの作戦会議するんじゃないの?」


「うるせ~、勇気てめえ。おめ~にだって、アリスがいるじゃねぇか!!ちくしょ~、あんたらにモテない男の悲しみはわかんねぇよ。」


「ア、アリスとは何でもないですよ……。」


 今度は、勇気が、顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。


 勇気、青春だねぇ。もんちゃんの気持ちも分かるよ。俺は、もんちゃん側の人間だからさ……。


 しばらく沈黙が続いたが、ふいにもんちゃんが話を切り出した。


「さて、作戦会議するよ。」


「立ち直りはや!!」


「まだ終わったわけじゃないもんね。チャンスは必ず来る。まず、俺は、ヨウさんを鍛えまくるぜ!!

 わさびさんは、ヨウさんに活躍してもらいたい。ヨウさんが活躍したら、わさびさん大喜び。わさびさんの喜ぶ姿をいっぱい見れたら幸せだもんね。」


 もんちゃんは前向きだなぁ。しかも、わさびのことを心底思っている。わさびさん、こんないい青年をフっちゃだめだよ。パチンコ元カレの1億倍いいよ。


「さて、ヨウさん。少しはサッカー覚えたよね?

ヨウさんは、自分がどんなポジションに向いてると思う?」


「ポジションか~。やっぱりDFかなと思うけど、体力がないからね。」


「ヨウさん、DFって難しいんだよ。体力も必要だけどさ、頭を使って戦略的に相手からボールを奪い取るんだ。お互いの意志疎通も大事だし、とにかく訓練に時間がかかるんだよ。」


「た、確かに。俺が1人残ってるせいでオフサイド取れずに、ガンガン攻め込まれそうな気がする……。」


「勇気、お前はどう思う?」


「う~ん。でも、やっぱりDFじゃないですか?ヨウさんのパスカット半端なかったっす。」


「はぁ~。勇気、お前はまだまだ勉強する必要があるなぁ。鍛えてやるもんね。」


「そもそも、こんなおっさんじゃ、何やっても通用しないんじゃない?」


 ヨウが弱音を吐く。


「普通は通用しないね。でも、ヨウさんの謎のパスカットは半端ねぇ。俺だって、高校ん時に全国行ってすげぇ奴らと闘ってきたんだけど、あんな簡単にパスカットされたことはなかったもんね。」


「じゃ、やっぱりDFじゃないっすか。」


 もんちゃんは、勇気をチラッと見た後、横に座るヨウに話しかける。


「ヨウさん、FWになりな。」


「「え~!?」」


 ヨウと勇気、2人で声をあげた。


「いやいや、無理でしょ。足遅いし。おっさんだし。」


「ヨウさん、FWは一番最初のDFだってのは聞いたことあるだろ。高い位置で、ヨウさんがパスカットしてみなよ、すぐさま大チャンスだ。

 それにさ、ヨウさんがスタミナ切れでぶち抜かれたって、まだ後ろにはたくさん仲間がいるんだぜ!!」


「なるほど、一番前にいるDFってことですね。」


 勇気にもイメージができたようだ。


「そうだ。今さら、ヨウさんに戦術だのコンビネーションだの教えても、ぜってぇ身に付かねぇが、周りの俺たちが、ヨウさん自体を戦術に組み込んじまえばいいんだよ。

 ここで大事なのは、勇気、お前だぞ。ヨウさんが命削ってボール取ってくるんだから、ぜってー決めろよ!アリスにかっこいいところ見せてやれ!!」


 勇気は、何やらやる気になっている。


 ヨクワカリマシタ……俺の仕事は、命を削ってボールを取ってくることですね。うわ~。


「ということで、来週の開幕戦に出れるようにがんばろうぜ。ヨウさんは、今からインターセプターだ!!」


 ヨソウガイデス………。まさか試合に出るかもしれないなんて。そんな未来が待ってたなんて。

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