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EVOLVE〜エヴォルブ〜Season4 ― 信じる力 ―  作者: 柊梟環
EVOLVE〜エヴォルブ〜Season4 ― 信じる力 ―
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第2章 始動

整然と並ぶ数字の中に、わずかな歪み。

そこに潜む“誰かの意図”を探すため、環は過去と向き合い始める。



― 共に創る現場 ―


プロジェクトのキックオフ会議。

春の朝、アークシステムズのオフィスには静かな緊張感が漂っていた。


モニターには、永峰ながみねがリモート接続で映っている。

背景には自宅のワークスペース、整然と並んだ資料とモニター。



しゅうが会議の進行を始める。

「今回の案件は、社内システムのデータ再構築。

 不正アクセスの痕跡が一部残っている可能性がある。

 永峰、全体の進行とログ管理を頼む。」


「了解した。たまきさんには、Excelベースの抽出データを渡してある。

 あの構成なら、異常値の洗い出しが早いと思う。」


「はい。確認して作業を始めています。」

環の指がキーボードを叩く音が、小さく部屋に響く。


なぎが画面越しに笑いかける。

「永峰さん、すごいっすね。データ構造の整理が完璧でした!」


永峰は少し照れたように笑った。

「長くやってるからな。けど、思うように動けない分、

 頭の中で何度も動線を組む癖がついた。

 今は、それが仕事の武器になってる。」


その言葉に、環がふと息をのむ。

――身体が動かないぶん、考えることができる。

 灯さんが言ってたのと同じ……。


柊は頷きながら言った。

「それでいい。スピードより正確さが大事だ。

 焦らず、ひとつずつ確認していこう。」


「了解。」

「了解です!」


短い掛け声が重なり、

4人の間に小さな一体感が生まれた。


会議が終わったあと、環は少し画面を見つめたまま呟く。

「……永峰さんの部屋、すごくきれいですね。」


凪が笑う。

「仕事人って感じですよね。僕なんてモニターの裏ぐちゃぐちゃですよ!」


柊がふっと笑って、

「片づけのスクリプトでも作ればいい。」


「えぇ〜、勘弁してくださいよ〜!」


オフィスに笑い声が広がる。

そんな何気ない時間が、

いつの間にか“共に創る現場”を形づくっていくのだった。



◇◇◇



― 揺らぐ数値 ―


リモート会議の画面に、永峰の穏やかな声が響いていた。

背後には整然と並ぶ本棚と、差し込む春の光。

その姿は、どこか落ち着いていて、力強かった。


「では、こちらのデータを共有します。」

永峰の声とともに、画面にExcelの集計表が映し出される。

柊が内容を確認しながら頷き、凪がメモを取る。


環は黙って画面を見つめていた。

――数字の整列、関数の配置、そして穏やかに流れる永峰の説明。

その様子に、どこか懐かしさを覚えていた。



――そういえば、灯さんも今はフルリモートでお仕事をしているって言ってたな。

どんなふうに働いているんだろう。

きっと、あの頃と変わらず笑顔で、周りをぽかぽかにしているんだろうな……。




そんなことを思いながら、環は画面の中の数字に目を戻す。

その時、ふと手が止まった。


「……あれ?」


「どうした?」柊がすぐに気づく。


「ここの数値、全体と合わないんです。

 合計値は同じなのに、細かい部分が一致していません。」


凪が素早くログを確認する。

「おかしいですね。操作履歴には異常がないです。」


「再集計しても同じ結果か?」

「はい……何度やっても同じです。」


永峰が少しだけ表情を曇らせた。

「このデータ、どこかで上書きされてるかもしれないな……。

 でも、誰が――」


画面越しの沈黙。

春の午後の光が、なぜか少しだけ冷たく感じられた。


柊が静かに言う。

「ログを洗い直そう。

 この違和感、見過ごさないほうがいい。」


環は頷きながら画面を見つめる。

数値の列の奥に、確かに何かが“潜んでいる”――

そんな予感がした。



◇◇◇



数字の不一致は、翌日になっても解決しなかった。

凪のログ解析にも異常はなく、柊も眉をひそめたまま無言で画面を見つめている。


「原因がどこにあるのか……まるで迷路ですね」

環がため息をつくと、凪が肩をすくめた。

「ログのどこを探しても、改ざんの痕跡は見当たりません」


沈黙が流れる。

光が静かにデスクの上の資料を照らしていた。


その時――環の胸の奥で、ふと、ひとりの女性の声が蘇る。


「数字は嘘をつかない嘘つきは数字を使う。嘘をつくのは、いつも人間のほう。」


あかりさんの声だった。


あの優しい声。

温かな笑顔。

そして、いつもそっと背中を押してくれる言葉。


「環?」


環は小さく呟いた。

「……灯さんなら、きっと何か気づくかもしれない」


柊が顔を上げる。

「灯……? 環の前の職場の先輩だったな」

「はい。Excelの扱いがすごく上手で、数字を読む力があって……。

 もしかしたら、何かわかるかもしれません。」


柊は少し考えて、頷いた。

「一度、連絡を取ってみるか」

「はい!」


その瞬間、環の瞳に光が宿った。

懐かしくて、あたたかくて、少し胸が高鳴る。


再び――ぽかぽかの灯がともるような再会が、静かに近づいていた。


数字の奥にあるのは、冷たいロジックだけではない。

人の感情が滲む場所――そこに真実の入口がある。

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