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ビーンワイル  作者: シュルレアリスム


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毒男

アパートに帰るとリビングの電気をつける。

六畳間の中央にはテーブルを置いている。


そのテーブルの上に毒男が座っている。

こちらに背を向けて正座をしている。


毒男がウチにやってきてから、とくに生活のなにかが乱されるようなことはなかった。


毒男は単にテーブルの上にいるだけなので、こちらに危害を加えてくることはおろか立ち上がる素振りすら見せなかった。


興味本位で昼の残りの唐揚げをひとつ毒男の眉間にちらつかせてみたけれど反応はない。


血色の悪そうな青白い肌をしていて、眉毛は薄く覇気がない。


毒男は裸ではない。ちゃんとパンツをはいている。

毎日同じパンツだが不思議と匂わない。


「掃除するからどけてよ」


狭いテーブルの上を、どのような力学的作用が及ぼされるのか分からないほどスムーズに移動する。


決してテーブルから落ちることはない。正座をきちんと保ったまま縦に横にスライドする。


「リニアモーターかよ」


強めにツッコミを入れても無反応だ。


そして翌日テレビの真横に毒女が現れた。


こちらも青白い肌をしていて、薄汚れたキャミソールを着ている。


余り物の天ぷらを鼻先に押し付けてもびくともしない。


毒女は毒男の頭上を眺めており、毒男はベランダを凝視している。


部屋を大のオトナ二人が占有すると窮屈な思いを強いられることになっている。


毒女はテレビの側にとどまらず、たまに天井に足をつけてぶら下がっていたりする。


夜帰宅して玄関を開けたときに毒女がそのように逆立ち?をしているとドキッとさせられる。


しばらくすると慣れてきたが、微動だにしない毒男とは違って元気があるのも厄介だ。


その他毒猫や毒タヌキなんかも住みつくようになってしまい、とうとう有名な祈祷師がやってくるハメになった。


「キエエーイ、アクリョータイサーン!」


胡散臭い祈祷師がまじないを唱えるのを真横で見つめる。


毒男や毒女たちのからだがポロポロと崩れていく。実はすごい人物なのかも知れない。


そこに大家がやってきた。


「あのう、これでお祓いはバッチリでしょうか」


大家の言葉に汗だくの祈祷師が振り返る。


「ええ。おおむね清めることができました。ただしまたすぐに集まるでしょうね」


「なんですって、それは困ります。なんとかならないんですか」


狼狽する大家が不憫で慰めてやりたくなる。


「なんとかしたいのは山々ですがーーー


大家の背後で微笑む私を睨みつけ


ーーー生きてるものは祓えません」と祈祷師は告げた。

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