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ビーンワイル  作者: シュルレアリスム


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低気圧の迦具土

お父さん

明後日お迎えに来てくれるのは新しいお父さんでした。

だからあたし言ったのに、バスに乗りたいって。


お父さんの隣に座るのは嫌いなの。

だからそういうときはいつも後ろの座席にいる。


ミカゲちゃん、今日はどうだった?

なんて聞かなくても分かってるでしょ。


それからハンバーグそんなに好きじゃないのに、一生懸命作ってくれるから、こっちも一生懸命食べるけど。


あたしソースいらないの。

ママに教わらなかったの?


髪をくくってくれるとき、あんまり高い位置にしないで。

体操着洗濯したてだと濡れてて冷たいしクサイよ。


お小遣いもあんまりたくさんいらないから。

ママに怒られちゃうでしょ。

買いすぎるとね、ダメだよって。


お父さんとママの写真は笑顔だね。

あたしだけ真顔なんだよね。

可愛いって呟くときのお父さんの顔を見なかったことにする。


もうひとりで寝られるし。

お風呂もひとりで大丈夫だから。


朝お味噌汁の香りがしなくなった代わりに、お父さんの整髪料が意外と臭うんだと知ったよ。


髪が伸びたからたくさん使うようになったのね。

ヒゲもダンディだって褒められてるみたいだね。


お父さんの仕事のことあんまり分からない。

聞かないし、話さない。

別に秘密ってわけではなさそうだ。


でもお父さんはあたしとアニメとか、動物園とか、流行りの雑誌のことについて会話するのがいいみたい。


お父さんの小さな頃はなにしてた?


田んぼでヒルを捕まえたり、トンボの頭をちょん切ったり、カエルに蚊を食べさせたりしたんだって。


あたしはひとりで遊ぶときに、なんだかお父さんの子どものころが隣にいるよ。


ダンゴムシ探すのとか、砂場に水を流して葉っぱのフネを泳がせるの好きだから。


子ども時代のお父さんとは仲良くできそうなんだよね。


あたしお父さんのこと知らないけど、これから知っていくことあると思うけど、お父さんもあたしのこと知らないのに、知ろうとしてくれてはいるみたい。


いつかこのことを思い返す日が来るのだろうと思ってたら十年経って、また十年経ったね。


ママはあたしにそっくりな顔をプレゼントしてくれた。

だからお父さんがときどきあたしを通してどこか遠くを眺めるときがある。

向こうにいるママと通じ合えるのかもね。


鏡を前にすると気が引き締まるのは、あたしのなかにママの面影があるからなのかな。


ねえお父さん。

お父さん

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