エアコン
エアコンは四角い、丸くはない。
なぜ丸くないのかな。
三角でもないよな。
エアコンをつけると冷たい。
エアコンをつけると温かい。
そんなことを彼氏に尋ねると
「ははははは」
笑われてしまう。
「リリちゃんさ、ペットボトルが鉄でできてたらとか考えそうははははは」
鉄でできたペットボトルかあ。
それは鉄のボトルだわ。
「じゃあケンポくんは気にならないの?」
「エアコンのかたち?」
「うーん、それもだけど。電車のスピードとか」
「気になったことないなあ」
ケンポくんは丸めたティッシュの先で鼻くそをかきだそうと必死だ。
「電車速すぎない?」
「もっと遅くても良いじゃんって?」
「うんうん」
「一番速いところの少し遅いところが安全だから、そこが良いのではないのかな」
「あ、そうかあ」
ケンポくんの言っていることは合理的解釈に基づくものに聞こえる。
「リリちゃんさ」
「なあに」
「そんなこと気にしてたらさ、お嫁に行けないよ」
「そうだね」
非合理的なコメントに対しては疲れるのでとりあえずまあハイと言っておくリリのスタイル。
「めし、おれがつくろうか、今夜」
「え、いいの?嬉しい!」
ケンポくんが作るお茶漬けは、スーパーに売っているものそのものなんだけど、一生懸命お茶を沸かしてくれるし、健気なので美味しさもマシマシ。
「じゃあさ、商店街にコロッケも買いに行こうよ」
「えー、面倒だからリリが行ってきてよ」
「でもガチャガチャやるでしょ?」
「あー、本屋の隣のゲーセンで?」
行くわ。
そう言ってケンポくんがジーンズに足を通し始める。
ケンポくんは好きなキャラクターのためなら労を惜しまない。
「リリは化粧しないの?」
「近場だからいいかなーって」
「でもなんか黒いよ?」
「うん、そうかも」
適当に返事をしておいて、サンダルにつっかける。
「鍵閉めた?」
「閉めたけど確かめてない」
ドアノブをガチャガチャやってケンポくんがオッケーを指でつくる。
そのときのケンポくんの仕種が愛らしくて、リリ嬉しい。
雨上がりの夕焼けは紫がかっていて綺麗。
あと何回この景色を一緒にケンポくんと見られるのかなっていつも思う。
死んでもまた親ガチャで幼馴染として生まれ変われたら嬉しいな。
リリが笑うとケンポくんも笑う。
二人はいつか死ぬ。




