⚫︎美幸と和香の独白:私たちの、ゆめ
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和香の独白
私たちの、ゆめ。
小さなころから、ずっと傍にいた。
私たちより少しだけ背が低くて、色素の薄い、ミルクティーみたいな髪の色。
声も柔らかくて、よく笑って、よく泣いた。
抱きしめれば腕の中にすっぽり収まる、あのサイズ感。
あんなに可愛いもの、この世に存在するなんて、奇跡だと思った。
運動が得意で、足が速い私を、「かっこいい!」と褒めてくれた。
小学生の時なんか、ゆめに意地悪する男子たち数人に対して私1人で挑み、全員ボコボコにした。
男子たちは皆んな泣きながら逃げていったっけ。
爽快だった。
―ゆめに近づくからだ。ざまぁみろ。
私と美幸は、いつもゆめを真ん中にしてた。
登校も下校も、席替えも、給食の時間でさえ。
私たちは常に隣にいた。
“守ってあげたい”って、思ってた。
でもその感情は、いつしか別の色をしていった。
高校のあの祭りの夜――
3人だけの秘密の場所で、美幸と2人であの子を押し倒した時。
初めて見たんだよね。
幼い頃から見てた、小さな女の子の顔じゃなくなる瞬間を。
ゆめが、女の、顔になる瞬間。
潤んだ目。赤く染まる頬。
揺れる胸元――ずらした浴衣の中にあった、柔らかくてあたたかいもの。
……ずっと、欲しかった。結芽の心も、身体も。
それを私たち以外の誰かが手に入れるなんて、絶対にありえない。
……まさか、東京になんて行くと思わなかった。
村から出て、私たちの目の届かないところに消えるなんて。
私たちを置いて。
……高校を出るまで私たちはスマホもなかったから連絡すら取れなかった。
あの子がこの6年間どういうふうに過ごしていたのか、ゆっくり問い詰めなきゃ。
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美幸の独白
……ゆめ。
ほんっとに、可愛い。ずるいくらいに。
無意識に愛されて、無自覚に選ばれて。
自分がどれだけ“人を狂わせるか”も知らないで。
だから悪い虫もよく引き寄せてた。男女問わず。
そんなゆめに嫉妬していじめようとしてた女子たちもいたっけ。
私が、悪い噂を流して潰してやったあの子たち、まだ元気かな。
―ゆめに手を出そうとするからだよ、いい気味。
私たちは、気づいてたの。
誰より先に。
あの子は、可愛いだけじゃない。
“人を惹きつける”力を持ってるの。
だから、誰にも渡せないって、周りに示したかった。
高校時代の夏祭りの晩。和香と2人で、あなたを押し倒したのは、確かに悪ふざけだったかもしれないけど――
……あの時の顔、声、身体。
今でも思い出せる。完璧に。
あの夜から、私、毎晩、ゆめを思い出してた。
そして――
成人式の日、会場に入ってきたゆめを見て、私は興奮と悦びで身体が震えたの。
綺麗になってた。
都会の空気を纏って、髪も肌も、少しずつ変わって。
―恋人が出来てたらどうしよう。
誰に手を触れられてきたの?
誰に名前を呼ばれてたの?
誰に、あなたの声、聞かせたの?
あの日、私たちに声をかけずに逃げたこと、まだ許してないんだよ。
あの時、私と和香が近づいた瞬間、
あの子の目が、びくって揺れたの。
あの目、忘れられない。
きっと、緊張してたのかな。
でも――
許してないよ。東京に勝手に行ったこと。
成人式の時だって。
あなたに会えるの、すごく楽しみにしてたのに。
あの日のために、綺麗な姿であなたと再会したくて、肌の手入れも、髪の手入れもすごく頑張ったのに。
何度もカレンダーを眺めては、あなたとどんな話をしようか想いを馳せていたのに。
――連絡先すら手に入れられなかった。
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ふたりの声が重なる
私たちは、決めたの。
もう逃がさない。
だって――
ゆめは、“私たちの”なんだから。
おかえりなさい、
そして、
ずっと一緒にいようね。




