表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/50

第24話 地震の発生時期、まさか……

「小泉さん、ちょっといいですか?」と、丸山から声がかかった。

 地割れがちょうど真ん中に走っている土坑を掘っている。


「遺物が出てきたので、ちょっと見てもらえますか?」確かに遺物の一部が見えている。

 陶器片らしい。


「丸山さん、遺物を竹ベラとハケで、もう少しきれいにしてみましょうか。それが終わったらセクションと合わせて、写真と図面を取りましょう」


 土坑を全部掘らずに半分だけ掘るというのは、どのように土が溜まっていったのかを観察するためで、考古学ではセクションと呼び、分層して記録する。

 摩耶は、セクションを詳細に観察した。


 ……地割れを除けば、普通の自然堆積ね。


 中央には縦に断層が走っており、それを境に5センチくらい上下にずれている。

 作業用の腰袋から、5寸釘を取り出し分層線を描いていく。

 各層の特徴をフィールドノートにメモする。


 それから、カメラバッグから一眼レフタイプのデジタルカメラを取り出して、セクションを撮影する。

 以前はフィルムカメラが主体であったが、フィルムが品薄で高価となってきたので、ようやくデジタルカメラが容認されるようになった。


「丸山さん、セクションの図面を取りましょう。川口、丸山さんにセクションの取り方を説明してあげて」と、摩耶は川口に声をかけた。了解です、との返事が聞こえた。


 川口・丸山が図面作業をしている間に摩耶は、そこここで行っている遺構の掘下げ作業を見回る。

 作業員はやはり農家出身が多いため、皆、土に慣れているようだ。作業は順調に進んでいる。


「摩耶先輩、セクションの図面、完了です」と、川口。


「そしたら丸山さん、もう半分を掘って、土坑を完掘しましょう」と、摩耶。丸山は、分かりましたと応えて、再び掘り始める。


「川口、ちょっと」と、摩耶が呼ぶ。なんすか、と応える川口に、


「例の遺物特定システムを試してみない? 今、丸山さんが掘っている土坑の遺物。底面付近に陶器が何点か出土しているから、それの年代が分かれば、地割れの時期がある程度分かるんじゃない? 丸山さんも興味があると思う」


 丸山が、笑顔でうなずく。


 地割れは土坑を引き裂いているわけだから、土坑が造られた時期より後に地震が起こったはずである。


「あたしが見たところでは、18世紀始めのころの瀬戸美濃の(わん)だと思う」と、摩耶。


 丸山が土坑を完掘し、摩耶はカメラで遺物の出土状況を撮影した。

 川口と丸山が遺構の図面を作成する。

 それが終わった後に、摩耶は遺物をゆっくり傷つかないように取り上げた。

 丸山は事務所から水を入れたバケツと雑巾を持ってきた。


「じゃあ、ちょっとやってみますよ」と、川口。


 数点ある中で一番大きい陶器片を選んで、バケツの中で汚れを落とし、雑巾で丁寧に拭いた。

 そして川口は自分が持っているスマホを取り出し、違った角度から陶器を2回撮影し、画像を確認すると、スマホをタイプして、ACHのサーバに送信した。

 数秒後に電子音がして結果が返ってくる。


「摩耶先輩、産地は瀬戸美濃。器種は(わん)。時期は西暦1717年プラスマイナス1年ですね」と、川口が言った。


 摩耶にとっては、だいたい思った通りの結果だったが、これを聞いた丸山は、とても興奮した様子である。


「小泉さん、川口さん、これはちょっと興味深いことになってきました」と、丸山は言って、胸ポケットからメモ帳を取り出した。


「石廊島で過去、大きな地震が100年周期で起きる言い伝えがあることは前にお話ししました。それを自分なりに調べているのですが、一番最近に起こったのが、1919年9月で、大正8年のことです。その前が1819年10月で、文政二年になります。これは島にあった石廊寺の過去帳に記載されていたのですが、過去帳の控えを作らないうちに、寺は火災にあって過去帳も焼けてしまいました。ですからそれ以前は、地震が起こった時期が明確でないのです」と、丸山。


「とすると、1919年と1819年ですから、ちょうど間隔が100年と言うことですね」と、摩耶。


「そうなのです。で、先ほど川口さんが、この地割れで引き裂かれている土坑の遺物が1717年。地割れが起こったのはそれより後となりますよね」と、丸山。


「そうか。もしかしたら地震が1719年に起こったものかもしれない可能性があるわけですね」と、川口。


 摩耶・丸山・川口は同じことを考えていた。


 1719年の次が、1819年、そして1919年……


 その間隔で発生しているとすれば、次に起こるかもしれない年は……


 2019年! 今年ではないか!


 3人は、思わず顔を見合わせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ