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第1話 小泉摩耶、離島発掘を命ぜられる

 内線電話が鳴った。


「小泉、ちょっと来てくれ」


 文化財調査部長の加藤駿(しゅん)からである。


 小泉摩耶(まや)は、机の下で、サンダルから靴に履き替えて、部長席がある3階に行く。


 最近は、運動不足で、下っ腹あたりが気になりだしている。

 少し酒を控えようかな、などと思いながら、階段を上る。


 加藤は、摩耶の顔を見るなり言った。


「ちょっとミーティングルームに行くか」


 3階には、共用のミーティングルームが3部屋ある。

 主に接客や密談の時に使用する。


「えーっ、そんなに秘密な内容なんですか?」


「じゃあ、大声で言ってやろうか。離島で発掘の話だって」


 3階には、部課長級の管理職のデスクが並んでいて、摩耶と仲が良くない連中も何人か座っている。


「ちょっと、ちょっと、ミーティングルーム行きましょ」


 ミーティングルームで、加藤と摩耶が向かい合わせに座る。


「何ですか? 離島の発掘って」


「急な話で申し訳ないが、ちょっと発掘を担当してくれないか?」


「さっき、離島って言ってましたね。島なんですか?」


伊豆南市(いずみなみし)石廊島(いろうじま)だ」


 石廊島とは、静岡県の伊豆半島の先端にある伊豆南市の沖合にある島だ。

 面積は小さく、熱海と伊東の沖にある初島と同じくらいである。


「えーっ、なんで私が? 他に人いないんですか?」


「なんだ、嫌なのか?」


「いや、とは言ってません。ただ心の準備が……」


「何をまったく。小娘じゃあるまいし」


「あー部長、それ、女へのセクハラですよ」


「で? どうすんだ? やめるか?」


「わかりました。やりますよ。で、調査員はあたし一人?」


「調査面積が狭いから、小泉一人だ」


「えーっ、一人じゃ、さみしいな。中野さんとか入れてくれません?」


 中野五郎は、加藤部長の2年上の大学の先輩で、発掘調査のベテランである。

 一応フリーランスなのだが、加藤が離さず、ほぼ会社の専属みたいになっている。


「中野さんは、先月、例の瓦の調査が終わった後、埼玉北部の現場に入っていること、忘れてないだろ?」


「わかってますって。ちょっと言ってみただけ」


 ……あの奈良時代の瓦の調査は面白かったなー……


 と摩耶は思った。中野さんが叔父さんの佐伯老人から依頼された瓦に刻まれた漢文の謎解きは、まさに古代史と考古学の知識を駆使してアプローチしていく醍醐味があった。

 摩耶は自分もあんな調査をしてみたいと、常々思っている。


「それで、石廊島で何か開発でもあるんですか?」


「高齢者向け終身介護対応型賃貸住宅というのを建設するんだそうだ。それもとびきり金持ち用らしい」


「へーえ、石廊島みたいな田舎にそんなもの造ったら、家族は来るのに苦労するんじゃないですか? 電車も下田までしか通っていないし、石廊島へは、何本も連絡船なんてなかったんじゃないですか?」


「俺たちみたいな貧乏人とは住む世界が違うんだ。金持ちは、一般の公共交通機関なんて使わないよ。東京ヘリポートから1時間もあれば到着できる。手頃な近さだよ」


「へえー、お金ってあるところにはあるんですね。部長、あたしんとこにも回してくれません?」


「悪いが、俺のところにもない。まあ、冗談はさておき、じゃあ小泉担当ということでいいな?」


「はい」


「それじゃ、発掘に関する打ち合わせをしたいが、俺はこれから都内のP大学まで行く用事があるから、午後からにしたい。小泉の方は何か用事が入っているか?」


「特にありません」


 加藤は、スマホでスケジュールを確認して、


「じゃあ、今日の午後3時で、このミーティングルームで、改めて打ち合わせしよう」


「了解しました」


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