7.一緒にお食事しました
テストは無事乗り越えた。光汰くんのお陰で苦手な数学もなかなかの手応えだった。
今日は学校帰りに一緒にカフェに寄る約束をしている。勉強を教えてくれたお礼にこっそり奢っちゃう作戦だ。
食べ終わる頃にお手洗いに行く振りをしてこっそり先にお会計を済ますという、高校生にはハードルの高いモテ技を使ってみようかなって。
まぁ本来はモテたい男性による俺デキる男アピールテクニックらしいけど、時代も時代ですし。私、年上の先輩ですし。
おしゃれなカフェでパスタやケーキを味わいつつ、和やかなひと時を過ごす。
「光汰くんは甘い物は平気なの?」
「好きですよ」
会話のひとつひとつに癒やされる〜。彼からマイナスイオン効果を感じる……。
楽しい時間はあっという間におしまい。
光汰くんに事情を伝え、既にお会計を済ませたレジを通り過ぎた。出口を出てすぐのところで光汰くんが悲しそうに口を開いた。
「先輩……。先輩の気持ちはとっても嬉しいんですけど、でも、ダメです。先輩から奢られるのは……どうしても嫌なんです。僕のただの我がままだってわかってはいるんですけど」
光汰くんのプライドを傷付けてしまったみたい。男の子の気持ちが理解できないダメダメな先輩でごめんね……。
そしてこんな時、現代年上スパダリイケメンの場合、私がこっそりお会計する前に既にお会計を済ませているんだろうなっていうどうでも良い妄想力だけは発揮してしまう最低な先輩でごめんね……。
「先輩、今はまだ先輩に満足にご馳走を振る舞ったり素敵なプレゼントをたくさん贈ったりなんてできないけど……。待っててください」
「気にしないで。何だか気を遣わせちゃってごめんね。それと、勉強を教えてくれて本当にありがとう。すごく嬉しかったし助かったから、だから今日だけでもご馳走させて」
眉を下げながら頷いて微笑む光汰くん。こんな寂しそうな顔はもう2度とさせないと心の中で誓った。
「……本当は、奢るとか奢られるとかそういう問題じゃなくて……レジの前で一緒にお金を出し合ったりとかそういう普通のカップルがすることを先輩と楽しみたいなって……。それができなくて寂しくて……。子供みたいですみません」
えっ、何この後輩!! 可愛過ぎるんですけど!!
お金に物を言わせちゃう年上スパダリよりも、今の私には、純粋の塊な年下後輩の方が何よりも尊い。
今夜は年下後輩もののウェブ小説を読み漁ろう。私は再び心の中で誰にとも無く誓った。