表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/11

1.告白されました

1話(全話)1000文字です。

 通学電車の中で、毎朝私は本を読んでいるんだけど、今年の春から変化が起きた。


 いつもシートの端に座る私の目の前に、ひとつ後の駅から乗車してくる男子が必ず立ってくるのだ。 


 この男子は今年入学したばかりの同じ高校の一学年下の後輩。高身長で爽やかイケメン。校内ではすっかり有名人だ。


 ……そこまでは良いとして、ちょっとした問題がある。


 私が最近ハマっている本はライトノベル。それも異世界で王子から溺愛される系。


 妄想の中でくらいイケメン王子に無条件で愛されたい。……現実では口が裂けても言えないけどね。


 とにかく、絶対にバレたくない。


 本を読む時は大抵書店のカバーをかけるんだけど、目の前にイケメンがいる緊張感から変な見栄が出てしまった。


 本屋で探した文庫本サイズの量子力学の本の表紙と小説の表紙を入れ替えたのだ。頭の良い人って思われちゃうかな? なんて。


 中身は悟られないよう注意しつつ読書に勤しんで数ヶ月。


 学校でイケメン後輩に声を掛けられた。校舎裏へと連れて行かれ、何と告白された。



 「いつも難しそうな本を読んでいる知的な先輩が好きです!」だって。



 もちろん断った。後ろ髪を引かれる思いで。


 彼は上辺の私だけしか見ていない。(表紙だけ)量子力学を読んでいる私しか。


 私だって彼のことイケメン後輩としか知らないしお互い様だけど。私が変な見栄を張ったせいで傷付けてしまった罪悪感に苛まれる……。



 私は自分を偽ることを止めた。



 表紙を元に戻したのだ。


 いや、そこは普通に書店のカバーでいいじゃんなんてツッコミはなしで。


 ありのままの私を受け入れてくれる男子と私は付き合いたい!!



 王子に抱えられたお姫様が描かれた表紙の本を車内で読み始めて7日目。


「先輩、やっぱり諦められません。好きです!」


 混雑した車内に元気な声が響いた。


 もちろん彼だ。トチ狂ったのかな?


「でも、私……こんな本読んでる女だよ?」


 手にする本を見せてヒソッと答える。


「知的な先輩も好きですが、ロマンチストな先輩も大好きです!」


 え? 異世界スパダリ溺愛ものを好む女子がロマンチスト?


「僕の……お姫様になってください!!」

「は、はいっ!」


 突如、ラッシュの車内に割れんばかりの拍手が起き、ピューッと指笛が鳴った。「よっ、姫様! 王子とお幸せに」なんてヤジも飛ぶ。何この生き地獄。


 私は現代でお姫様になってしまったらしい。



 車内で漏れ聞こえる私のあだ名は「なろう系ヒロイン」。いや、そこは姫で良くない?



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ