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98.てっぱんネタらしい……

田舎暮らしを始めて108日目。




凛桜は台所で、作り置きおかずの製作に精を出していた。

ここ数日のうちにかなり消費したからだ。


おもに騎士団の皆様の胃袋へと消えました、はい。



「次は、鮭とレンコンのさっぱり炒めでも作ろうかな」


作り方も結構簡単な割に、美味しいのよね、これ。


まずはレンコンの皮を剥きます。

その後に縦半分に切って、更に1㎝幅くらいに切ります。


その切ったれんこんは、酢水が入ったボールにいれて

灰汁をぬくとシャキシャキ触感になって美味しいのだ。


その間に、鮭は皮付きのまま一口大に切って

塩、胡椒を軽くふった後に薄力粉にまぶします。


その鮭を中火に熱したフライパンにバターを溶かして入れて

両面に焼き色がつくまで焼きます。


火が通ってきたら、水をしっかりと切ったレンコンを入れて

ポン酢とみりんを入れてそのまま炒めます。


しっかりと具材に味がなじんだら出来上がり!


「んー、今日も美味しくできました」


そういいながら、凛桜が味見の為に直接フライパンから

菜箸でレンコンを取って口に運ぼうとしていた時だった。


その手を掴んでそのまま、レンコンをひょいっと

横取りするものが現れた。


「へ?」


凛桜が驚いて横をみると、魔王様が無表情でもぐもぐしていた。


「…………」


驚いて声がでない凛桜に対して魔王様はニヤリと口角をあげて

さらりとこう告げた。


「相変わらず美味いな、凛桜の作る料理は」


「あ……りがとうございます」


そう答えるのが精一杯だった。


そこに何か用事があったのだろう、遅れてきたと思われる

コウモリさんがすっ飛んできた。


「きゅーう、きゅきゅきゅ」


何やら魔王様に強く言っているようだ。


「我は何もしてない」


魔王様は両手をあげて、ふるふると首を横にふっている。


「きゅーううううう?」


コウモリさんは伺うように魔王様をジト目で見ていた。

この2人の関係は相変わらずのようだ。


ひとまず、魔王様のお腹が盛大に鳴っているので

ご飯をお出しすることにした。


今日のメニューは、白米、きのこと豆腐のお味噌汁

キュウリと卵とかにかまの酢の物に……

鮭とレンコンのさっぱり炒めだ。


コウモリさんには、茹でたトウモロコシを出した。

嬉しそうにかぶりついているのが可愛い。


今日も魔王様は、その冷たいまでの美貌で

無言のままご飯を口に運んでいる。


その表情からは、伺い知れないが……

どの料理もおかわりを要求してきたので

美味しかったのだと勝手に推測している。


そのまま、デザートに緑茶と餡蜜をだして

一息ついたので、話を切り出してみた。


「魔王様、お聞きしたいことがあるのですが?」


「なんだ?」


「コウモリさんから頂いた……

アメリーニャの事です」


餡蜜を食べる手が止まった。


「何か問題でも起きたか?」


「いえ、問題は起きてはいないのですが

アメリーニャの株を分けて欲しいと言われまして」


「ほう……」


魔王様は目を細めた。


「そもそも、アメリーニャとはどういう花なのですか?

なにやら凄い希少価値があるものだとお聞きしたのですが」


魔王様は、寒天を突きながら抑揚のない声で言った。


「そうらしいな。

たまにそれ欲しさに、命知らずの獣人どものハンターが

我が城の庭に侵入することもある」


「へ?」


凛桜の目が驚きのあまり大きく開いた。


「しかし今まで1人たりとも持ち帰った事はない。

なぜなら、あの花からは()()()()()()()()()()()()()からな」


魔王様は、真顔でそう言った。


は?

レーザービーム?


レーザービームって殺傷能力ありましたっけ?


凛桜は首を傾げた。


と、そのときため息共に残念そうな声色がふってきた。


「凛桜……」


冷たい赤い瞳が凛桜を射抜くように見つめていた。


「はい……」


何を言われるのだろうとドキドキしていると

魔王様は抑揚のない声で言った。


「今のくだりは笑うところだ」


そう言って、フッと口元をあげた。


「え?へ?」


何処に笑うところがあったの?


凛桜は軽くパニックになり、目をしろくろさせていた。


「ブルームーンが言っていた。

目からビームが出るという文言は、てっぱんネタなのだろう?

レーザービームやセクシービームだっただろうか。

なにか困ったことがあったら使えとな」


「はい?」


今度は違う意味で狼狽えた。


じいちゃん、また変な事を魔王様に教えているから!!

聞いたことないから、そんなネタ!!


セクシービームなんて、言語道断だから!!


凛桜は頭を抱えた。


魔王様が目からビーム出せるぞって言ったら

本当に出せそうだから!!


冗談ってわからないから!!


「そう怒るな、ちょっとした冗談だ」


そう言って、更に悪い顔でニヤリとした。


「怒ってませんけど……」


「ククククク……。

凛桜は可愛いな、まるで驚いた時の子猫のようだ」


それって誉め言葉なのですか!?


「アメリーニャを欲しがっているのは、あの男か?

それともキツネか?」


「何故わかったのですか?」


凛桜は軽く息を飲んだ。


「お前の親しい男で、あの花の価値が分かるのは

その2人くらいだろうからな。

いや、もしかしたら親玉の蛇もわかるかもしれないが

やつはこの花を欲することはないだろう」


そう言って、求肥をぱくりと食べた。


「どういうことですか?」


「聞きたいか?」


魔王様は、怪しい微笑みを浮かべていた。


ごくり……

凛桜は緊張のあまり、喉をならしていた。


すると魔王様は、右手で近くにこいと手招きをした。


凛桜が不思議そうに近くにいくと、グイッと抱き寄せられた

かと思ったら、耳元で囁かれた。


「アメリーニャからは……強力な媚薬が作れる」


なんだと!!


凛桜はぶわぁと頬を真っ赤に染めた。


だから、あんなにクロノスさんが挙動不審だったのか。


へぇー、ふーん、ハーレムのお姉さん達と楽しむ為に

男としてそれが欲しかったって事?


なんだか今度はむかむかしてきた。


クロノスさんのエッチ、やっぱりエロ侯爵じゃん。



その時、騎士団の談話室で盛大なくしゃみをした

クロノスがいたとか、いないとか……。


「団長、風邪っスか?」


「いや、違うと思うが、急に悪寒がしてな」


クロノスは不思議そうに、首を傾げた。



自分の腕の中で、赤くなったり青くなったり

表情がくるくると変わる凛桜をみて魔王は楽しんでいた。


(本当にいつみても飽きない女だ……)


「クロノスさんのバカ……」


今は烈火のごとく怒っている凛桜をみて

そろそろ真実を打ち明けないと可哀そうだと思ったのだろう。


「凛桜……」


「はい……」


「さっき言ったことは、必ずしも真実ではない」


「どういうことですか?」


「噂が1人歩きしているという事だ。

確かにアメリーニャは、そういう成分も含まれている。

が、本当の主な成分は違う」


凛桜は、訳がわからないという表情を浮かべた。


「主な成分は、毛量を増毛できるのだ」


「は?」


「つまりは、毛生え薬だ」


「………………」


毛生え薬だと!?


え?だってクロノスさんといいルナルドさんも

どちらかというと、もっふもっふのふっさふっさだよね?


「獣人とっては、貴重な薬だろう。

特に獣人の男は、毛並みを大事にすると聞く。

それがステータスであり、男としての価値なのだろう。

媚薬はあくまでも、その過程で出来る産物だ」


「はー」


なんとも覇気のない返事しか返せなかった。


(欲しがる意味がさっぱりわからない……)


すると、魔王様は徐に凛桜の顎を掴んで言った。


「男というものは、好きな女の前では

いつも最高の状態を見せたい生き物なのだ。

その癖に、その努力を見せるのが嫌いな生き物でもある」


「魔王様?」


「我とて常にそう思っているぞ。

今、この瞬間も……。

ん……お前にもわかるだろ、この切ない男心が……」


魔王様の赤い瞳が甘く揺れた。


「…………!!」


ある意味この人の瞳からは……

色気というセクシービームがばしばし出ているわ

と、真剣に思った凛桜であった。


恐るべし魔王……。



後日、ルナルドさんにはアメリーニャを1株譲りました。

プライベートな温室で、大事に育てるそうです。


やっぱり毛生え薬作るのかしら。

聞きたかったけど聞けなかったわ。


クロノスさんには、どうしようかな……。






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