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93.ドーナツ最強説

田舎暮らしを始めて102日目の更に続き。




皆心配して、来てくれた。

不謹慎だけど……なんだかとても嬉しい。


白蛇ちゃんの大胆行動には驚いたけれども

心配からくる故だし。


凛桜は、目の前で繰り広げられている

男達のやり取りを、ニコニコしながら眺めていた。



「では、我らはお暇することにしよう。

凛桜、無理をするではないぞ」


そういって巨大白蛇さんは、尻尾で凛桜の頭を撫でた。


「はい、お見舞いに来てくれてありがとうございます」


「凛桜ぉ~また会いに来るからね。

その時はまたオムライスにいっぱい愛の言葉を描こうね」


そう言って、優しく凛桜を抱きしめながら

凛桜の肩に顔を埋めて摺り寄せて甘えていた……。


「フフフ……。

いくつになっても白蛇ちゃんは甘えん坊さんだね」


そう言いながら、凛桜も嬉しそうに頭を撫でていた。


しかしそこにいた男達は気がついていた。


その笑顔の裏で、白蛇ちゃんとやらがとてつもない牽制を

周りに放っていたことを……


本気か、こいつ!!

こんなにもあからさまにするッスかね?


噂には聞いていたけれど、蛇の狡猾さと陰険さは

伊達じゃないっスねぇ……。


ルナルドと無言で目を合わせながら

お互いに苦笑した。


その横でクイーンママが、ぽそりと呟いていた。


「シロヘビ、ユダンデキナイヤツ」


そうして、名残惜しそうに巨大白蛇親子は帰っていった。



「ダイジョウブカ?」


「イタイカ?」


キングパパ達が、心配そうに葉っぱを揺らしていた。


「大丈夫……と言いたいけれども……

まだ少し痛いかな」


するとキングパパ達は、ブルブルと震え出して

大きな1つ目をカッと見開いてルナルドに詰め寄った。


「ヤッパリ()()()()()()()?」


「ヤル!!」


えっ?

やるって何を?


凛桜とノアムはその発言に首を傾げた。


何故だが、シュナッピーも興奮したように

雄叫びをあげて踊っている。


「あかんっていうたやろ。

あれが精一杯の譲歩や」


困ったようにルナルドが首を横に振っていた。


「ナゼダ!!」


「ナゼ」


「だから説明したやろ……」


なんだかキングパパ達とルナルドさんが揉めてる……。


そんな様子をみながら、ノアムは気がついてしまった。

その瞬間、背中に何か冷たいものが走った。


流石フラワー種の頂点……

やるって=殺すって事か!!


あいつらイノシシを闇討ちする気だったのか!


ノアムは眩暈のようなものがしてきた。


ある意味、凛桜さんが一番怖いっス。

白蛇族だけじゃなくて……

フラワー種にまで愛されているッスか!!


ここまでくると、罪な女っスよ。


団長大丈夫っスかね。


あの人…

恋愛に関しては、キングオブ中のキングヘタレッスから。


キングパパ達の怒りは収まらないようで

ルナルドも困り果てていた。


が、その時……凛桜が動いた。


「………………!!」


あ、凛桜さんが宥めるようにドーナツを渡している。


「ドーナツ、キタァァァァアァ!!」


「ドーナツ!ドーナツ!!」


あー、今度は凄い喜びようでキング達が踊っている。


ドーナツってそんな、最強アイテムだったスかね?

一発で怒りが収まっている……。


俺も食いたいッス。


それから全員で、ドーナツでお茶をした。



「はー、助かったわ。

あいつら言い出したら聞かへんのや」


若干疲れ切った顔で、ルナルドさんは緑茶を啜っていた。


「いや、キングパパ達の気持ちは嬉しいです。

でも、仕返し的な事は望んでいません。

ちゃんとこの国の法律で、然るべき裁きを受けて欲しいですから」


凛桜は真面目な顔でそう言った。


「そやな……。

血で血を争う事は、また新たな悲劇を生むかもしれんしな」


「…………」


ノアムは、2人が言っていることは

所詮、奇麗ごとだなと思ったが……

それぞれ顔が違う様に、人は考え方や価値観が違うのもまた事実だ。


この世界は、弱肉強食なのだ。

喰うか喰われるかが当たり前。


慈悲はないのだ、力こそが全てだ。

前の俺だったら、本気でそう思っていただろう。


でも1人でもそういう考えの人がいてもいいか。

慈悲や優しさの欠片は、確かに存在するのだ。


いや……1人じゃないな。

あの男もそうだった。


だから俺……あの人について行くって決めたんだ。


ノアムは空を見上げながら

若かりし日の出来事を思い出していた。



「ノアムさんもココアのお代わりいる?」


不意に横から話かけられた。


「へ?ああ、ああ。

お願いするッス、このドーナツ美味いっスね」


ノアムは何事もなかったように、そう言って笑った。


その目の前では、あいかわらずフラワー種の

“オカワリ”コールが響いていた。


「おまえら、ええかげんにせぇよ」


そう言いながらも、楽しそうにドーナツを頬張る

ルナルド達がいた。




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