表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/216

8.突撃訪問

朝早くから庭の方から地響きがする……。


ズシーン、ズシーン、ズシーン。

バリバリバリバリィィィ。


今度は何かが割ける音まで聞こえてきた。


怖い……怖すぎる。

夢であってほしい……夢で……。


しかし音は大きくなる一方だった。


「どうしよう、きなこ、黒豆」


「キューン……」


きなこ達も凛桜に寄り添って困り顔をしていた。


しばらくすると音が止んだ。




どうしよう、雨戸をあける勇気がでない。

今日一日くらい開けないでもいいか?


いやいやいや……。

そういう訳にはいかないよね……。


クロノスさんが結界張りなおしてくれたばかりなのに

この仕打ち……。


身支度を整えて、いざ雨戸の前に立った。


「黒豆、きなこ、傍にいてね」


「ワン!」

凛桜は思い切って雨戸をあけてみた。


するとそこには信じられない光景が広がっていた。


「………………!!」


バンッッッッ!!


思わず雨戸を閉めてしまった。


気のせいかなぁ、信じられないほど巨大な何かが

庭の中央に陣取っているのが見えたんだけど……。


黒豆達もまたの間に尻尾をいれて、獣耳も下がって萎縮している。


またもや、そぉーっと雨戸をあけてみた。


いるし、確実にいるし……。

えっと、どちらさまでしょうか……。


庭の中央には、高さ3メートルはあるだろうか

巨大な白蛇が鎌首をもたげてこちらを見下ろしていた。


「…………」


白蛇ちゃんではないよね。

あの一回の脱皮でこのサイズになったらヤバい。


いや、異世界の蛇だからそれもありえるのかな。

見た目は白蛇ちゃんそっくりなんだよね。


巨大白蛇は、その青い瞳で凛桜達をじぃーと見つめていた。


た……食べられちゃうのかしら私たち。


するとその巨大白蛇は口をかぱっとあけた。

(ヒィィィィ……もうこれは無理ぃぃぃぃぃ!!)


凛桜は覚悟してぎゅっと目を瞑ったが……

その時信じられない声が聞こえた。


「娘よ……。

息子を助けてくれて礼を言う、ありがとう」


「ん?」


おそるおそる目をあけると巨大白蛇がニヤリと笑っていた。


「息子さん?」


すると、その巨大白蛇の後ろから、一回り大きくなった

白蛇ちゃんが、籠を咥えた状態で出てきた。


「白蛇ちゃん!?」


ススっと凛桜の前までくると、籠を突き出した。


中には、果物らしきものやキノコがたくさん詰まっていた。

色はなにやらカラフルでみたことないものが大半だったが

おそらく食用のものだろう。


「くれるの?ありがとう」


ありがたく受け取ることにした。


巨大白蛇がズイッと前に出ようとした。

思わずビクッとして一歩下がってしまった。


「我の姿が恐ろしいか……」


「あっ、すみません、そのあまりにも大きいので」


凛桜は恐縮しながら謝った。


「ふむ……、ならしばし待て」


そういうと巨大白蛇から眩しい光が発せられた。


眩しい……目がくらむ。

光がやんでそっと目を開けると、そこには青年が立っていた。


白い髪に青い瞳……。

顔や腕など所々に鱗が浮き出ていたが

透き通るような美しい麗人だった。


腕には白蛇ちゃんだろうか……

三歳児くらいの可愛らしい子供を抱いていた。


「めったにこの姿は取らないのだが……

お前は特別だ」


上から目線の発言だが、この男が言うと嫌味な感じに聞こえなかった。




そして何故か縁側で一緒にお茶をしています。


巨大白蛇さんが言うには、自分が留守にした隙に

天敵のカラス族に縄張りがあらされた事……。

その時に息子さんの白蛇ちゃんが襲われたらしい。


白蛇ちゃんがうちをみつけた事は偶然だったらしいが

そのおかげで命が助かったのでお礼にきてくれたとの事だった。


「それに……息子がいうには……

こちらは信じられないくらいうまい卵焼きをだす店らしいな」


「…………」

凛桜は遠い目になった。


だからうちは定食屋じゃないっていっているでしょうが!!

お前もかっ!


「できれば、我も食したいのだが。

あいにく金はもってないので、これを持ってきた」


そう言うと明らかに宝石のような石をゴロゴロ

縁側に並べ始めた。


「いやいやいや……。

こんな高級なもの困ります、今すぐしまってください」


何故だ?というように白蛇の麗人は首を傾げた。


「あと大変申し訳ないのですが……

うちは店ではありません、ただの民家なんです」


「なんと、定食屋ではないというのか……。

信じられん、かなりの数の卵料理が出てきたと

きいていたのだが」


残念そうに白蛇の麗人は目を伏せた。

激しくがっかりしているのが伝わった。


「店ではありませんが、卵料理なら作りますよ」


もう作るしかないよね、この流れ。


「おぉ、そうか!それはありがたい」


白蛇ちゃんも嬉しそうに微笑んだ。


「少し待っていてくださいね」


「うむ」


二人を縁側に残して、台所へと向かった。

ひとまず思いつくだけの卵料理を食卓いっぱいに並べた。




「おぉ……」


二人は目をキラキラさせてその光景を眺めていた。


「本当にこれを我々だけで食していいのか?」


やはり蛇だからだろうか、あの特有の二股に分かれた

舌をぺろりとだして、舌なめずりをしていた。


瞳孔も更に縦長になり、まるで獲物を狙う様に細められた。


「す……好きなだけ食べてください」


「ありがとうございます」


白蛇の親子は、凛桜の料理を心ゆく迄堪能した。




「今日はお礼に来たのに、我の方がもてなしを受けてしまった。

これでは我の気が済まない……」


そう言って、白蛇の麗人は徐に自分の皮膚の鱗を

雑多に何枚か引き抜いた。


「これをやろう、我の鱗は万病に効くからな。

特別だ……お前のような者ならこれを悪用することはあるまい」


そう言って凛桜の掌に七色に光る鱗を数枚のせた。


なんか凄いレアアイテム頂いちゃったよ。


「息子の脱皮した皮も万病に効くぞ。

もし金に困ったら売るといい」


「この鱗と一緒に大事にしまっておきます。

売るなんてとんでもない」


凛桜はぶんぶんと首を横に振った。


「クスッ……欲のないやつじゃ」


そういって妖艶に微笑んだ。


「では、またな……」


そういうと再び巨大白蛇の姿に戻った。


「あっ、これお土産です。

ぜひ皆さんで召し上がってください」


先程もってきてくれたかごいっぱいに煮卵と卵焼きを

いれて渡した。


「おぉ、ありがたく頂く、では」


そういって庭の奥に消えようとしていた時だった

ふいに巨大白蛇は振り返っていった。


「肉食獣の男に言っておけ。

あんな()()()()()などへでもないわとな」


挑発的にニヤリと笑ってそう言うと今度こそ庭の奥へと消えた。


田舎暮らしを始めて6日目、巨大白蛇の親子に出会った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ