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77.美人モデルさんは……

田舎暮らしを始めて92日目。




いやー、昨日は本当にびっくりしたなぁ。

まさかあんなクロノスさんを拝めるなんて……。


凛桜は布団の中でゴロゴロしながら

噂のページを開きながら昨日の出来事を思い出していた。


そのクロノスは、見られたショックと恥ずかしさからだろうか?


しおしおになりながら、肩をおとして無言でそのまま

帰っていってしまった。


どうしようかと思ったが、ノアムさんとカロスさんが

何とかするから気にしないでいいと言ってくれた。


可哀そうなくらい萎れていたよ。


あのいつも強気で笑顔が絶えないクロノスさんが

何としても見られることを阻止したかったものは

クロノスさんと表紙の美人モデルさんとのグラビアだった。


グラビアというのが正解かわからないけれども

上半身裸のクロノスさんとかなり薄着のモデルさんが

恋人同士のように寄り添う、ちょっぴりセクシーな

写真が掲載されていた。


見開き2ページにわたり、それは掲載されていた。


因みにシリルさんも同じように美人モデルさんとの

グラビアがあったのだが、何故か6ページもあった。


しかも相手は、羊獣人さんで小悪魔っぽい女性と

貴族の装いなのだろうか?


街をデートしている写真から……

それこそ、ベットでのイチャイチャを想像させる

大胆なものまで、多岐にわたっていた。


シリルさんは乗り気だったのだろうか

ページ数がエグイ。


何気にドヤ顔でカメラ目線だし。

あんたはアイドルか?

と、いうくらい慣れている撮られ方だ。


シリルさん、あなた近衛騎士団の団長ですよね?


しかもめったに表に立たない、シークレットキャラ的な

存在じゃなかったっけ?


こんなの掲載されちゃっていいのかい?


大丈夫かこの国!?


凛桜は、苦笑せずにはいられなかった。


再びクロノスが掲載しているページに戻って眺めていると

思わず呟いてしまった。


「本当にいい身体してるよね……」


ジムとかいって鍛えたわけじゃないのに

この均整のとれた細マッチョ。

完全に仕上がってるよ!!


日々の訓練と魔獣との戦いでついた

筋肉なのだろう。


美人モデルさんを抱き寄せて、見つめる目が甘い……。


(恋人にはこんなに優しい表情をするのだろうか)


そう思ったらちょっぴりモヤっとした。

このユキヒョウの美人モデルさんと凄くお似合いだ。


親しそうだし、ハーレムの一員の方かしら?

それとも……

もしかして今現在お付き合いしている彼女さん?


「うー…………」


布団の中でじたばたしながら唸った。


「ダメダメ、やめたそういう考えは

精神衛生上よろしくない、うん、しっかりしろ」


凛桜は気合いを入れる為に、自分の頬を両手で

パンと叩いた。


そんな凛桜の行動に、不審そうな目でみつめる黒豆達。


「………………」


僕たち何も見ていません的に目をそらすのやめぃ。


よし、こんな時はうどんをうとう。

このもやもやをうどんで発散させるのだ。



数十分後……

凛桜は割烹着をきてキッチンに立っていた。


小麦粉(中力粉)と塩水、薄力粉または片栗粉があれば

うどんは出来ちゃうのだ。


大きめのボウルに小麦粉を入れたら、塩水を2、3回に

分けて加えます。


粉となじませる感じかな。

生地が塊になるまで根気強くかき混ぜていきます。


もやもやをここに全部ぶつけて

立派な塊ができたぜ。


よし、つぎは麺にコシを出すために生地を足で踏んで

こねる作業です。


生地を丈夫なビニール袋に入れたら(2枚重ねにするとなおよし)

バスタオルをかぶせて上から踏んでいきます。

まんべんなく踏むといいらしい。


平らになったら、生地を再び丸めて足踏みを続けます。


この工程を3回ほど繰り返すと生地の表面が滑らかになるので

これが目安かな。


コシを出すために長時間踏みたくなるのだけれども

あんまり踏みすぎるのもいけないとの事だ。


凛桜が一所懸命に足でうどんを踏んでいると

その人はやってきた。


「あんたが凛桜とかいう女?」


その女性は口を開くやいなやハスキーボイスで

そう言ってきた。


「へ?」


凛桜が驚いて顔をあげると……

その女性は腰に手をあてて奇麗なモデル立ちをしていた。


誰?

と、いうかこの顔どこかで見たことあるな……。


ユキヒョウの美人さん……美人さん……


「あぁあああああ!!」


凛桜は急に大声をだした。


「ちょ……なによ、急に大きな声を出さないでよ」


その女性は煩わしそうに眉尻をあげた。


(クロノスさんとグラビアで共演していた

美人モデルさんだ……)


ふぁ……生で見ると本当にお人形さんみたいだな。

凄く可愛いしスタイルがいい。


あんな上から目線で来られたのに

つい見惚れてしまった。


「何よ……」


そんな凛桜を訝しがるように見つめていた。


ハッ!いけない!

見惚れている場合じゃない。

なんでこの人が我が家に?


しかもシュナッピーの洗礼をうけていないなんて

どういう事なの?


まさかこの細腕で歴代の猛者とかじゃないよね?


凛桜は、その女性を上から下まで見た。


フワフワの細身のドレスにピンヒールみたいな靴。

爪にはネイルのようなものもつけている。


獣耳も尻尾もモフモフだ。

桜色の唇も艶々で、澄んだ青い瞳が美しい……。


なんならちょっぴりいい香りもするくらいだ。


いや、違うな……

これは重いものを持ったことがないお嬢様だな。


そう思ってシュナッピーの方をみたら

もぬけの殻だった。


(どこに行った?)


どうやら運よくというべきか?

シュナッピーは不在らしい。


畑にいったのか、はたまたちょっと遠出かしら?

たまにいなくなるのよね。


「…………って、きいてるの?あんた」


「はい?」


いきなりまた何か言われたようだった。


「えっと……?」


凛桜は困ったように眉尻をさげた。


「だから、()()()()()()()()()()といっているの」


「ん?んん?」


「わかるでしょ、クロノスはあなたが付き合えるような

人じゃないってこと」


はい?

藪から棒になんだって?


凛桜があっけにとられている事なんかおかまいなしに

次から次へと罵詈雑言をはいた。


どうしよう、何か凄く勘違いなさっているようだけれども

口を挟める気がしない。


「聞いてるの!?」


反応の薄い凛桜に業を煮やしたのか……

いよいよ彼女が凛桜にせまろうとしていた時だった。


「はーい、そこまでッス」


そう言ってノアムが彼女の腕を掴んだ。


「勝手に動かれては困りますよ」


カロスも反対側の手を掴んだ。


救世主の登場だ。


まさかこの2人が現れると思わなかったのだろう

美人なユキヒョウさんは一瞬動きが止まった。


「揃いも揃ってお前たちまでなによ。

邪魔をしないでよ」


でもすぐに覚醒したのだろう……

彼女はますます怒って獣耳と尻尾を逆立てた。


「何やってるんッスか。

団長も言っていたじゃないっスか」


ノアムが諫めるようにいうが、聞き入るわけもなく

鼻で笑ってあしらっていた。


「フン、あの人が本音なんかいう訳ないじゃない。

そういうことは身近にいた私が一番わかっているんだから」


「そんなにあの撮影の時の出来事が嫌だったのですか?」


カロスがそう告げると、美人なユキヒョウさんは唸った。


「あたりまえでしょう。

この私との撮影よ、ありえない」


わなわなと震えながら更に吠えた。


「どうせ全部この凛桜とかいう女のせいでしょ!!」


えぇぇぇぇぇぇ!!


なんか知らんけど、凄く恨まれていますが

全く身に覚えないんだけれど。


凛桜は口をあんぐりあけながら3人のやり取りを

ただ無言で見ているしかなかった。





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