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7.どちらさまですか?

田舎暮らしを始めて5日目の午後の事だった。




異世界の影響なのだろうか……。

野菜の成長もすこぶる早い。


じいちゃんが植えたであろう野菜達が収穫時を迎えていた。


籠をもって一所懸命もいでいると

きなこ達の吠える声が庭の奥から聞こえてきた。


威嚇した声ではない。

何か小動物でもきたかな?


ん?と思って顔を上げると一人の男が立っていた。


軍服と思われる服をきこなし……

かなり美丈夫な男が目の前に佇んでいた。


(凄いイケメン獣人が現れた!!

やだ……異世界凄いな……)


思わず固まったまま動けなくなっていると

その男は親し気に話しかけてきた。


「元気にしていたか?

相変わらず旨そうな匂いがするなこの家は」


「はい?」


えっとどこかでお会いした事ありますかしら?

こんなにイケメンだったら忘れるはずは

ないんだけどな。


どちらさまですか?


凛桜は首を傾げていた。


「これ、ありがとう」


そう言って水筒となにやら豪華な箱のようなものを渡してきた。


水筒……。

この水筒……んん?


「えっ?えぇぇぇぇぇぇぇ!!

あの時の変態男!?」


思わず指をさしてのけぞってしまった。


「おいおい、変態男はないだろう」


男は苦笑した。


あのもっさりした得体のしれない獣人の本当の姿に

驚きを隠せなかった。


「女性が喜ぶものがわからねぇが

王都ではやっている菓子を買ってきた。

この前の弁当の礼だ、よかったら食べてくれ」


「ありがとうございます」


「自己紹介がまだだったな。

俺は、クロノス=アイオーンだ。

この国の第一騎士団の団長を務めている者だ」


騎士団長さんなんだ。

どうりで強いはずだ。

細マッチョだしね、なんか納得。


「私は、蒼月凛桜です。

そしてこの黒い子が黒豆、茶色い子がきなこです」


「おう、よろしくな」


そう言ってきなこ達を優しく撫でた。




「よかったら、三時のおやつ食べますか?」


「いいのか!!」


クロノスさんは嬉しそうに尻尾をふった。


そこでプリンをだすと歓喜の声をあげた。

一つじゃ足りないだろうから、3つほど盛ってだした。


「おぉ!旨そうだ。

初めて見る菓子だ、プルプルしてんな」


そういって、おそるおそるスプーンですくって

一口食べた。


「…………!!」


獣耳がピーンとたった。


「うまいな!うまい。

このほろ苦い茶色いソースがたまらないな」


そう言ってバクバク食べだした。


そのあいだ凛桜は、頂いたお菓子の箱を開けてみた。

それは綺麗な花の砂糖漬けだった。


すみれや小さい薔薇、ビオラなど……

色とりどりの花が綺麗に並んでいた。


「可愛いですね、ありがとうございます」


凛桜は嬉しそうに微笑んだ。


「お……おう」


クロノスは照れながら頭をかいた。


それから大まかにこの国の事をきいた。

どうやら国の南側に広がる森の中にうちはあるらしい。


まいったな、本当に異世界なんだ。

まだ信じられなくて、どこか他人事のようにきいていた。


「ところでひとつ聞いていいか?」


「はい?」


「凛桜さん……。

いつのまに蛇族と知り合いになったんだ?

かなり親しい仲みたいだが、その……」


言いにくそうにクロノスはきりだした。


「へっ?」


いきなり何を言われているのかわからなかった。


「その……つきあってるのか?」


「ん?」


つきあってる?誰と誰がですか?


「そこに脱皮した皮があるだろ。

この家に入った瞬間、蛇の匂いがしたからな。

あんたガッツリマーキングされているぜ」


そういって、クロノスは縁側の方を指さした。


あぁ……白蛇ちゃんの皮か。


「えぅ……マーキング!?」


凛桜はその威力ある単語をきいて目を白黒させた。


「しかもその個体……。

族長クラスの皮だ……これみよがしに置いていきやがって」


白蛇ちゃん、そんな大物だったのか。

そんな凛桜の様子をみて、少し怒ったようにクロノスは言った。


「大丈夫なのか?

ちゃんと身元がはっきりした男なのか?」


お前がいうな、お前が!

これを言うのは二度目だな……。


「どうだろ……」


まずは男だったのも今初めて知ったくらいです、はい。


「…………」


クロノスは眉間に皺をよせてため息をついた。


「今度きたら追い返せ、いいな」


かなり怖い顔で凄まれた。


「は…はい」


有無を言わせない圧だったので、首を縦にふっておいた。


「よし、ちょっと結界を更に強力に張りなおしてくる」


そう言って庭へと降りていった。


よくわからないけど、気をつけろってことね。

白蛇ちゃん、可愛かったんだけどな。



その後クロノスは勿論当然のように

しっかりと夕飯のトンカツを3人前たいらげて……

今日もしっかりとお弁当をもってかえった。


メニューは、白ご飯にハンバーグ、ポテトサラダ

茹でたブロッコリーにカニカマ炒り卵焼きだ。

デザートに最中を2個つけた。


「本当にきをつけろよ」


そう言ってクロノスは、庭の奥へと消えた。


今日は濃い一日だったな。

凛桜はお風呂に入ってから、すぐに就寝した。

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