表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/220

66.無事に!!

田舎暮らしを始めて83日目。




眠気眼をこすりながら雨戸を開けると……

そいつは()()()()()()()()()()()()()


「ん?」


おかしいな、幻か?

はたまたまだ夢の中かしら?


凛桜は、一回思考が止まった。


もう一度念のために、瞳を閉じて深呼吸をした。

スーハー、スーハー。


「ふぅ……」


(よし、整った)


ゆっくりと目を開けて中庭をもう一度見た。


「いるし!!」


凛桜はのけ反って目を剥いた。


「キューン」


そいつは嬉しそうに一言そう鳴いた。


「シュナッピー!! 無事に進化できたんだね!!」


幾分シュッと引き締まった顔になった

シュナッピーがそこにいた。


顔の色が前はかなり青い色だったが……

今は“ターコイーズブルー”になっていた。


目と口が小さくなったのだろう。

かなりバランスのとれた顔になっている!!


前はどちらかというと残念なビジュアルだったが

今は、ちょっとイケメン寄りになった気がする。


そんなことよりも……

一番気になっていた花弁の色なんですが

なんと“シルバー”だった!!


顔の周りというのか?

それとも首周りなのかわからないけれども

花弁は奇麗に円を描くように、規則正しく生えていた。


「シュナッピー、シルバーランクになったの?

やっぱり強い子だったのね」


確か全体の5%前後なんだよね。

もの凄い貴重種じゃない!?


凛桜が感心するようにそう言いながら、そのまま花弁に触れた。

見た目に反して柔らかくしっとりとした肌触りだった。


シルバーだから、金属のように硬くて冷たいかと思ったけれど

かなり肉厚で、弾力があるものだった。


そうか!何かに似ているかと思ったら“アロエ”だ。

感触はまさにそれだわ。


フニフニと優しく触りながら……

あなたやっぱり植物だったのねぇ。

なんて当たり前の事を再認識してしまった。


「キューン、キューン」


ドヤッと言わんばかり、シュナッピーは得意げに鳴いていた。

そういえば、声変わりもあったのか?


まさかの変声期?

と言わんばかり、少し鳴き声も低くなっていた。


なんだろうこの母性本能をくすぐる感じ。


よく頑張って大きくなったね!

と、いう気持ちが胸いっぱいに広がった。


「もう、心配したんだから」


「キュ?」


凛桜が声を詰まらせてすこし涙ぐんでそういうと……

驚いたように目をカッと見開いてオロオロしていた。


が、すぐに嬉しそうに葉っぱを揺らして

甘えるように凛桜に頭を擦り付けてきた。


「フフフ……おかえり」


「キューン」


凛桜はその頭を優しく撫でた。


ふとそのまま上に視線を上げると……

一回り大きくなった角が生えていた。


鬼感がはんぱないよ、角!!


でもやっぱり柄は前と変わらず“蛍光ピンクと黒の縞々模様”だ。


もしかして、シュナッピーのパパが黒い角で

ママがピンクの角とか?


遺伝的な仕様なのかな?

なんて勝手に思ったりしています。


なにやら紋章のついた南京錠も、変わりなく今回もあります。

どうやら前と変わらず私のシュナッピーのようです。


誰の紋章なのさ?

問題はひとまず横に置いておくけれども

今度ちゃんと確認しようかな。


たぶん……じいちゃん絡みだと思うけど。


もしかしてこちらの世界ではすでに

“ブルームーン家”として何か登録があったりして。



「そなたをブルームーン家の当主として認める。

今後はこの紋章と共に名乗るがよい」


「おう、ありがとな!」



なんて感じでこの国の偉い人とやり取りしている姿が

ありありと浮かんできてしまった。


あの人なら、本気でありえそうで怖いわ。

何をしたら紋章なんてもらえるのさ、じいちゃん。


そんな脳内妄想を勝手に繰り広げながら……

凛桜は、角をまじまじと観察しながら頭を優しく撫でていた。


シュナッピー自身も気持ちがいいのか

目を閉じて恍惚の表情で大人しく撫でられていた。


そこに……

シュナッピーの存在に気が付いたきなこ達がやってきた。


2匹は一目散に駆けてきて、飛びついてきた。


そのあとは、歓迎ムードMAXで

シュナッピーの周りを嬉しそうに駆け回っている。


「ワンワン!!」


「…………!! キューン、キューン」


それが嬉しいのだろう。

シュナッピーもつられて、怪しい踊りを踊り始めた。


もちろん流れてはいないのだが

オリエンタルな曲が聞こえてきそうな雰囲気だった。


それにあわせて踊り狂う植物に、周りではしゃぐ犬達。


(何これ……)


まさにシュナッピー誕生祭を祝うかのようだ。


進化して舞踊のレベルも上がりましたか……。


(大丈夫これ?

何か召喚されちゃわない!?)


それくらい怪しい激しい踊りだった……。



一通り踊って気が済んだのだろう。

2匹と1体は、また凛桜の元へ集ってきた。


「お腹空いたでしょう。

まずは、これをお食べ」


凛桜は、魂の欠片を5粒あげた。


「もきゅもきゅ……」


シュナッピーは嬉しそうに食べていたがふと顔をあげると

これじゃない!あれが食べたい!!


と、目で訴えてきた。


凛桜はそれに対して、とびきりの笑顔で頷いた。


「フフフ……

そうじゃないかと思って毎日作っていたんだよ。

今日は、特別に好きなだけ食べていいわよ」


そう言って、シュナッピーの前に山盛りのドーナツを置いた。


「…………!!」


シュナッピーは感激したかのか、身体全体を震わせた。


そして、何を思ったのかわからないが急に走り出し

フィギュアスケートの選手の如く

華麗なトリプルアクセルをきめて喜んでいた。


思わず心の中で、8.0点って叫んじゃったわ。


シュナッピーが生まれて、最初に食べた凛桜の料理は

“ドーナツ”だ。


そのせいなのか?

あの日からシュナッピーの1番の大好物は、ドーナツだ。


他の料理も喜んで食べるのだが

ドーナツには思い入れがあるみたいだった。


喜びようが毎回尋常じゃない。


ある意味刷り込みなのかしら?


「相変わらず、凄い喜びようね」


飛びつくようにお皿に顔をうめて食べていた。


「きなこ達は、キングビッグサングリアのジャーキーを

あげるからおいで」


「ワンワン!!」


2匹と1体と凛桜で喜びの再会を果たした。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ