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60.そうなら初めから言ってよ!!

田舎暮らしを始めて77日目。




今日もすこぶるいい天気だ!


よしっ、気合入れて作るぞ。

凛桜は割烹着のまま、袖を捲った。


昨日の夜からどうしても餃子が食べたかった。


今なら冷凍食品から有名店の通販まで

美味しい餃子には事欠かないが……

私はお家で作る家庭的な素朴な餃子が好きだ。


そうは言っても、皮からつくる本格派餃子なのだ。


「薄力粉と強力粉……

あとは……片栗粉はあったかな」


凛桜はシンクの上の戸棚を開けた。



まずは、小麦粉に熱湯と塩を混ぜたものを入れて

箸でかき混ぜる。


それから手で触れる温度になってから3分ほどこねる。


最初はポロポロしているんだけど、捏ねていると

うまい具合にまとまってくれるのよね。


フフフ……黒豆達がまた柵の外でじっーと

みつめているわ。


餃子はあげられないけれど、別に作った肉団子を

あげるから楽しみにしておいてね。


棒状にしたら16等分にして全て球状にしてから

片栗粉を小さじ1/2程まぶしてからラップに包みます。


あとは冷蔵庫で30分ほど冷やしておきます。


この間に、中の餡を作ろうかな。


そう言えば、今日はシュナッピーが飛んでこないな。

昨日遅くまで、きなこ達と遊んでいたから疲れちゃったのかな?


そんな事を思いながら冷蔵庫から

キングビッグサングリアの塊を取り出した。

これを使ってミンチを作りたいと思います。


包丁である程度ざっくり切ったら

フードプロセッサーに入れて出来上がり!


便利よね、フードプロセッサー。

かなりできる子なのだ。


「このミンチに、塩、醤油、オイスターソースを入れて

胡椒を加えてよく混ぜます」


ここが以外に大事なのよね。

肉と調味料をしっかりとまぜて、肉の粘りを出すのが重要。


「ここに更に、酒と鶏ガラスープを入れてよく混ぜます」


最後に野菜たちを入れます。

最初に野菜を入れると、水が出てべちゃべちゃになりがちだからね。


刻んだショウガ、ニンニク、キャベツを入れてから

片栗粉を入れてから、ざっくり混ぜます。


「今のところはいい感じだ。

仕上げにごま油を混ぜたら完成っと」


皮もいい感じに仕上がったかしら?

冷蔵庫から取り出し、最後の工程にかかった。


手のひらで円盤形に潰していくのだ。


その後に、打ち粉をしっかりしてから円盤の真ん中から

綿棒を当てて、餡を包めるくらいの形を作る。


おおよその目安だけど、だいたい直径10㎝くらいかな。

後は叩いて余計な打ち粉を落とせば完成!!


この皮を、一晩寝かせるともっともっちり感が

増すけれども、今日はすぐ食べちゃいます。


あーでも、予備の皮を作って寝かせておこうかな。



あとはせっせと皮に餡を入れて包んで出来上がり!!


この餃子のヒダヒダがうまく奇麗に出せると

なんだか嬉しいのよね。


全部で40個くらいできたかしら。

そのままトレーに奇麗に並べておきましょう。


「わんわん!!」


きなこ達が催促するように吠えた。


「まだよ、お昼になったら肉団子も一緒に焼いてあげるから」


「きゅーん」


2匹は残念そうに鼻で鳴いた。



ひと段落ついて、凛桜は紅茶を飲んで休憩していた。


そう言えば、まだシュナッピー寝ているのかしら。

ちょっといくら何でも寝すぎじゃない?


凛桜は心配になって、縁側から中庭に降りて

シュナッピーの元にむかった。


黒豆達もその後をトコトコついてきているようだ。


遠目から見るとまだ寝ているようだった。


「シュナッピー、今日はお寝坊さんだね」


そう言って、シュナッピーの前まで来た凛桜は

声にならない叫びをあげた。


「…………!! …………!?」


何故なら、そこには()()()()()()()()()()()()()

シュナッピーがいたからだ。


角も折れたのか、下に転がって落ちていた。


(角!! もげてるし!!)


「えっ?なに……どういうこと……えっ?えっ?」


思いもよらない光景に言葉を失い……

信じられないくらい狼狽えていた。


黒豆達もそんな雰囲気を悟ったのだろう

困ったように右往左往している。


「やだ……、シュナッピー

どうしちゃったの、なんでこんな姿に……」


葉っぱや茎は普通に緑なのだが

本体とでもいうのか?


青かったはずのシュナッピーが

見るも無残にカラッカラに干からびて茶色くなって

半分くらいの大きさになっていた。


「病気?

その前に生きているよね?」


震える手でシュナッピーを撫でた。


もちろんそんな凛桜の問いかけに答える訳もなく。


どうしよう……。

やだ、泣けて来ちゃった……。


「シュナッピーィ…………」


凛桜はそのまま泣き崩れた。


そこへ背後から声が聞こえてきた。


「どうした?」


泣きながら振り返ると、魔王様とコウモリさんが佇んでいた。


「魔王様……。

シュナッピーが……シュナッピーが……」


凛桜は堰を切ったように泣き出した。


そんな凛桜の様子に魔王様は、確認すべく

シュナッピーの前まで進んだ。


「…………ふむ……」


「昨日までは元気だったんです……ぐす……。

さっき見たらいきなりこんな姿に……ううっ」


そう言うとまたポロポロと泣き出した。


「キュ……」


「そうだな……」


魔王様とコウモリさんは目を合わせて頷いていた。


「凛桜……。

悲しまなくてもよいぞ……」


魔王様はそう言うと、凛桜の涙を親指で優しく拭った。


「えっ?」


「こやつは今、青年期に入るために蛹化の期間に入った」


「はい?」


(蛹化?

蛹化って、あの蝶が蛹になるあれの事?)


なんで?

シュナッピーって植物だよね、一応……。


蛹になるって、もうそれはもはや昆虫の域ですよね!?


凛桜の頭の中では疑問がいっぱいだった。


「ちゃんと成長している証拠のようなものだ。

第二形態に進んだというべきか。

こんな見た目だが、ちゃんと生きているぞ安心しろ」


そう言って魔王様は目を細めていた。


いやー、もうわけわからないから。


第二形態ってなによ、ラスボスか!?

ぱくぱくパックンフラワーってなんでもありかよ。


凛桜はすっかり涙が引っ込んでいた。


「3~5日したら、また元のように戻るから

ほっておいていい」


「はぁ……」


謎すぎる、本当に謎すぎる。

食中魔界植物って一体なんなの!?


よくわからないが、成長過程の一環の事だと

いうことは辛うじて理解した。


あたりまえの情報なら、誰か先に教えて欲しかったわ。

こんなに大泣きして恥ずかしいわ!!



もやるなか、モッチモチの焼き餃子と水餃子を

魔王様にふるまった。


コウモリさんには、果物がゴロゴロ入ったゼリーを出した。


「餃子というのか、美味いな……」


相変わらず抑揚のない声だったが、箸の勢いは止まらない

魔王様であった。


そのまま、春巻きとコーンスープとエビチリも作った。


魔王様が無言で、もっと食べたいと訴えてきたので

麻婆豆腐とチャーハンまで作ってしまった。


意図せず中華三昧なランチになった。


「もういっそうの事、店を出さないか?」


至極真顔で魔王様は言った。


「いやいやいや、うちはあくまで民家ですから」


杏仁豆腐を出しながら、凛桜は苦笑していた。



「あやつの事は、心配しなくていいからな」


そう言って凛桜の頭を優しく撫でたあと

魔王様はコウモリさんと一緒に空に消えた。


もちろん今回もお土産を渡した。


コウモリさんの強いリクエストで

コーンスープと杏仁豆腐。


魔王城に帰って一杯やりたいという魔王様のリクエストで

キングビッグサングリアのチャーシュー。

水餃子、ピリ辛胡瓜、豆もやしとメンマのピリ辛あえだ。


本当に今日は肝が冷えた。

もう……シュナッピー頼むよっぉおおお。




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