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6.卵料理って美味しいよね

そいつは、私の卵焼きをじっと見つめている。

穴があくのではないかくらい見つめている。




リアルに蛇に睨まれたカエル状態なのですが……

どうしたらいいのでしょう……。


相談者は某県在住、28歳 イラストレータさんです。


「…………」


「………………」


食べづらい……そろそろ手もプルプルしてきた。


もしかして、食べたいのかな?


蛇に卵焼きあげてもいいのだろうか……。

そもそも普通の蛇なのか?問題もあるが……。


「食べる?」


言葉が通じるかわからないが話かけてみた。


「…………!!」


白蛇さんは、一瞬目をカッと見開いてから

首を縦に振るように頭を上下に動かしていた。

嬉しそうに尻尾も左右にふられている。


(尻尾を振っているけど威嚇じゃないよね?

喜びだよね?)


ドキドキしながらその様子を見ていたら

白蛇が音もなくスーっと横にきた。

思わずそのまま、白蛇さんに手づかみで卵焼きを

あげてみた。


ぱくっ。

小さい体に似合わず、卵焼きを一飲みした。


(おう、結構ワイルドな食べ方。

開いた口が真っ赤で、上下左右に牙があって怖かったぞ)


白蛇さんはお気に召したのか……

顔がもっとくれと言っていた。


「フフフ……美味しい?もっと?」


もう一切れ与えてみた。


今度はちゃんと嚙み砕くように、ハグハグと食べた。


(ちょっと可愛くみえてきたぞ)


そんな事を繰り返していたら、すべて与えてしまっていた。


「あ……、もうないわ」


白蛇は……

えぇっ?終わりなの?

という顔をしていたが、かなり満足したのだろう。


お礼をするように、ぺこりと一礼すると

また音もなく移動して、自ら段ボールの中へと入っていった。


なんだったのだろう。

蛇だから卵好きなのかな?

偏見かしら……。


ひとまず、手を洗いに行き……

今度こそは自分のご飯を食べるべくお箸を握った。


その日は、それっきり白蛇さんは段ボールから出てこなかった。




田舎暮らしを始めて4日目。

この日は朝から雨が降っていた。


庭仕事は無理だな……。


例え食材が減らない、傷まないといえども調理しないと

いけないと思い、作り置きを大量生産する事にした。


そっと段ボール箱を覗くと、白蛇さんはとぐろを巻いて寝ていた。


寝て体を治しているのかな……。

そっとしておくことにした。


午前中はせっせと総菜作りにはげんだ。

作り始めると、とまらくなってしまう。


最後の一品を作り終えると、既にお昼をすぎていた。


つまみ食いをかなりしてしまったので軽くお腹いっぱいだ。

お昼は、うどんでいいかな。


具材は、油揚げにかまぼこ、それに半熟たまご……。


そう言いながら、用意をしていると……

何か足元にヒヤッとしたものが触れた。


「ひゃぁ……!!

もう黒豆?それともきなこ?びっくりするじゃない」


犬の鼻はけっこう湿っていて冷たい。

ふいにぺたっとそこで体に触られると驚くことがある。


今回もそうだと思って足元をみると

白蛇さんがすり寄っていた。


「君だったの!?」


またもや白蛇さんは、右手に持っている卵にくぎ付けだった。


(あなたには卵センサーか何かついているのかい?)


凛桜は苦笑しながら、半熟卵を白蛇に与えた。


ぺろりと3つほど食べると……

またもや段ボール箱に帰っていった。




夕飯時にも必ず来るにちがいないと思っていたので

“卵スペシャル”を作っておいた。


ゆで卵にプレーンオムレツ、カニカマ炒り卵焼き。

卵とトマトの中華スープ。


デザートにはプリンを作ってみた。


案の定、用意をし始めると……

行儀よく食卓のところに待機しているようだ。


「はい、召し上がれ」


白蛇さんは、器用にすべて綺麗に平らげた。


食べ終わると今日は、何故か近くまでよってきて……

手の甲に頭を何度もすり寄せてきた。


(蛇の体ってひんやりしている。

それに、以外につるつるしているんだな……)


そう思いながら、反対側の手で頭を優しく撫でてあげた。



田舎暮らしを始めて5日目。


白蛇さんは、七色に光る脱皮した皮を一つ残して

姿を消していた……。


元気になったのかな?

今度はあの黒い巨大カラスに襲われないように気をつけてね。


そう思いながら、帰っていったであろう

庭の奥の茂みをみながらそっと心の中で呟いた。




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