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55.予兆

田舎暮らしを始めて58日目。




見切り発車で初めてしまったけれど……

何とか今のところは上手くいっている気がする。


黒豆達も興味津々で鼻をひくひくさせながら

その周りをウロウロしている。


シュナッピーはちょっぴり火と煙が怖いのか

遠巻きにこちらを眺めています。


珍しい……

やっぱり植物だから火には弱いのかしら。



朝起きたら、急に燻製が食べたくなった。


なので、急遽……

中庭で燻製を作っております。


蔵の中に木の箱で出来た燻製器があったのよね。

スモークチップもあったし。


もうこれは作るしかないでしょう。

じいちゃんも作っていたのかしら?


あの人、飲兵衛だからな。

作っていたとしても不思議じゃない。


今回燻製にするのは……

キングビッグサングリアです。

塊肉でベーコンを作ります。


もちろんチーズもかかせない。

それから、卵に、からし明太子かな。


ししゃもが美味しいらしいんだけれども

手元にないんだよね、ししゃも。


バナナもなかなかオツな味がするらしいけれど

ちょっぴり勇気がでないな。


まぁ、第1回目だから定番のものから

作っていきたい。


90分くらい燻すらしいので

その間に洗濯でもしちゃおうかな。



と、不意に庭の奥からクロノスさんが現れた。


「よぉ、また何か作っているのか?」


今日も爽やかな笑顔だ!


「おはようございます。

色々な食材で燻製を作っています」


「燻製?」


聞きなれないのかクロノスは、首を傾げていた。


「燻製は、調理法の1つです。

簡単に言うと食材を燻煙することで

保存性を高めると共に、特有の風味を付加した食べ物って

ところですかね」


「なるほど、煙で燻した食べ物か。

酒のつまみによさそうだな」


そう言ってニヤリと笑った。


「もちろん最高のつまみになりますよ。

もしお時間があったら食べて行きますか?

今から1時間ほどで出来ますが」


「あぁ、是非食べさせてくれ」



燻製ができる間、二人で縁側にて日向ぼっこをしながら

お茶をすることにした。


今日のお茶うけは、いちご大福だ。

餅と餡子があったのでいちご大福を作りました。


「おわ……いちごが入っているのか。

餡子といちごって意外にあうのだな」


クロノスさんは、一口目は衝撃を受けていたが

すぐにその美味しさに虜になったようだ。


「私の国では、いちご以外にもあらゆるフルーツが

中に入った大福が売られていますよ。

みかんとかぶどうとか……

かなりの種類がありますよ」


「そうなのか?

恐ろしいな……」


クロノスさんは、更に驚愕していた。


「ところで、今日は何か用事があってきたのですか?」


「あぁ……」


クロノスさんは急にまじめな顔になり

凛桜の顔をまじまじとみた。


「…………?」


「そのな……」


困ったように視線を宙にさまよわせていた。

獣耳もへにょっと思いっきり後ろに下がっている。


「…………」


やがて意をけっしたのか、凛桜の肩をやんわりとつかんで

真正面から見つめるとこう告げてきた。


「また、夢をみたんだ……」


「えっ……」


()()()()()()()()だった。

だから近いうちに凛桜さんはまた元の世界に戻るかもしれない」


クロノスさんの瞳が悲し気に揺れていた。


「そう……ですか……」


真剣な顔でそう告げられて、凛桜はどう答えていいかわからなかった。


「もし元の世界に帰ったとしても

また、すぐに帰ってきますから」


そう返すのが精一杯だった。


「あぁ……」


クロノスもぎこちなく笑った。



その後、二人で何事もなかったかのように燻製を食べ

いつものように食卓を囲み、和やかな時間を過ごした。


もちろんお土産としてベーコンをたくさん渡した。

いちご大福も所望されたので、10個程包んだ。


と、帰り際

ふいにクロノスに手を引かれ、そのまま胸に閉じ込められた。


「えっ……」


(ひゃぁぁぁぁぁ!! 抱きしめられている!?)


クロノスにしては大胆な行動に、凛桜は若干パニくっていた。


しかし、抱きしめるその手は震えている。

そして絞り出すような声でクロノスは言った。


「俺は、ここで待っているから……

時間がかかっても必ず帰ってきてくれ……」


確かに期間がよめないからな。

下手したら10年とか会えない可能性もあるしね。


「約束だ……」


「はい……」


凛桜はそう言って、クロノスの背中に手をまわした。




そして、クロノスが告げたように

次の日の朝、凛桜は元の世界に戻っていた……。


「クロノスさんの予知夢って100%かよ……」


テレビから聞こえるバレンタインチョコの特集を

見ながら凛桜はため息をついた。


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