5.検証開始!!
話は少し遡る……。
得体のしれない男がいきなり庭に現れ、魔物を退治した。
その両方とも確実に私の世界の者ではない。
田舎暮らしを始めて3日目。
今の状況を把握するために、庭の探索をはじめようと思います。
オーバーオールのツナギに、麦わら帽。
そして首にはタオルをかけて、右手には鎌をスタンバイ。
そして、左右には……黒豆ときなこという最強お供を配置。
「よし、まずはこの家の敷地の外に出られるか検証してみよう」
意気込んだのはよかったが、すぐに答えはでた。
玄関、裏庭、倉庫の横の脇道……。
あらゆるところから外に出たが、何故か次の瞬間
家の敷地内に戻ってしまうことが判明した。
おかしいな、景色は全くかわっていないのにな。
門からは、前の道路すら見えるのに……。
確定ではないが、うちの家の敷地全体ごと異世界に転移
したのではないかと思う。
それなのに、電化製品はすべて使えるし、水も普通に出る。
何処で電力の供給がされているのさ。
しかし、何故かテレビとPCは使えないんだよね。
携帯電話も全く動かない。
謎すぎる……。
あと不思議な事がもう一点。
食材や調味料など家の中にあるすべての備品が
使用しても、次の日にはもとに戻っているんだよね。
つまり使っても減らないというか……。
ありがたいけれどもなんか怖い。
まさか時間の流れが止まっているなんてことはないよね?
もしくはループしているとか!?
それはないか、同じことを繰り返している訳ではないしね。
考えると寝られなくなりそうなので……
この問題はひとまず横に置いて置くことにする。
トイレットペーパーが切れた!
とかなったら今の状況じゃ買いに行けないから助かるけれど。
3日前の自分を褒めてあげたい。
かなり買い込んだから、たぶん困ることはないと思う。
まぁ、いつ帰れるかわからないけれどもね。
悩んでいてもしょうがないので……。
畑仕事にとりかかることにした。
納屋にトマトの苗を取りに行こうとした時だった。
何やら池の方が騒がしい……。
黒豆たちも異変に気がついたのだろう
急に獣耳をピンと立てて、いきなり走り出した。
「えっ……!」
凛桜もつられるように駆け出した。
現場につくと池の後ろの山の方から鳥の鳴くような声や
羽ばたく音が聞こえてきた。
と、同時に何やら白くて長い小さいものがよろめきながら
庭に飛び込んできた。
黒い羽根にまみれ、体の至るとこに傷ができており
血が流れていた。
(白蛇だろうか?
カラスか何かに襲われたのかな……)
きなこ達も警戒するように、その白い物体のまわりを
くるくるまわって匂いを嗅いでいた。
凛桜は、恐る恐る近づこうとした。
そこに、バッシシシシ!!
と何かがぶつかる音がした。
あまりの衝撃音の大きさに、驚いて顔をあげた。
すると、すぐ後ろの山のところに巨大なカラスが
赤い目をギラつかせながら、庭に入ろうと突進している!
あの男が張ってくれた結界のおかげだろうか
なぜかそれ以上、魔物は入れない様子だった。
何度か突進を繰り返して、入れないことを悟ったのだろう。
諦めて飛び去って行った。
(怖っ!何あれ……巨大すぎるし禍々しい!!
よかった、今更ながらあの男に感謝だわ)
黒豆ときなこをうしろからぎゅっと抱きしめて
気持ちを落ち着かせた。
二匹も大丈夫だというかのように、顔をなめてきた。
「きゅぅぅぅ……」
円らな瞳の白蛇は、苦しそうにか細い声で鳴いた。
(怖いけれど、うちの庭に入れたのならば……
悪いものではないだろう)
首にかけているタオルでそっとくるんで
縁側まで持ってきた。
白い蛇は、近くで見ると鱗が七色に光って見えた。
目は青く、とても綺麗な蛇だった。
「きゅ………」
怖いのか、触ろうとするとすこし威嚇してあばれた。
しまいには鎌首を持ち上げた。
「シャァァァ……」
「傷を治すだけだから、怖くないよ」
しばらく凛桜と白蛇は見つめあった。
お互いに距離を測っているような緊張した空気が流れた。
(どうしようかな、無理に手をだして噛まれたら怖いな)
そんな時にきなこがふらっとやってきて
凛桜の膝に顔をちょこんとのせて甘えてきた。
目が頭を撫でろと言っていた。
「きなこ……なぜにいまなの」
凛桜は苦笑しながらも、優しくきなこの頭を撫でた。
その様子をみていた白蛇はやがて大人しくなった。
傷をそっと水で綺麗に洗った。
絆創膏を張るわけにはいかないので……
動物用の傷薬を綿棒にとって患部にうすく塗り
その後に綺麗な包帯で傷口を巻いた。
そして段ボールにたくさんのタオルをいれて
そっとその中に横たわらせておいた。
「できることはこれくらいかな。
無事に元気になってくれるといいけど……」
そう言って、凛桜はやさしく白蛇の頭を撫でた。
軽くシャワーで汗を流して戻ってくると。
白蛇は穏やかに寝ているようだった。
傍では黒豆たちも寛いでいたので
引き続き見守りをお願いしたいと思います。
一仕事終えたからだろうか……
お腹空いちゃったな。
なにかご飯を作りますか。
そうだ!角煮作ろう。
確か豚バラ肉の塊を買った気がする。
そうと決まれば準備だ。
豚バラ肉は食べやすい大きさに切って……
よく熱したフライパンに入れる。
全面に焼き色がつくようにしっかりと焼かないとね。
いい匂い~食欲をそそる。
深鍋に豚肉と青ねぎとしょうが
そこに水2リットルを入れて落としぶたをして強火と。
煮立ったら中火にして2時間ゆでるから……
タイマーをかけておかないとね。
うちはザラメで作るけど、黒糖を使ったり……
キビトウを使ったりとたくさんのレシピがあるよね。
よく考えたら時間かかるな。
角煮は夕飯だな……。
お腹が持ちそうにもない、はらへりだ。
作り置きの肉じゃがをメインに卵焼きと味噌汁にするか。
ちょうどご飯も炊けたみたいだし。
凛桜がさっと卵焼きを作って、和室のテーブルで
ご飯を食べようとした時だった。
テーブルの反対側にそれは現れた。