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47.おかゆじゃなくて……

田舎暮らしを始めて51日目の早朝。




(喉乾いた……)


凛桜は急に覚醒した。


あれ?私……

ソファーでクロノスさんとワインを飲んでいたはずなのに。


むくりと起きると、どうやらベッドの上らしい……。


「ベッド……」


えっ?んん?ベッドの上だと!?


服は昨日着ていた服のままだ……。

これは……。


「やってもうた!! あうぅ……」


自分の大きな叫び声がこめかみに響いた。


思いっきり途中で寝落ちして、クロノスさんに運ばれた

状況がひしひしと浮かんできた。


最悪だ、先に酔っぱらって寝落ちする女なんて。

自分の醜態に泣きそうになった。


しかも二日酔いだよ……。


ズキズキするこめかみを押さえながら、リビングへと向かうと

テーブルの上は奇麗に片づけられていた。


台所に行ったら、残りの食材を入れたお皿には

奇麗にラップがかけられており、使用したお皿やグラスは

食洗器の中に入れられ洗浄がおわっている模様。


クロノスさん、いつの間に使い方を知ったの?

食洗器用洗剤、すりきり一杯投入とかもマスター済!?


ラップの使い方を熟知しているのはもちろん

それ以上にラップがある場所とかも知ってるの!?


(以外にマメ男子なのかしら?

侯爵様だよねぇ……確か……)


まさかの行動に驚きを隠せなかった。


(やはり騎士団長だから、周りの状況をみて把握する能力が

高いのかしら……)


そんなことを思いながら、水を一杯飲んでいると

黒豆が寄ってきた。


頭を撫でようとしたら、さっと避けられた。


「まめ……ぇ……」


どうやらお酒くさいらしい……。

地味に凹むわ。


遠巻きに2匹がこちらをみている。


黒いつぶらな瞳が……

“お前飲みすぎだ……”と責めているようにさえ感じるよ。


「ひとまずお風呂入りますか……」



数十分後……。


「すっきりした……」


やっぱりお風呂はいいな、じいちゃん風呂好きだったのに

露天風呂は作らなかったのかな?


秘密の果樹園みたく、庭を本格的に散策したら

へろりっと見つかったりして。



雨戸を開けると、シュナッピーがすぐ飛んできた。


「おはよう、シュナッピー」


シュナッピーは真顔で凛桜の顔をじっーと見つめた。


「ん?」


凛桜が不思議そうに首を傾げると、シュナッピーも

同じように首を傾げた。


そして、何かを悟ったのだろう。

閃いたと言わんばかり、何度も頷いた。


「ど……どうしたの?」


ますます訳のわからない凛桜だった。


すると凛桜の肩にポンと葉っぱをのせた。

額にも触れると何度もポフポフしてきた。


(もしかして体調を気遣われている?)


その時、シュナッピーの瞳が煌めいた。


「…………」


「きゅーん」


急にソワソワして庭の奥をチラチラと見だした。


凛桜は、ハッとした。


「シュナッピー、大丈夫だからね!

何もいらないからね!! ねっ!! ねっ!!

私元気だから!」


ちょっと食い気味だったからだろうか……

シュナッピーが後ろに一歩後ずさりをした。


「ギョロ!?」


困ったように右往左往している。


「ありがとう、君はやさしい子だね」


そう言って、凛桜はシュナッピーの頭を優しく撫でた。


「きゅーん、きゅーん」


(あぶない……

また得体のしれない魔界植物を持ち込まれたらいかん!

気持ちだけでもう本当に嬉しいから)


凛桜の脳裏に、ガラの悪い紫大根がよぎった。


シュナッピーはちょっぴり不満そうだったが

どうやら納得してくれたようだ。



「さーて、朝ごはんはどうしよう。

二日酔いの時はこれよね」


凛桜は冷蔵庫の扉をあけた。


二日酔いの時に決まって食べるものがある。

“きのこと卵と梅干が入った雑炊”だ。


おかゆじゃなくて雑炊!

ここ大事!


これだと何故かするりと入るんだよね。


「まずは鍋にだし汁を入れて……

その中にキノコをドバっといれます」


今日は、陛下から頂いたアンペルーシャンピニオンは

使用しません。


黄金塗れの雑炊は見た目にも、胃にもよろしくない。

普通に、シイタケやえのきにエリンギなどを使います。


塩とちょっとだけ酒とめんつゆを入れてから

解き卵をまわし入れて、ご飯を投入。


「ちょっと、味見……。ん、いい感じ」


後は、ほぐした梅干しを入れて少し煮ます。

その後に小ねぎを散らして出来上がり!


豪華にしたかったら、もっと野菜を入れてもいいし

しらすとかごまを入れても美味しいよね。


「それでは、頂きます」


凛桜は、レンゲを使って一口すくって口の中にいれた。


「ん、きのこの出汁がよく出ていて美味しい~

身体が生き返るわ」


よく、しじみ汁が二日酔いに効くって聞くけれども

しじみは残念ながらストックがないのよね。


そう言えばこの世界にきて、魚介類ってまだ食べてないな。

これでもかって、肉責めだったからな。


貝類はあるのかしら?


エビとホタテは普通にクロノスさんが疑問を持たずに

食していたからありそうだな。


白身魚は確か……

グロイ見た目の“キングピラーニャ”がいたはず。


そう考えると、キングシリーズのラインナップに

貝類もいるかもしれない。


キングしじみ?

いや、キングの時点でもうそれは、しじみではないな。


キングあさりとかキングハマグリとかもなんか違う。

キングさざえ?


なんかどえらいことになりそうだから

クロノスさんには聞かないでおこうと思ったのに……。


後日、二日酔いに効くからといって

クロノスさんが、野球のホームベースくらいある貝を

持ってきた話は、またの機会に……。


しかもこれで普通サイズですって!


キングサイズの貝、見たいような見たくないような。

異世界はやっぱり摩訶不思議……。


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