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39.全員に渡せました

田舎暮らしを始めて40日目。



昨日は楽しかったから飲みすぎちゃったな……。

朝はしじみ汁とおじやにしようかしら


なんて考えながら、雨戸をあけるとあの麗人が

朝の光を浴びながらキラキラと輝いていた……。


「おはようございます?」


どうしようこのデジャブ感、再び。

巨大白蛇さんの姿じゃないという所だけが救いなのかしら。


「朝早くからすまない。

なにやらこの店で楽しい催し物をやっているときいてな」


そう言って、ニヤリと笑った。


えっと……どこ情報でしょうか?

また森の連絡網的な?


それよりも何度もいいますが

うちは店でも定食屋でもないと言っているのに

なぜこの情報だけは、浸透しないのかしら?


そんなことを思いつつも、麗しい麗人を前に

心の丈をぶつける訳にもいかず、ぐっと飲み込んだ。


そういえば、白蛇ちゃんの姿が見えないな。


「えっと、白蛇ちゃんはお留守番ですか?」


「本当はあやつが一番、そなたに会いたがっていたのだが

今は大事な時期なのでな……」


そう言って巨大白蛇さんは目を伏せた。


どうやら、今ちょうど大事な脱皮の時期だそうで

少年から大人になる為の大きな脱皮らしい。


その為に、力も魔力も身体も弱くなるために

巣穴!?から出られないとの事だった。


(巣穴に住んでるの?

大きさ的に入るの?)


凛桜の表情を読んだのだろう……

楽しそうに目を細めながら言った。


「普段は普通の家に住んでいるから安心しろ」


「……はぁ……」



巨大白蛇さんに梅昆布茶をだしつつ

凛桜は簡単に“クリスマス”の説明をして

その流れで、クリスマスプレゼントを渡した。


「ほう……これがそのプレゼントというものか」


「はい、前から美味しい卵焼きをいつでも作れるように

なりたいとおっしゃっていたので……卵焼き器です」


銅でできた本気の卵焼き用のフライパンと菜箸を送った。


「ありがたい。

これでいつでも卵焼きが作れるな」


巨大白蛇さんは、嬉しそうに卵焼き器を眺めていた。


「そしてこれは白蛇ちゃんへのプレゼントです。

白蛇ちゃんが寒がりだと聞いたので

これを用意しました」


そう言って凛桜はブランケットを手渡した。


「これは、防寒具です。

足元にかけたり、身体全体に巻いてもいいです」


「あやつの喜ぶ顔が目に浮かぶわ」



そして、そのまま朝食を一緒にという流れになり

巨大白蛇さんは、優雅にヒューナフライシュの丸焼きを

朝から5羽ぺろりとたいらげていかれた。


「鶏はやはり美味いな……」


そういった巨大白蛇さんの瞳は、まぎれもなく捕食者だった。


「そう言えば、庭先に面白いものがいるな。

あれは番犬のようなものか?」


「番犬……」


きなこ達の事じゃないよね?

番犬……あっ!シュナッピーの事かな?


「ククク……今はまだひよっこだが

鍛えればそなたの盾くらいにはなるだろう」


そう言って何かを思い出しているのだろう、不敵に笑った。


その後、白蛇ちゃんの為に

ヒューナフライシュの丸焼きを10羽!!

ブッシュドノエルを1本持って帰る事になった。


お礼にまた鱗をがっつりむしろうとしていたので

丁寧にお断りした。


すると懐から何かを取り出そうとしたので

慌てて、キラキラひかる宝石類もいりません!!

ともいっておいた。


「それならば、また何かよさげなものがあったら届けよう。

それから、あの新しい番犬に言っておいてくれ。

せいぜい精進しろとな……ククク……」


そう言いながら帰っていかれた。


その言葉に、シュナッピーが気になったので

植わっているところへ行ったら

頭の右側部分の3分の1くらい()()()()()()……。


青い顔がますます青ざめて、若干泣いていた。


「シュナッピー!!」


まさかの状態に凛桜は悲鳴をあげた。


「きゅーん」


凛桜に縋りつくようにすり寄ってきた。


「あんたまさか、巨大白蛇さんにむかっていったの?

なんて無謀なレベルあげに挑んだのさ」


初期の武器でボス戦に挑むようなものだから!!


どうしてそんなことに?

どうみても巨大白蛇さんラスボス級じゃないか……。


「きゅーん」


現場をみていないからわからないけれども

きっと今回の場合は、自分よりも強い人と戦って

もっと強くなりたかった故の行動だと思う。


「全部食べられなくてよかったよ」


なんだかかわいそ可愛くみえてきて、シュナッピーの頭を

そっと撫でたあげた。


元気を出せるようにと次の日、魔法の土をもってむかうと

もうほとんど治りかけていた。


食中魔界植物、再生能力がはんぱないと知った。


そして、軒先に“()()()ヒューナフライシュ”

と思われる巨大鶏がぶら下げられていた。


恐らく巨大白蛇さんのお礼だと思う……。

ありがたいよ、うん……。


(でもね、もうキングシリーズはいいってば!!)


凛桜は遠い目になりながら、その光景をしばらく見ていた。




田舎暮らしを始めて41日目。



キングヒューナフライシュを見つめていると

魔王様とコウモリさんがあらわれた。


「なんだ、パーティーとやらでもはじめるのか?」


魔王様はちらりと軒先にぶら下がっている

巨大オブジェをみた。


「いえ、パーティーは終わったはずなんですけどね」


凛桜は肩をすくめながら、ため息をついた。


とりあえず魔王様に、キングヒューナフライシュを

軒先からおろしてもらった。


魔王様一行は、王都に行く用事のついでに寄ったらしく

凛桜の顔を見に寄っただけだと言って

そのまま帰ろうとしたので、急いでプレゼントを渡した。


正直言って、魔王様へのプレゼントが一番難しかった。

何をあげたら喜んでくれるのかが全くわからなかった。


しかし会話の中で、魔王様がお風呂好きだという事を掴んでいた。

だから某有名店の入浴剤のセットにした。


「これは……ありがたい。

一日の疲れを取るために入る風呂が格別でな。

ブルームーンが言っていた銭湯とやらに一緒に入りたかった」


そう言ってまた空の彼方を見つめだした。


長くなりそうだと思ったのだろう、コウモリさんが

焦ったように鳴いた。


「そうだった、今日は急ぐがまた改めて伺わせて貰う」


「はい!お待ちしております」


因みにコウモリさんには、高級フルーツジュースの詰め合わせを

用意しました。


荷物になってしまうかと思ったが、魔王様の魔法で

お城にそのまま直送されたそうです。


「お礼に今度こそ我が城に招待しよう」


そういって、颯爽と空に消えていった。


(魔王城……。

気になるわ、やっぱり空に浮かんでいるのかしら)


あれこれ想像しながら食洗器のスイッチを押した。


これで全員にプレゼントを渡せた。

本当の意味で、クリスマスが終わった気がした。




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