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35.クリスマスツリー

田舎暮らしを始めて37日目。



いきなりまた現実世界に戻ってきていた。


「ん?えぇぇえええ!!」


何故わかったのかというと、きなこが偶然TVのリモコンを

踏んだのでスイッチが入ったのである。


朝の番組が、クリスマスの最新デートスポットを

紹介してくれている……。


眠気眼で歯磨きをしていた凛桜は、一気に覚醒した。



うそでしょう。

どうしよう……。


クロノスさん達とクリスマスパーティーするって

約束しているのにぃ。


まぁ、もしもの時でも……状況は説明している。

この前のようにクロノスさんが、闇落ちしかけることは

ないと思うけど心配だ。


「…………」


一瞬悩んだけど、この際せっかく現実世界に戻ったのだから

皆へのクリスマスプレゼント買いに行こうかな。


思い立ったらすぐ行動だ。


凛桜は、街へと繰り出した。


数時間後……

たくさんの荷物と共に凛桜は帰宅した。


思わずいろいろ買ってしまった。

ついでに自分の服とかも買っちゃった……。


クリスマスツリーも買ったし……。

後で飾りつけしようっと。


その日は疲れもあって、早く就寝した。




田舎暮らしを始めて38日目。



「…………」


シュナッピーと黒豆たちが追いかけっこをして遊んでいる。


なんかちょっとシュール。

植物から追いかけられるって、なんかホラー。


本人たちがすごく楽しそうなのが唯一の救いだけど。


そんな様子をみながら、凛桜は縁側で黄昏ていた。


戻ってきている……。


一体何だったの?

かなりプチな里帰り。


クリスマスプレゼント買いに戻ったのか?

くらいの勢いだ。


異世界さん、また空気読んでくれた?


お陰で某コーヒーショップのクリスマス限定のメニューや

ケーキなども食べられたけれど!!


そういう事じゃない……。



まぁ……いいか。

買ってきたクリスマスツリーの飾りつけをしますか。


凛桜はさっそく買ってきた箱をあけた。


150センチくらいの北欧風ツリーだ。

オーナメントもセットで入っているものを買った。


本当は本物のもみの木が素敵だけれども……

そうするとお値段も高いし、クリスマスが終わった後

それをどうしていいかわからないしね。


「このボール型オーナメント可愛いな。

クリスマスツリーのデコレーションが描かれている」


他にも、まつぼっくりやトナカイや雪の結晶など

様々なオーナメントが入っていた。


配置などを考えながら、かなりの時間をかけて飾り付けた。


「あとはてっぺんの星をつけるだけね。

このままだと届かないから、小さい脚立が必要だな」


脚立の最上部に上り……

凛桜がツリーのてっぺんにまさに星を飾り付けようと

している時の事だった。


追いかけっこに夢中になったのだろう。

いきなりきなこが足元に飛び込んできた。


ガンッ!!


そのまま凛桜の乗っている脚立に激しくぶつかった。


「えっ!?」


凛桜は星を持ったまま、脚立から足を滑らせた。


(いやぁぁぁぁ……本気かぁぁぁぁ)


あまりに急な事だったので、何もできなかった。


痛みを覚悟してぎゅっと目をつぶったが……

何か暖かいものにがっしりと包まれた。


(あれ?痛くない!?)


「っ……ぶねぇ……」


そんな声が耳元でした。


そして本能からだろうか……

思わず必死になってその者にしがみついていた。


その時指先にモフっとした感触がした。


「っ……」


若干の気持ちの余裕ができたのだろう。

状況を確認する為に改めてつかまっているものをみた。


すると目の前いっぱいに焦った顔のクロノスさんがみえた。


クロノスさんが助けてくれたのか!!


感動と恥ずかしさでどうしようかと密かに葛藤していると

いきなり怒鳴り声が聞こえてきた。


「お前ら、危ないだろうが!!」


そのまま凛桜を抱いたまま、シュナッピー筆頭に

黒豆たちは一喝されていた。


「遊ぶのならもっと広いところで遊べ!!」


シュンとなった2匹と1体?は、その日はおやつ抜きの

罰に処された……。


「大丈夫か?凛桜さん……」


改めて心配そうな表情で顔を覗き込まれた。


「はひっ……」


安心と恥ずかしさで顔が真っ赤になりながらも

なんとか頷いた。


「……凛桜さん……」


困ったような表情で、クロノスさんは続けた。


「その……すまないが、耳から手を離してくれないか」


「へっ?」


凛桜の右手が、クロノスの獣耳をぎゅっと掴んでいた。


(モフっとしたのはこれかぁぁ!!)


「ご……ごめんなさい……」


慌てて手を離すと、その獣耳がピコピコ動いた。


「いや……耳はどうも、そのな……」


クロノスは気恥ずかし気に目元を染めていた。



凛桜はそのまま、ソファーに優しく降ろされた。


「助けてくれてありがとう」


「間にあってよかった、ちょうど庭から凛桜さんが

落ちていくのがみえたので焦ったぞ。

ところで、先ほどから握りしめているその星形はなんだ?」


「あっ?これ?」


凛桜は、クロノスをクリスマスツリーの前に連れて行った。


「この前言ったクリスマスを楽しむ中の一つに

このクリスマスツリーというものを飾る行事があるのよ」


「へぇ……奇麗だな。

これは、サパンの木か?」


「サパン……なのかな?

私の国では、もみの木という種類なの。

あ、でもこれは本物そっくりに作られた偽物なの」


クロノスさんは、興味深そうに下からも上からも眺めて

クリスマスツリーの飾りや本体を触った。


「やっぱり、サパンだな。

言ってくれれば狩ってきたぞ」


「ん?この世界でも、もみの木って売っているの?」


「いいや、狩るものだ、縄で捕まえる」


「…………」


()()()()()方だと思っていたが、()()()()()方か!!

凛桜は驚きに目を見開いた。


「あいつら以外に逃げ足が速いんだよな……。

大物になるとチームを組まないと厳しいか」


顎に手をかけながら、何故か頭の中でシュミレーション

している模様……。


「クロノスさん……。

サパンって、シュナッピーみたいな感じ?」


念のために確認してみた。


「いや、もっと原始的で植物に近いものだ。

シュナッピーはどちらかといえば、魔獣よりだろ?

サパンの見た目は、このクリスマスツリーそのものだしな……」


シュナッピー魔獣よりなのか……。

もうそうしたら、植物じゃないじゃん……。


そのシュナッピーは、怒られたショックなのか

いつもの定位置で若干萎れている。


「カロス達に狩らせてくるか……。

いや演習の為に若手のあいつらに」


いかん、このままだとまた得体のしれない植物が

仲間に加わってしまう。


動く植物は、シュナッピーだけでもうお腹いっぱいだから!!


「クロノスさん、お気持ちだけで結構です。

それに、その動く植物だとこんなにオーナメントとかを

身体に飾られるのを嫌がるでしょう?」


「いや……。

あいつらけっこう身なりを気にする方だぞ。

多分この季節だと、光る色とりどりの実を身に

まとっている頃だな」


まさかの自家製LED電飾をまとったツリーだったか。

異世界やっぱり侮れないな。


「こんなきれいな飾りだと喜んで身に纏うぞ」


「…………いや、今回はこのツリーでいきます」


凛桜は、丁寧にお断りをした。


「そうか?」


少し残念そうに獣耳をさげた。



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