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32.歩けるんかいっ!

田舎暮らしを始めて35日目。



そういえば、元の世界はそろそろクリスマスシーズンだな。


クロノスさん達を招待して、クリスマスパーティーでも

しようかしら。


本当は、巨大白蛇さん一家とか魔王様とか……

知り合った方達を全員一緒に招待できればいいのだけれど。


さすがにそれはなかなか厳しいだろう。

カオスになるな、うん。


まぁ……来た順番にプチクリスマス会をしようかな。


凛桜はそう心に決めると、料理を作り始めた。



クリスマスと言ったらチキンよね。

某〇〇タッキーとかは異世界にないので

自分で作るしかないよね。


でも、流石に飼っている鶏は調理できないし。

どうしようかな~。


あの丸ごと一匹使って作る本気なチキンが食べたいのよ。


ビッグサングリアのように、食べられる鳥部門の魔獣って

いるのかしら?


ひとまず、できるところから作っていこうかな。

凛桜は、冷蔵庫の扉を開いた。


前菜は、ミニトマトとモッツァレラチーズのカプレーゼにしようかな。


かわいらしいカップに入れて、出せば見栄えもするしね。


それから、イカと野菜のマリネなんかもいいかも。

ワインに合いそう。


まずはこれから作ろうかな。


玉ねぎは薄くスライスして水にさらしておきます。

今回は、レッドオニオンを使おうかな、色が奇麗だしね。


人参ときゅうりと赤パプリカは千切りにするのだけれど

クリスマス仕様ということで、ニンジンだけは星形に

くりぬきます。


イカはだいたい5ミリ位の幅の輪切りにして……

といいながら、ほとんど目分量で切っちゃうけれどね。


げその部分も食べやすい大きさに切る。


「沸騰したお湯で、色がかわるくらいまでさっと茹でて

ザルにあげて冷やしておいておく」


ここが大事なのよ!

茹ですぎちゃうと固くなるから目が離せないのよね。


あとはイカが冷めたら、酢、塩、砂糖、オリーブオイル

ブラックペッパーと粒マスタードなどの調味料をいれて

混ぜ合わせればできあがり。


作りたてより、少し冷蔵庫で寝かせておいてから

食べるほうが味が染みて美味しいのよね。


よし、一品はできたぞ。


次はどうしようかな。

あっ、その前に今日のお昼は何にしよう。


そういえば、作り置きのチャーシューがあったな。

初代ビッグサングリアで作ったやつ。


これでチャーシュー丼にでもしますか。


凛桜は、冷蔵庫からチャーシューの入った

タッパーを取り出してまな板に乗せると、その塊に包丁を入れた。


それを嗅ぎつけたのか、黒豆たちが縁側から

ひと切れくれといわんばかり、甘えた声で催促するように吠えた。


「めざといわね……」


そういいながらも、凛桜はチャーシューの隅っこ部分の

切れ端を二切もって縁側へとむかった。


二匹は喜んでくるくる回って甘えた声をだしている。


「わかったから、落ち着きなさい。

フフフ……はい、これは黒豆の分」


黒豆は嬉しそうにはぐはぐしながら食べていた。


「はーい、きなこもどうぞ」


きなこもしっぽが千切れるのではないかくらい

全開に振って喜んでかぶりついていた。


と、ふと視線を感じた。


「ん?」


なぜかそこには3人目? 3匹目? 3体目?

思いっきり俺にもくれといわんばかりの生物がスタンバっていた。


「どうしてここにぃぃぃ!!」


凛桜の雄たけびが中庭じゅうに響いた。


言わずと知れた、食中魔界植物のシュナッピーがいたのだった。


「グルルルル……」


そういいながら、若干よだれを垂らしながら

大きな1つ目を潤ませながら、凛桜を見上げていた。


「ど……どうやってここまできたの?

えっ?うぇ?どういうこと?」


「グル……」


凛桜は、シュナッピーの頭のてっぺんから足の先までみた。

おそらく根と思われる部分が、足のように二股に分かれていた。


(これで歩いて来たのかしら。

もう規格外すぎてどうしたらいいのかわからないわ)


黒豆たちは慣れたのか、さほど驚きもせず

その横でお座りをして寛いでいた。


(君たち、昨日まで大戦争していたよね?

協定結ぶの早くないですか?)


混乱の中、キッチンにもどり……

少し大きめにチャーシューを切ってあげてみた。


「はい……あ……あーん」


そういうと、凶暴な牙がぎっしり生えている大きな口を

素直にパカっと開いた。


うっ……怖っ!

となったが、恐る恐るその中に入れてあげた。


シュナッピーは、美味しそうにゴリゴリいいながら食べた。


ゴリゴリだと?

そんな音がする食べ物じゃないよね、チャーシューって。


一体どういう構造してんだよ……。


食べ終わるとよほど美味しかったのか

葉っぱと茎を左右に揺らし、不思議な踊りを踊っていた。


なんなのこの得体のしれない踊りは。

なんとなくだけど、美味しかったの舞だということはわかる。


このまま見続けていて大丈夫かしら。

マジックポイントとか奪われちゃったりするのかしら。


って、私にそんな項目ないけれどもね。


異世界転移したのに、チート能力はおろか……

魔法すら使えないというダメダメ主人公ですから。


すると一通り踊って気が済んだのか

今度はお代わりが欲しいのか、不思議な声で鳴いた。


()()()()……」


「…………」


(きゅーんだとぉぉぉぉ!!)


凛桜は目を剥いた。


その外見に全く似合わない、可愛い甘えた声を出すなんて。

しかも残念なことに、外見のせいか全く心に響かない。

どうしようか考えあぐねていた。


その時だった、諫めるようにきなこがワンと一言鳴いた。


シュナッピーは、いやいやというように首を振ったが

きなこの制するもう一声に渋々納得したらしい。


そのまま、凛桜にぺこりとお辞儀をすると

また、もと植わっていた場所へと戻っていった。


そして、目をつぶったまま動かなくなった……。



「きなこ……お前」


驚きながらも、凛桜はきなこの頭を優しく撫でた。

きなこはきなこでドヤ顔を決めていた。


一体この短期間で何があったんだ?

ただわかったことが一つ。


クロノス>きなこ>シュナッピー>黒豆という順位だと

いうことはわかった。


いざってときは、やっぱり女が強いのね。

めちゃめちゃきなこに叱られていたもんなシュナッピー。


黒豆がんばれ。


しかし、私はこの順位のどこに入るのだろう……。

そんなことを思った一日だった。



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