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27.これは一体何なの?

田舎暮らしを始めて30日目。



凛桜は箱の中身を見つめながら唸っていた。


異世界での浪速のあきんどであるルナルドさんから託された

じいちゃんが買った商品。


箱を開けてみたが……

これは一体なんなの?


箱の中に綿のようなものがぎっちり詰められており

その上にぽつんと1つ置かれていたやつ。


見た目は大きい小豆のようだ。

10㎝近くはあるかな。


種なのかな?

左横から双葉らしきものが出ている。


しかし大きさもさることながら柄がおかしい……。

ゼブラ柄の種ってある?


しかも蛍光ピンクと黒で構成されているゼブラ柄よ!

ギャルなのか!?


怖い……怖すぎる。

一体何が咲くの?


そもそも咲くのか?

もしくは実るのか?

それすら不明だし。


説明書も何も入っていないなんて

不親切すぎやしませんか?


黒豆ときなこも不思議そうに匂いを嗅いだり

周りをうろうろしていた。


「あっ!黒豆……舐めちゃだめよ!」


慌てて箱を上に持ち上げた。


まぁ……悩んでいてもしょうがないから

中庭の隅に植えてみますか。


大きくなれよ!

そう思いながら水をたっぷりとかけた。


初日はこんな感じで終わった。



田舎暮らしを始めて31日目。



早いもので異世界に来て1ヶ月が経ちました。

といっても途中に元の世界に帰っていたので

厳密には1ヶ月ではないけれどね。


お祝いに何か作ろうかな。


その前に、あの謎の植物に水をあげないと。


そう思いじょうろに水を入れて植えた所に向かうと

信じられないくらいに成長していた。


「………………」


限度っていうものがありませんか?

もう既に私の肩ぐらい育っているんだけど!


大きくなれよとはいったけれど……

植えてまだ1日目だよね、きみ?


サイケな種から生えている割には

葉っぱや茎は普通の緑だから何となく安心はしたけれど。


これが夏休みの宿題の観察日記なら

3日で終わっちゃう案件だよ!


植えました→芽が出ました→実がなりました、終わりみたいな。

先生からやり直しをくらうよ、これ。


そんな幼き日の事を考えていたが……

凛桜は、ハッとして……改めてまじまじと植物をみた。


じいちゃん、これまさかジャックと豆の木的な

天まで生えちゃう植物じゃないよね?


見た目は木ではない、あきらかに草花だ。


まさかね……うん、まさかね……ない、ない。

ないと信じたい。


凛桜は気を紛らわせるためにそれはもう

作り置きを大量に生産した。


当分おかずには困らないだろう。



田舎暮らしを始めて32日目。



ドキドキしながら、例の植物のところへ行ってみた。


「はい!蕾がついてるぅぅ」


凛桜はその場に崩れた。


(早いって……いくら何でも早すぎるだろうお前!)


更に大きくなり、凛桜の背丈をはるかに超えて育っていた。

クロノスさんよりちょっと小さいくらいかな。


その天辺に丸い大きな蕾がどーんと1つ付いていた。


まだ蕾が苞に包まれているから色もわからないけれど

どんな花が咲くのか楽しみ半分怖さ半分ってとこかしら。


「とりあえず元気に育てよ!」


そう言いながら凛桜はたっぷりと水をあげた。



その日の昼食を作っている時だった。


今日はスパゲッティーにしようかな。

ミートソーススパかな。


この前収穫したトマトで作った

トマトピューレのストックも大量にあることだし。


それにこれが本当に最後!

ビッグサングリアのお肉でミンチを作れば

初代は食べきった事になる。


まぁ……後に二代目の“キングビッグサングリア”が

控えていますけどね……。


凛桜はいつもの如く手際よくミートソースを作り始めた。


「少し粗めのミンチにしようかな」


そんな時だった。


「こんにちは」


「ちわっス」


縁側からカロスさんとノアムさんがやってきた。


「こんにちは……」


てっきり3人できたかと思ってドギマギしたが

クロノスさんの姿が見えない。


「…………」


「団長は討伐会議がありまして……。

こられないとの事なので、こちらを預かってきました。

お会いできない事を非常に残念がっていましたよ」


そう言いながらカロスさんは、クロノスさん専用の三段

曲げわっぱ弁当箱と何やらまたもや豪華な箱を差し出してきた。


「俺たちからもこれを……」


そう言いながら自分達専用のまげわっぱ弁当箱と

小さな花束と可愛らしい瓶に入った

バスソルト的なものをくれた。


「とても可愛い……ありがとう。

ふたりともセンスがいいのね……フフフ」


「こちらこそ、いつも美味しい弁当を作ってくださり

ありがとうございます」


「最高に旨いっス」


そう言って二人はうっすらと頬を染めながら笑みを浮かべた。



「んんんん~うまっ!旨いっス」


ノアムは口の端にミートソースをつけながら

スパゲッティーを頬張っていた。


「お前は子供か……」


そう言いながらもカロス自身も3皿めをおかわりしていた。


「そう言って貰えると作り甲斐があるわ」


お昼の時間という事もあり

二人にミートスパゲッティーを振舞った。


つけあわせは、具がたっぷり野菜コンソメスープと

プチバケット、それにデザートはリンゴの赤ワイン煮だ。


二人は見ていて気持ちがいいくらい食べてくれる。


その間に、クロノスさんから頂いた豪華な箱をあけてみる。


「うわぁ……きれい」


それは緻密な細工がされたペアのワイングラスだった。


「おぉ!それって……

王都で流行りのガラス工房の人気作品ですよ」


「えぇ……そんなお高いもの頂いていいのかしら」


「団長の気持ちっスよ。

是非遠慮なく受け取ってください」


そう言って二ッと笑ってノアムは親指を立てた。


「では遠慮なく頂きます……」


凛桜はつとめて明るくそう答えた。


2人は何か言いたそうな顔をしていたが……

何も言わず飲み込んだ。


そんな空気を変えるように凛桜は手をポンと打って

カロス達に言った。


「そうだ、ご飯を食べ終わってからでいいのだけれど

2人に見てもらいたいものがあるの」


凛桜は2人に謎の植物を見てもらう事にした。

正体がわからないのはやはり怖い。


「もちろんいいですが、何かありましたか?」


「うん……ちょっとね」


カロス達は目を見合わせて不思議そうに首を傾げた。



そして……


「これなんだけれど……」


凛桜はカロス達を例の植物の前まで連れてきた。

その周りで黒豆達は嬉しそうに駆け回っている。


「…………これは……」


「あー」


2人は何故か困ったようにその植物を見上げている。


「知っている植物?」


「あーその……、な……」


「っス……」


どうも歯切れが悪い。

2人とも困ったように獣耳をさげている。


「何?何なの?」


1人状況がわからない凛桜は、カロス達の顔を交互にみながら

次の言葉を待っていた。


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