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24.キング……

田舎暮らしを始めて28日目。



今日も天気は快晴だ。

でも少しずつ寒くはなってきているように思える。


異世界でも季節ってあるのかしら……?


そんな事を思いながら……

ビッグサングリアの肉の塊を前に何を作ろうか思案していた。


第一騎士団の皆さんとからあげ祭りを開催したので

かなりの量を消費した。


お陰様であと残り少しとなりました。


最初は、業務冷蔵庫に入りきれないほど肉が溢れていて

どうなる事かと思ったが……。


無事に全部綺麗に食べられそうだ。


(魔獣とはいえ生物から命を頂いているのだから

やはり感謝して美味しく残さず頂きたいよね)


横では黒豆が、どこの部分かわからないが

嬉しそうにビッグサングリアの骨を齧っていた。


しかしきなこは断然クロノスさんがくれた

ホワイトギャリオンの大腿骨の方が好きなようで……。


チラッと骨を舐めただけで、それを咥えたまま

どこかへ持って行ってしまった。


(あれは完全に庭のどこかに埋めたな……。

非常食にでもするつもりなのだろうか)



でも君たち……

結局どこに埋めたか忘れてしまうよね……。


そしてそれを私が畑を耕したり、庭木を植えようと掘った時に

発見してびっくりする流れになるよね。


白骨死体発見か?くらいになるからやめて欲しいけど

しょうがないか。


さて残りのお肉で何を作ろうかな?

やき豚はマストとして……。

スペアリブも捨てがたいな。


凛桜が肉に包丁を入れようとした時だった。

何やら中庭の方が騒がしい。


黒豆達がやたら吠えている。

しかし警戒した吠え方ではなく、嬉しそうな声だ。


もしかしたらクロノスさんかも!!


そう思って急いで駆けつけると

またもや大物を担いだクロノスさんが立っていた。


「よぉ……」


「………………」


クロノスさんは照れくさかったのだろう

困ったような表情で、所在なさそうに立っていた。


「クロノスさん……」


凛桜と目が合った瞬間、気まずそうに一瞬目を逸らしたが

その後すぐに嬉しそうな顔で凛桜を見つめていた。


「本当に凛桜さんなんだよな」


尻尾はこれでもかと高速に左右に振られ……

獣耳はぺたりと横に折れてピコピコ動いていた。



元気そうな姿にほっとしたのはつかの間……

凛桜は目を見張った。


んんっ?

あの背中に背負っている生き物は何?


かなり大きいイノシシ?牛?

とにかくクロノスさんの2倍はあろうかという

生物を背負っている。


なんだか嫌な予感がするんだけど。

見た目は“ビッグサングリア”系の魔獣のような気がする。


「この前はとんだ迷惑をかけたな」


そう言いながらクロノスはその魔獣を背中からおろした。


かるくズシーンって音がしたよ……。

きなこ達が驚いてビクついてるわ。


「元気そうで何よりですが……

クロノスさん、それは一体なんですか?」


「ん?これか。

これは“()()()()()()()()()()()”だ。

最高に旨い肉だぞ。

ビッグサングリアの最終進化系でな

1万頭に一匹しかいないレアな魔獣だ」


(また肉がきた!!

せっかく消費したのにぃぃぃ!!)


凛桜はげんなりした。


牛肉で言えば、松坂牛とか神戸牛レベルなんだろうけど。

もう肉はいいのよ肉は……。


()()()()()()()()()()()()()ので狩ってきた。

迷惑をかけたお詫びだ……。

それもあるがまぁ……この最高級の肉を使ってつくる

凛桜さんの料理が食べたくてな」


クロノスは嬉しそうに表情をほころばせた。


この国ではお詫びの品は“魔獣の肉”が基本なのかしら。

それともクロノスさんが本気で肉料理を食べたくて

病み上がりの身体で狩ってきたのかしら。


「はぁ……」


若干引き気味の凛桜の姿をみてクロノスは狼狽した。


「駄目か……?まだ怒っているのか?」


凛桜に拒絶されるのが怖いのだろう……。

さっきよりも更に獣耳を後ろに倒しながら目をおよがせた。


怒っているとかではないのよ。

クロノスさんが極端すぎるから呆れているという

感情の方が近いかしらね……。


きゅーんという甘えた鳴き声が聞こえそうだった。


クロノスに寂しそうにそう言われたら……

許してしまうほかすべはない。


それに、なんだか可愛らしい。


なんだかんだで絆されてしまう凛桜であった。


「…………。怒ってはいませんよ。

ただ、本当にクロノスさんはお肉が大好きだなって思って」


そう言って柔らかく微笑みかけた。


クロノスは安心したように胸を撫で下ろしていた

が、ハッとして真顔でこう告げてきた。


「もしかして、凛桜さんは魚派だったか?

それならば今度は“キングピラーニャ”を釣ってくるぞ

見た目はかなりグロテスクだが白身魚で旨いぞ!」


キングピラーニャ……。

見た目がグロテスク……アウトじゃん。


名前だけでなんかもうヤバい匂いがプンプンする。


畳ぐらいの大魚を持って来られても困るから

ここは一旦お断りしておこう。


なまものは保存に困る……。


「どっちも好きよ。

でも今はこのキングビッグサングリアで十分かな」


「そうか、ならいいのだが」


「立ち話もなんだから、とりあえず上がって」


そういって凛桜は、クロノスを家の中に招き入れた。


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