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22.暗黒の日々

田舎暮らしを始めて26日目の午後。



3人はダイニングテーブルでお茶をしていた。

凛桜の作った“梅酒を使ったバターケーキ”を

二人は美味しそうにパクパク食べていた。


その横の和室には、クロノスさんを寝かせている。


無事に獣体から獣人へと戻ったクロノスさん。

それでも体も精神的にもかなりの負担があったのだろう。


今は畳の上で泥のように眠っていた。

クマもひどいし頬もこけている……。


本当は布団の上に寝かせてあげようとしたのだが……

汚いからというカロスさんの一言でそのまま畳に転がしている。


確かに毛並みはボロボロだし……

身体は傷だらけ、おまけにかなり臭う……。


それでも忍びないので、タオルケットだけはかけてあげている。


時折……グルグルと唸る声が聞こえるが

安心して寝ているような気がする……。


カロスさん達の話によると、すでに1ヶ月以上の月日が

こちらでは流れているようだった。


若干時の流れに誤差があるようです。


私が家ごと消えてしまったその日から……

今までずっとクロノスさんは探し続けていたらしい。


それこそ最初は何か魔法のようなものを掛けられて

家に入れないようになっているのかと思ったらしい。


そこで、あらゆる権力を使い

国の魔法部隊のエリートを森に強引に連れてきて調査したが

特に怪しい点はみつからなかった。


その次は、隣国や悪い魔獣に攫われたのかも知れないと思い

自ら隠密活動をして探ったが何もみつからなかった。


魔王城にも殴り込みをかけようともしたらしい。

それはカロスさん達、第一部隊全員で必死に止めたらしい。


うん……それが正解だと思う。

魔王様は全く関係ないからね……。


そこでいったん冷静になったのだろう。

全く凛桜の気配を感じられなくなった事に気がついた。


それでも、とにかく何か糸口を見つけたいと思い

仕事終わりに森を彷徨い、休みの日には獣体になって

森の隅から隅まで駆け抜けた。


そのうえ王様にも頼み込んで……。

王族専用の図書館であらゆる本を読み耽った。


もしかしたら何かそこから掴めるかもしれない。

そんな期待もあったのだろう。


カロスさん達はじめ、精鋭部隊の方達も

協力して探すと言ったのだが……

自分が一番初めに凛桜を見つけると言って聞かなかったそうだ。


しかしそんな生活を続けていれば……

色々なところに無理が生じてくるものだ。


ついにオーバーフローを起こして危険な魔獣になる

一歩手前だったらしい。


獣体になるとかなり力は上がるが、長い間その姿でいるのは

身体と精神力にとてつもない負担がかかるそうだ。


クロノスさんのように力が強い人でも……

1日中獣体になることはかなり危険らしい。


でもそれを何日も続けていたのだ。

やがて誰のめから見ても、クロノスはだんだん荒んでいった。


「俺たちも……もうどうしていいかわからない状況でした」


カロスさんは苦しそうにその時の状況を話してくれた。


「ごめんなさい……。

私も急な出来事だったので……」


凛桜もなんと説明していいかわからなかった。


「凛……桜……さん…………」


時々うわごとのように凛桜の名前を呼ぶクロノス。


「…………」


そんな姿を痛ましそうに見る凛桜達であった。


「凛桜さんが無事に帰ってきてくれました。

今はそれでいいのです」


カロスは、ふうっと大きく息をはきだした。


「でも……団長だけには本当の事を話してください」


思わぬことを言われて凛桜は少し息が詰まった。


「…………そうですね」


凛桜は少し迷ったが……

ぎごちない笑顔でそう答えるのが精一杯だった。


「団長は本当に凛桜さんの事心配していたっス。

そのことだけはわかってください」


ノアムさんまでもが真剣に懇願してきた。


それからしばらくして二人はクロノスをつれて帰っていった。

2~3日静養させるとの事だった。


クロノスが起きたら食べてもらおうとお弁当を託した。

元気が出るように気合入れて作った。


私が作る料理にそんな力があるかわからないけれど

皆が言う様に元気になる力があるのなら……

クロノスさんにも効いて欲しい。


中身は……

肉巻きおにぎり、ポテトサラダ、味付け卵にカボチャのごま塩あえ。

デザートには、オレンジジュース寒天とフルーツたっぷり牛乳寒天。


使用しているフルーツは、うちの果樹園で採れたものだ。

おまけに去年漬けた、梅酒の大瓶を3つ渡した。

第一騎士団の皆さんで飲んで頂く為だ。


もちろんカロスさん達にも同じお弁当を渡した。


「必ず団長にも食べさせます」


そう言って二人は何度もお礼を言いながら庭の奥へと消えた。


「クロノスさん早く元気になるといいね」


「きゅーん」


黒豆達も心配そうに鳴いた。




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