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213.これってデジャブですか!?

田舎暮らしを始めて185日目。




今日は久しぶりに朝からおかず作りに励んでいます。


まあ、面接もあらかた終わったしね。


後は合格者にその旨を連絡入れるだけです。


その返事次第で追加者を入れる必要があるかなど

検討をしなくてはならなくなる可能性もある訳で。


必ずしも全員が来てくれるとは限らないからね。


要は返事待ちの期間なんですわ。


だからこの2~3日は比較的に手が空いているのだ。


それはいいとして……

それ以上に緊張する案件が急遽明日に決まったのよ。


いつかはやらなくてはいけないと心の片隅には

いつもあったのですが。


そう……

現侯爵であるクロノスさんのお父様とお母様に

ポップコーン事業について説明する機会がやってきました。


元々はクロノスさんの領土にある

“キャラリア孤児院”から

始まった出来事が発端だった訳だし……。


これからも此処が中心になっていくであろうし!


なんと言ってもうちの商会は……

アイオーン家が後ろ盾になってくださっているからね。


粗方はクロノスさんから説明をしてくれて

いるみたいだけど……

やはり商会の会長である私からの挨拶は必須よね。


もしかしたら挨拶が遅いくらいかもしれん……。


なんでもご両親は皇帝陛下への謁見と

その他諸々の用事があるらしく

静養地から王都にある邸宅に一旦戻られるとの事で。


“いい機会だから報告に上がってくれないか”と

昨日の帰り際クロノスさんに言われたのよ。


急すぎやしませんか!?

心の準備が整いませんがぁ!


とも思ったのだけれども!


何時かは必ずお伺いしないとはいけないと思っていたから

腹を括りましたよ、えぇ。


なんか色々な意味で緊張するわ。


だってあのクロノスさんのご両親だよ。


色々な意味で凄い人達に決まっているじゃん。


ようやく陛下やその他諸々の高貴な方達に

慣れてきた所にクロノスさんのご両親だよ。


口から心臓が飛び出しそうだよ!!


で、挙句の果てに……

その時にもしよかったら凛桜さんの作ったご飯を

両親に振舞ってくれないか?


と、クロノスさんにお願いされまして……。


はい?


意味がわからないから?


えっ?何故に?うちご飯!?


手土産は何かお菓子でも持っていこうかなとは

考えていましたよ。


それなのにガッツリとご飯ものがいいときましたか……。


なんでもいつもレオナさんやカロスさん達……

勿論クロノスさんからうちご飯の話を聞いているらしく。


どうしても私の作った家のご飯が食べたいらしい。


いやぁぁあああああああああ。


やめてよ!ハードルを上げないでぇぇぇぇ。


それ以前に初対面ですよ、私。


初対面の人が作るご飯を食べるって勇気がいりませんか?


プロの料理人さんは別として私素人ですし……。


衛生面と素材には物凄く気を使ってはおりますが

適当ゴハン調理ですよ、うん……。


うちの母曰く……

火が通っていれば大抵の料理は大丈夫っていいますが。


そういうものなのか!?


どんだけ火入れに信頼おいているのさ!


いや、もう、本当に大丈夫ですか!?


お貴族様が普段どんな料理を食しているのかは

あまり知りませんが。


私の作る料理って……

The家庭料理なんですけどお口にあいますでしょうか?


それにクロノスさんのお父様って現在

お身体の調子を崩して静養なさっているんですよね。


何を作ったらいいのか迷うわ。


クロノスさん曰く……

家専属の料理長がつくる味の薄い献立ばかりで

辟易しているそうだ。


まあ、気持ちはわからないわけでもない。


身体が弱っていたらごってりしている物は

受けつけないもんねぇ。


料理長さんも日々献立に悩んでいらっしゃるんじゃないかしら。


病状については詳しい事はお聞きしなかったけれども

基本的には食べてはイケナイ食材はないらしい。


ただ、ご本人曰く……

気力はあるのだけれど身体が受けつけないんだって。


だから必然的に味の薄いスープと少しの果物とかに

なっていってしまったらしい。


それじゃあ体力が戻らないよね。


「詳しい事は俺にもわからないのだが……

父の症状を高位の神官長に診てもらったところ

どうやら魔物討伐の際に受けた傷と呪いのせいらしい」


そう言った時のクロノスさんはとても苦しそうな顔をしていたわ。


国境付近に出るオオトカゲと戦った時に受けたものらしい。


オオトカゲは討伐できたんだけれども

その時にその血を大量に身体に浴びちゃったんだって。


中にはその血の呪いに耐えきれなくて亡くなった

騎士たちも数人いらっしゃるらしい。


それほど強力な魔物の呪いだったんだって。


やっぱり騎士団って大変なお仕事なんだね。


なんと言う名前の魔物なんだろう……

魔王様に聞いたら解毒方法がわかるのかしら。


よく小説なんかでそういう話を

読んだことはあるけれど!


実際にそういう事がこの世界では本当に起こりうるなんて。


まだ少し物語の中の出来事のような気がして

気持ちがついていかないわ。


でもあんな悲痛な表情のクロノスさんをみたら

なんと答えていいのかわからなくて

返答に困ってしまったわ。


「今の所は命に別状はないのだが……

このまま長引くとあまりよろしくないらしい」


まあ、そうよね。

年々身体を蝕むよねぇ……。


魔物の呪いだもんね。


「だから元気づける為にも凛桜さんの料理を

是非食べさせてあげたいんだ。

凛桜さんの料理は不思議と食べると心が温かくなり

元気がでるからな!

どうか両親の為に料理を作ってくれないか」


懇願するようにそう言ったクロノスさんの目が少し潤んでいた。


「…………!

もちろん作るよ!!

私の拙い料理でいいなら全身全霊かけて作るよ!」


「ありがとう凛桜さん……

本当に恩にきる……」


それが昨日の夕方の出来事だ。



と、いう訳で朝から色々なレシピ本とにらめっこして

おかずを作っているのですよ。


薄いスープばかりで飽きていると言っていたから。


まずは……

オニオングラタンスープから作ろうかな。


身体もあったまるし何と言っても美味しいし!


うちでは定番のスープ料理だ。


本当はサムゲタンとかでもいいのだけれども

流石に家では作ったことがないのよね。


オニオングラタンスープは

玉ねぎとバターと調味料だけで作れるという

手軽さも気に入っているわ。


作り過ぎたら冷凍保存も可能です。


まあ、死ぬほど泣きながら大量の玉ねぎを刻むのは

難行苦行だけれども!


それが苦にならない程美味しいからよしとします。


で、10個程の玉ねぎの刻み地獄を経て……

今は炒め地獄へと突入しております。


飴色になるまで気が抜けないから結構重労働です。


手がやられそうです。


シュナッピーさんや……

現時点での味見は禁止ですよ。


きなこ達は完全にNGです。

ごめんね……。


イッヌは玉ねぎ中毒という病気があるから

あげられないのよ。


蒸かしたおいもをあげるからこれで我慢してね。


あとは水を投入して……

本当はコンソメを入れるのだけれども

私は愛用している野菜出汁をガッツリ入れます。


そして塩、味の〇とほんの少しキビ糖を入れて

味を調えます。


自然の甘みが出るから砂糖はほとんどいらないんだよね。


そういう所も身体によさそうで好きだわこの料理。


うん、自分で言うのもなんですがイイ感じ。


しかし……

あんなに大量に玉ねぎを刻んで作ったのに……

出来上がりは半分くらいの量しか作れないんだよね。


そう考えると毎日このメニューを出している

洋食屋さんのプロの料理人の方って凄い。


あとはこれに添えるバゲットと蕩けるチーズを

持参すればいいかな。


仕上げはクロノスさんの家の厨房をお借りしようっと。


バゲットの残りはラスクにして持参しよう。


シュガーラスクとガーリックラスクにしようかな~。


後は何がいいかな……。


メインは肉豆腐にしようかな~。


勿論お肉はビッグサングリアですよ~。


これならさっぱりとお肉も食べられるかなって。


お肉が駄目でも豆腐や野菜だけも美味しいしね。


副菜にはふろふき大根でもいいかも……

ゆず味噌も常備しているし。


いまから大根をコトコト煮ればまにあうしね。


よし、畑から大根を抜いてこよう。


いそいそと畑に行く準備をしていると……。


「デーコン?リオ!!

デーコンホシイ?」


そう言いながら……

シュナッピーが縁側からキッチンを覗き込んできた。


「大根ね!」


「デーコン……」


「だ・い・こ・ん」


「デ……イコン……」


「…………」


だからそう言っているじゃんという顔はやめぃ。


「ん、もうデーコンでいいや。

採って来てくれるの?」


「オウ」


シュナッピーは任せろと言わんばかり

葉っぱでドンと自分の茎を叩いてドヤ顔を決めていた。


「じゃあ、お願いしようかな。

大きい奴を畑から2本抜いてきて」


「マカセロ」


そう言ってシュナッピーときなこ達は畑に向かって

駆け出して行った。


フフフ……可愛い~。


と、思ったのも束の間……。


数十分後……


私がクロノスさんのお母様の為に“フルーツババロア”を

作っている時の事だった。


「リオ!採ってきたデーコン!

デーコン!」


という声が聞こえたので手を止めて縁側へ向かった。


「ありがとう……早かったね……んんん?」


シュナッピーときなこ達がドヤ顔で掲げている物体。


「…………」


「………………」


違うじゃねぇか、おい!!


デジャブか!?

デジャブなのか!?


私が風邪で寝込んでいる時に獲ってきてくれた魔界植物を

戦利品の如く掲げるシュナッピーさんが降臨していた。


確かに見た目は紫の大根……。


でもね、私の世界のデーコンには顔はついてないの。


それに本来喋らないのよ!

大根というものは!!


ひょっとしてなのですが……。


その方達はデーコンさん達じゃなくて

()()()()”さん達ですよね!!


今日も高音の声で清々しくらい罵詈雑言を仰っていますわよ。


“シバクゾ、ワレィ~”の合唱なんて

そうそう聞けるセリフじゃありませんことよ

オホホホ……。


「………………」


みなさんガチギレしているじゃありませんか。


“ヤンノカ、コラァ!

ドツキマワスゾ、ワレィ~“


うん、やかましいくらいの暴言の数々。


「ウルサイ……」


シュナッピーの額に青筋が浮かぶと同時に

例の如くシュナッピーの一捻りが炸裂いたしました。


「…………」


たった今……

ラハディの皆さんが天に召されました、合掌。


「…………はあ」


違う、違うそうじゃない……。


「ン……」


そんなドヤ顔で差し出されても……。


どうしよう~

この“やってやったぜ、俺様“感がすごい。


褒めて褒めてというキラキラの視線の前に

やり直しとは言えない私がいる。


うううううううっ。


もうこの際……

“ふろふきラハディ”でもいいか。


高級魔界植物らしいし……。


身体にもいいよね、きっと。


インフルさんが一発で治ったくらいだしな。


と、いう訳で美味しく調理いたしました。


他にもバンバンジー的な蒸し鳥料理を作ったり

卵グランキオ雑炊なんかも作りました。


プリンやマドレーヌとモナコおよび和菓子セットも

スタンバイしました。


あ、もちろんポップコーンも全種類

お持ちしますよ。


こんなところでしょうか。


一応、料理人さんの方にお渡しするレシピも

準備しましたよ。


どれか1つでも美味しく食べて頂けたら嬉しいな。




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