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2.庭が異世界に繋がった!?

祖父が亡くなった。


かなり田舎の一軒家に一人で住んでいたので

遺品整理やらこの家をどうするかなども含めて話し合うために

家族総出でこの家に滞在していた。


結局、うちの父がこの家を継ぐことになって

一通り片付けが終わったところだ。


揉めることもなくあっさりと決まり

親戚の人たちも帰っていった。



「本当にあなた一人で一か月も大丈夫なの?」


荷物をまとめながら母は心配そうに言った。


「大丈夫だよ、田舎といっても某番組のように

ポツンと~とかじゃないんだから。

自転車に乗れば、10分ほどで雑貨屋さんというか

町の小さなスーパーにも行けるし」


「こいつらもいるしな」


そう言って……

庭では祖父が飼っていた二匹の柴犬が、兄と戯れていた。

オスの黒柴とメスの茶柴だ。


「そうそう、黒豆ときなこもいるから大丈夫」


「ワンワン!!」


二匹もまかせろと言わんばかり元気に吠えた。


「一日一回は連絡しろよ」


「お父さん、子供じゃないんだから。

私はもういい大人よ」


「わかっているが……その……」


心配なんだと目が語っていた。

家族全員も同じ気持ちのようだ。


きっと二つの意味で心配なんだろうな……。


蒼月凛桜(そうげつりお) 28歳。

職業はイラストレーターです。


都内の某出版社で働いていたのだけど

先月、一身上の都合で退社いたしました。


よくある話です。

同じ会社の編集者の男性とお付き合いしていました。

その方が海外赴任になることになりまして……。


仕事をやめてついて来てほしいと言われたのですが

仕事がちょうど面白くなり、多方面からお声がかかり

はじめていましたので、待ってほしいと言ったら

あっさりと振られました、えぇ……。


まぁ、今思えばお互いにもう冷めていたのかもしれない。

タイミングと惰性で結婚という話になったのかなぁ。


そんな事があったので、少し人生のリフレッシュ休暇

といいますか、魂の休息をしたいと思って……。


残った仕事を高速で片付けてやめてしまいました。

PC一つあれば、どこでも仕事はできるしね。


家族や友人が思う程、萎れていないのですが

かなり傷心していると思われているのがちょっと腹立たしい。


ちょうどいい機会だったので、ワンコ達と共にしばらく

田舎暮らしを満喫するわ。


庭には小さいけれども畑とかもあるし……。

ちょっと狂暴な鶏たちもいるし……。

池もあるし、でかい鯉がビチビチいるし……。


あの鬼気迫るようにビチビチに湖岸に詰まって

餌を強請る光景がちょっと怖いと思うのは私だけでしょうか。


そんなこんなで、家族に心配されつつも

田舎暮らしをスタートした2日目の事だった。




朝早くかなり大きな地震があった。


枕元と足元に寝ていたワンコ達もびっくりして

飛び起きたくらいだ。


揺れがおさまり、きなこを抱いて玄関から外をそっと

覗いてみたが、別段変わった様子はない。


ひとまず、雨戸をすべてあけた。

縁側から庭におりて景色を眺めたが変わった様子はない。


ほっとして縁側に座ろうとした次の瞬間……

庭の奥から見たこともない獣が飛び出してきた。


サーベルタイガーなのか?

トラのような顔に地面につきそうなくらいの牙。


でも毛色の配色がおかしい。

青い色に黄色い斑点って……。


RPGに出てくる魔物じゃないんだから。

だから……。


えっ?

まさか、魔物さんですか?


怖いとおもいながらもガン見してしまう。

目は青い色と……。


確実に某県の山の中に生息している獣ではありませんな。

現実として認識すると、急にその場から動けなくなった。


と、黒豆が私を守るように獣の前に躍り出た。


「ウゥゥゥゥゥ……」


鼻にめちゃめちゃ皺を寄せて最大限の威嚇をみせていた。

そこにきなこも参戦して、二対一で睨みあっている。


「黒豆……、きなこ……危ないよ」


(どうしよう、麻酔銃とかあったかな。

じいちゃん、狩りはやっていたのかしら……)


オロオロしながら、家の中へ探しに戻ろうとしたときだった。


大きい何かが空から降ってきた。

それは目にもとまらぬ速さで、その魔物の首を落とした。


グォォォォンンンン!!


そんな声がしたと同時に、切られた首が足元に転がった。


「ヒィィィィ……」


血の色が緑のスライムみたいだし

怖い……。


それ以上に、この人……誰……。


その男は、血塗られた剣を数回ふって鞘に剣を収めた。


よくみるとその男の頭には獣耳がついており

後ろには尻尾が揺れていた。


髭も生え放題……

髪もぼさぼさで、服もかなり薄汚れていて……

ところどころ切れたりほつれたりをしていた。


(魔物の次は獣人ですか……。

言葉は通じるのだろうか……)


その男はこちらをみたまま微動だにしない。

琥珀色の瞳がギラついていた。


一難去ってまた一難とはこのことなのか……。

凛桜は顔がひきつっていた。


するとその男は徐に言った。


「お嬢さん、そこの獣を一頭譲ってもらえないだろうか」


きなこ達を指さしながらそう言った。


「はい?」


言っている意味が分からなくて……

いやわかるけど、どういう事?


というか、普通に言葉が通じているのも不思議だ。

日本語を話しているとは思えないから

お互いに話している言葉が、自分の国の言葉に変換されて

きこえているとしか思えない。


「いまは任務中なのでこんなナリだが、私は怪しいものではない」


(いや、めちゃめちゃ怪しいですから)


「任務が終わり、無事に国に帰ればちゃんと代金も払う。

だからこの獣を一匹譲ってくれ」


あやしい男は必死に頼み込んできた。


「えっと、ちなみになんですけど……。

きなこ達をどうするつもりですか?」


するとその男はいい笑顔でこう答えた。


「食う!!

もう何日もまともな食事をしていないからな」


その言葉に凛桜はぶち切れた。


「きなこ達は私の家族だ!!

おとといきやがれ、この変態男!!」


凛桜は近くにあった物を手あたり次第男にぶつけた。


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