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193.皆なかよくね、ね!

田舎暮らしを始めて170日目の続き。




「イヤッフーゥ」


楽しそうな掛け声と共にポン、ポッポン、ポンと軽快な音が

鳴り響くと同時に青空一面に丸い球がいくつもさいた。


大きさ的にはバランスボールくらいかしら。


直径がおそらく75㎝くらいだから結構おおきな球よね。


只今ノアムさんが華麗に空を舞いながら

ポップコーンバズーカーを楽しそうに撃ちまくっております。


さすがニャンコ!

身体能力がえげつない……。


バク宙返りしながら撃つってどういうこと?


バズーカーさばきも完璧よ!


するとその球をすぐさまシュナッピーが蔓で引き寄せると……

そのまま横のコートに投げ入れた。


「ギューウワッ」


投げ入れられたコートでは横一列に並んだタヌフィテス達が

その球の上部を器用にムニュっと開いて中に

粉上の物を注ぎ入れていた。


「ギュギューウゥワ」


それが終わるとさらに別の数匹のタヌフィテス達がそれを

きなこ達に向かって勢いよくなげると……。


「ワフン!」


器用に鼻先でキャッチしながら更にクロノスさんへと投げた。


「おう!きたな」


「ワン、ワワン」


「よし、うまいぞ、黒豆、もう一度いくぞ」


「ワワン!」


きなこ達とクロノスさんで何度か空中で球のラリーを行っているもよう。


さながら平安時代の蹴鞠状態だ。


こうするとまんべんなく粉が混じってポップコーンに味を

均等に塗せるという前提だ。


それが済むとその球は最終的に縁側で作業している

カロスの元へと送られるのであった。


凛桜はキッチンに立ち……

キャラメルコーティングのみを専門に行っております。


と、いうように……

ただいま中庭にて急ピッチでポップコーン作りの流れ作業が

行われております。


何故か大量のキングヒューナフライシュ及びクロノスさん達と

ともに帰還したシュナッピー。


うん……

やっぱりキングヒューナフライシュ狩ってきちゃったか……。


まあ、それについては後で言及しよう。


どうやら森の中で偶然遭遇したしたらしい。


定期見回りの最中だったのかな?


シュナッピーが1人で無双している所に出くわして

一緒に無双しちゃった感じ?


そこは、ね、うん、大人として止めて欲しかったわ。


だってね、キングヒューナフライシュ

とにかくデカいから……。


1匹でもその、ねぇ……。


ま、言いたいことは色々あったんだけれども

そこはグッと堪えて!


思い切ってポップコーン作りを手伝ってくれないかと

頼んだという訳なんですよ。


どう考えても1人で作るのは厳しい量だったからね。


そんな折にタヌフィテス達もちょうど畑仕事に来て

くれていたから声をかけてみました。


人手?があればあるほど助かるし。


この子達凄く器用だし。


そうしたら2つ返事で引き受けてくれたの。


いまならシュナッピーが話せるようになったから

意思疎通も随分楽になったからね。


最初は見たことのないポップコーンを目の前にして

凄く不思議がっていたけれども。


試食したポップコーンの美味しさに感動したみたい。


「ギュワァァァン」


って、蕩けた声でみんな鳴いていたよ。


で、そこからがちょっと怖かった。


だってみんな一瞬野生に返って貪り食べていたからね。


あっという間に1球のポップコーンを食べちゃったよ。


むしろおかわりくれぃ!

くらいのギラついた瞳をしてたからね。


いくら見た目が可愛いと言ってもやっぱり魔獣なのね。


すっかり忘れていたわ、うん……。


とてもお気に召したからなのか

ポップコーンの大球10個で引き受けてくれることになりました。


味的には……

キャラメル味とバター味が好きらしい。


そんな事でそれぞれ得意であろうという作業を前提で

流れ作業でポップコーン作りを行う事になったという訳なんです。


「最初はどうなるかと思いましたが……

案外この作戦が功をそうしましたね」


カロスさんは器用にカレー味のポップコーンを透明な

細長い袋に詰めながら安堵した表情を浮かべた。


カロスさんは見た目よらず、本当に手先が器用で

丁寧な仕事をしてくれるから助かるわ。


器用な強面クマさんのギャップに密かに萌える。


「ほんとね。

いがいに適材適所だったね」


凛桜も微笑ましく中庭での作業を見ながら微笑んでいた。


「ギュワ、ギュギュワ」


もちろん、ここでもタヌフィテス達は大活躍だ。


しかも毛が入らない様にという配慮なのか

どこからともなく取り出したレインコートのような物で

頭からすべて身体をすっぽり覆ったかと思ったら……。


手にはこれまたゴム手袋のような物をはめてくれました。


なんか信じられないくらい準備万端なんですけど。


ちゃんと獣耳の部分もついている作業着って一体。


種族で発注している特製品ですか?


どこかの食品工場でバイトでもしていましたか?


えっ?以外にタヌフィテス界隈では衛生管理には

厳しい感じ?


可愛いすぎて逆に何故か笑いが込み上げちゃうというのか

不思議空間が堪らないわ。


そんなプロ意識高いタヌフィテス達によって

ポップコーンがいっぱい詰められた透明な袋の口が

次々と器用にリボンで結ばれていっていた。


しかもちゃんと味がわかるようにそれぞれの色のリボンを

間違いなく結んでくれているのよ。


カレー味なら黄色、いちご味なら赤みたいな感じね。


それにこのポップコーンが入った透明の袋なんだけど

私たちの世界で言う透明シートみたいなものらしい。


植物のエキスから作られているんだって。


なんだか環境に優しそう。


何に入れて渡そうかと思い悩んでいたから助かったわ。


流石ルナルドさん抜かりがない男ね。


今度お礼にご当地ポッ〇ーの詰め合わせを進呈しよう。


私達の後ろではベテランのタヌフィテスのおばちゃん?達が

検品までしてくれている!


「ギュギューワ」


「ギュ!」


「ギュギュギィ?」


何と言っているかはわからないけれども……。


どうやら一部欠けていてトウモロコシの種の欠片が

ついている物は合格品とするのかを話し合っているらしい。


おう……なかなか厳しい判断基準が設けられているのねぇ。


「……………」


ねえ……本当に中に農協の方達がはいっていませんか?


手際の良さが本当にプロ級なのよ。


無駄な動きが一切ないというか……。


あのカロスさんでさえ目を見張るものがあるのか

感心しきりなのよ。


ま、相変わらずあの子だけは通常運転ですけどね。


そう、我らがタヌフィテス達の王子のあの子ですよ。


凛桜の足元に纏わりついて甘えたり

時には抱っこしろとせがんだ挙句……

瞳を潤ませながらポップコーンを強請るという暴挙に出ております。


「もう、タヌちゃん……。

みんな仕事しているんだから邪魔しちゃだめよ」


「キュワーン、キュキュキュ!」


“俺は立派に監督してるぜ!”


“だって、俺、王子だから!”


と、言わんばかりの上目遣いで甘えるタヌちゃんであった。


また、これが可愛いから質が悪い……。


本当に自分の魅力や立ち振る舞いかたをしっているよね、こやつ。


そんな姿をみながらもカロスさんは苦笑しながら

沈黙を貫いているが……。


あの男が勿論そんな事を許す訳もなく……

時折尋常じゃないくらいの殺気が飛んできています。


凛桜の知らない所で攻防戦が繰り広げられていた。


“タヌ公、いい加減に凛桜さんの膝から降りろや、コラ”


“ああん?なんでそんなことお前にいわれなければ

いけねぇーんだよ、おっさん“


“ああ?よほど命がおしくないようだな”


“はあ?”


クロノスさんとタヌちゃんの間で火花が散った。


勿論、両者とも1歩も譲る訳もなく……。


“ああ、また始まった”


と、密かに胃をキリキリと痛めているカロスさんがいたとか……。



まあ、そんな事があったのだけれども……

無事にポップコーン製作は終了しました。


それぞれ各味を1000本作りました!


後はこれを宮廷の料理人の方達がそれぞれ渡す人によって

選別して箱に詰めていくらしい。


出来たものはこのままクロノスさん達が持ち帰って

くれるのでひとまず安心だ。


わーい、やっと肩の荷がおりたわ。


本当に一時期はどうなるかとさえ思ったよ。


本当に皆に感謝しかない!

手伝ってくれてありがとう。


タヌちゃん達は約束のポップコーンの他に……

ちゃっかりお土産にキングヒューナフライシュ1体を

持って帰っていきました。


さすが抜かりないわ。


30匹近くのタヌフィテス達に……

欲しいなぁ~って瞳をうるうるさせられたら

あげるという選択肢しかないから!


本当にある意味ヤバイ種族だな、君達。


これがあれば当分の間狩りにいかなくていいからと

とても喜んでいたから、よしとするか。


まあ、そうよね、なかなかキングヒューナフライシュは

タヌちゃん達で狩るのは難しいよね。


村のみんなとなかよく食べてください。


1体はその場でノアムさん達が解体してくれたので

皆で唐揚げ祭りを行って消費したんだけれど。


まだ残り3体あるのよねぇ……。


ねぇ、キングってそんなに個体数いないんじゃなかったの?


一気に5体も狩っちゃ駄目じゃない?


「凛桜さん、あれなら1体俺らが持ち帰ろうか?」


遠慮がちにクロノスさんがそう言ってくれたので

お言葉に甘える事にしました。


でもそのまま肉の塊を渡すのは流石に忍びないので!


半分は唐揚げサンドにして……

残りは照り焼きと青じそつくねにして渡しました。


明日の騎士団の皆さんの演習にて食べるらしいです。


後日聞いた話なのだが……

チーム戦を行い、優勝チームだけに唐揚げサンドを

配ることに決定したクロノスさん。


そのお陰か……

かなりみんなの気合いが入って信じられない程の成果に

つながった事は言うまでもないだろう。


因みに優勝チームはカロスさん率いる部隊だったらしい。


あまりの悔しさにノアムさんが”にゃあぎにゃああ!!”と

吼えたという情報も頂きました。


「…………」


うん、食べ物の恨みって地味に怖いよね。


今度来た時には思う存分唐揚げサンドを作ってあげよう。




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