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188/219

188.帰るまでが遠足です!

田舎暮らしを始めて168日目。




「はい、そこ……

手あたり次第に知らない実を触らない!」


教育的な注意を促しました。


「エェ~!」


シュナッピーがいかにも食べたら危険というような

毒々しい色をしたあんずサイズくらいの実を捥ごうとしている!!


なんであえてその実にいくかな?


それなら隣に生っているハート形をした艶々の黄色い実の方が

断然美味しそうなんですけどぉ。


「キットコレ、ウマイ」


それなのに頬を膨らませて断固拒否って

どういうことだ!?


どこからくるの?その自信は?


えぇ?


そんな傍から今度はきなこが脇道から飛び出してきたかと思ったら

凛桜の顔を見上げながら目の前で可愛くお座りをした。


「きなこ!急にいなくなったと思ったら何処に……」


「ワフッ!」


キラキラした瞳全開で見上げながら嬉しそうに尻尾を振った。


うん、そこまではいいよ……。

凄く可愛いし。


頭をぐりぐりと撫でたいぐらいの可愛さよ。


でもね、でもね……

その口に咥えている得体のしれない生物はなに?


蛙さんかな?


両生類的な何かだと思うのだけれど……

いかんせんビジュアルがヤバイ。


右半分が紫色のラメがかった色をしており

左半分は黄金色に黒い水玉のドットが入っているもよう。


ぱっきりとセンターから色分けされているのも地味に嫌。


ちょっぴり……いや、だいぶヌメヌメしているし。


「…………」


咥えるな!危険!

という文字が脳裏に浮かんだのですが。


きなこ姉さんや……

なぜそんなパンクな蛙もどきを捕獲したのよ。


しかも全身で褒めて!褒めて!褒めて!の

褒め待ち状態なのは何故なんだい?


最大級のドヤ顔やめぃ。


そんな事を思いながらハッと我に返ったわ。


「きなこ!今すぐそれをペッ!しなさい!」


凛桜がいきなりそう叫んだので……

きなこは一瞬ビクついたが素直にそのまま

そのサイケな蛙を解放した。


するとそいつは威嚇するようにおおきな目を膨らませて

凛桜たちを見回すと……


“ビニャ、ビニャ、ビニャ、ビニャ、ケロッ”


と、一言鳴いて茂みへと大きくジャンプして消えて行った。


いやああああああああ!


鳴き声も気持ち悪い!!

やっぱり蛙だったのかしら……。


最後、“ケロッ”っていったよね!?


そんな恐怖に慄いている凛桜を横目で見ながら

誰かがポツリと呟いた。


「グルニューイ、キチョウセイブツ!」


「カラダ二イイ!!

ジヨウキョウソウ!エイヨウマンタン」


キングパパとクィーンだ。


えっ?あいつそんな貴重種だったの!?


あのビジュアルで?


と、いうかクィーンよ

どこからそんな渋い単語拾ってくるのよ。


滋養強壮、栄養満タン!って

何か怪しい薬のキャッチコピーだよ。


思わずサッとシュナッピーの耳を塞いだわ。


あ、耳らしきものが何処にあるかわからないけれど

その付近を両手で押さえました。


が、時は既に遅かった。


「ビミョウ……ナ、タンサン?」


そう言って首を傾げていたよ。


そんなところまでライバルのノアムさんに似なくても

いいんじゃないですか?


聞き間違えにも程がありますよ、シュナッピーさんや。


滋養強壮な!


微妙な炭酸なんてございません!

いらないから、本気で。


「確かに俺も久しぶりに見たな。

確かに凄い貴重種だぞ、きなこやるな」


横を歩いていたクロノスさんからもそんな言葉が零れた。


「ワフゥウ!!」


きなこもドヤ顔しない!


本当にうちのやんちゃ達は目が離せないわ……。



「あの見た目なのに?」


「確かにそうだな。

まあ、きっとあれは狩られない為の保護色なんだと思う」


苦笑しながらクロノスさんはそう続けた。


「…………」


いや、保護色ってそういう意味でしたっけ?


外敵をくらまし身をまもるのに好都合な……

周囲の物に似た体色じゃないんかい!


ゴリゴリの正反対をいっている気がしますよ、はい。


あ、そうそう!

何故ここにクロノスさんがいるかと言いますと……

今日も今日とてルナルドさんが忙しいからである。


大きな商会の代表って大変なのね。


分刻みスケジュールが継続中らしい。


“本当はわいが凛桜さんとデートしたかったでぇえぇええ”


という手紙と共にキングパパ達が助っ人に来てくれました。


それでもやっぱり心もとなかったのだろう。


“不本意なんやけど……

クロノス閣下に護衛をお任せするで“


という不満めいた手紙も頂きまして……。


本当にこの2人は水と油だからな。


行く道中ってそんなに危険でしたっけ?

キングパパ達がいればまあ、最強だと思っていましたが。


もしかしたら水面下で王族命令でもでたのかな?

大人な事情的な感じ?


なにはともあれ……

護衛という名目でクロノスさんが来てくれました。


すると再び急にキングパパが再び叫んだ。


「グルニューイ!

クロノス二ヒツヨウ!!」


「イヤ、ルナルドモホシガル!!」


負けじとクィーンが叫んだ。


「へっ?」


「お、おい、急になんだ?」


その発言を聞くとクロノスさんが急に焦りだした。


「グルニューイ、オトコハタベタイ」


「はい?」


「お、おいキング!!」


クロノスさんが慌ててキングを止めようとしたが。


「オトコ、ゲンキニナル!!

ルナルド!クロノス!ホシガル!」


クィーンがとどめをさした。


「…………」


そうはっきりと名指しで言われたクロノスは……

気まずそうに顔を赤らめながらそっぽをむいた。


が、観念したのか少し強引に髪の毛をかき混ぜて呟いた。


「まあ、その、あれだ。

グルニューイは……精力剤にうってつけの原料なんだ。

主に夜のな……」


ああ!!察し!!


あーなるほど、あ、はい……はい。


「スゴクゲンキ!

ギン……モガッ!」


光の速さでキングの口を塞いだクロノスさん。


その先の言葉を言ったら跡形もなく存在を消すよ

くらいの怒りの圧が込められていました。


流石のキング達も察したのか……

こくりと頷いて黙ったよ、うん。


いや、キング達よ。


こんな爽やかな昼間の森の中で……

下ネタはご遠慮ください。


子供たちの教育にも悪いです。


しかも自分の知らない所で大やけどしている

ルナルドさんも気の毒だから。


「わい、使ってへんからな!

フリとかじゃなく、本当やからな!」


という、空耳まで聞こえてくる気がするよ……。


「全く、かなわないな。

言葉が話せるのも善し悪しだな」


「ね……」


凛桜とクロノスは気まずそうに目を見合わせると

ほろ苦く微笑んだ。


と、せっかく和んだ雰囲気になったのに……。


「そんなの使わなくてもあんちゃんは一晩中いけそうだな」


はいいいいいいいいいいいっ?


「よかったな、凛桜」


そんな声が下から聞こえて来た。


「………………」


なにがだよ!!


まあ、こんな時代にド級のセクハラ発言かませるのは

このモグラしかいないよね……。


「よ、ご両人。

相変わらず熱いね……」


フリーゲントープのボスのボルガさんだ。


「なんでここにいるの?」


「いやあ、何、おまえらじじいの所にいくんだろ」


「えっ?なんで知っているの?」


「この森で起こっている事は……

大抵なんでも知っているぜ」


えっ、なにそれ、それはそれでちょっと怖い。


相変わらずこの森の情報セキュリティーは

ざるだな、おい……。


「俺もついて行ってやるぜ」


「…………」


何故にそんなドヤ顔?


いや、いりませんけど。

もうこれ以上お供は結構です。


そうじゃなくても幼稚園の引率の先生気分だから。


いや、きっと今の園児たちはもっといいこだと思う。


「いや、結構です」


「まあ、固いこと言うなよ。

旅は道ずれ、世は情けっていうだろう」


相変わらず江戸にかぶれているモグラだな。


お伊勢参りか何かと勘違いしていらっしゃる?


「まあ、俺に任せておきな」


って、ついてくる気満々じゃないか。


だってあんた達、すぐ喧嘩するじゃない。


この前みたいに急に扉に回し蹴りとかしないでよ。


もう完全に先頭にたって……

キングと楽しそうに話をしているボルガさん。


断られるという選択肢は彼の中にはないようです。


「仕方ないか」


「だな」


凛桜達は再び歩き出した。




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