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161.前に進むしかない!

田舎暮らしを始めて140日目。




今日も今日とて朝から炒飯なんぞ食べています……。


言わずもがな……

親友の和葉が作った朝から愛情たっぷり朝食です。


わぁー私ったら愛されてる(棒読み希望)


美味しいよ、めちゃくちゃ美味しいよ。


副菜はコンソメスープ、チンジャオロースに

クラゲとキュウリの和え物……

デザートはごま団子となっております。


“ごま団子だけは冷凍食品なんだ”


ごめんね~っ!

と、可愛く舌をペロリとだしていましたよ……えぇ。


人妻とは思えない可愛さだから許されるけど

普通だったらグーで腹パンだからな。


そんな可愛さ全開の謝り方が許されるのは

10代までだからな!!

(※ 作者の多少の偏見はお許しください)


それ以上にうん……

朝から中華三昧やめぃ……。


こんなヘビーな朝食食べられないって

昨日から言っているよね。


辛いことは美味しい物たくさん食べたら

忘れられるから~


という時代は終わったのだよ、奥様。


まあ、そうは思いつつ全部たべたけれども!!


そんなこんなで和葉は……

愛しい旦那と娘が待っているから帰るね~って。


しっかりと後片付けまでしてくれた後に

黒豆達をこれでもかって撫でてから

颯爽と帰っていったわ。


きっと無理をして昨日はお泊りをしてくれたのだと思う。


会えなかった分たくさん色々な事を喋ったわ。

それをただただ一晩中ニコニコと聞いてくれたのよ。


本当にありがたい。

お陰様で元気にはなったけれども。


が、次回はあっさりメニューでお願いします……。



田舎暮らしを始めて141~145日目。



相変わらず現実世界に留まっているようです。


帰れる気配がないから一旦実家に戻っております。


そして何故か新しい仕事も頂いたので……

その作業を粛々と進めております。


なんでも私の描く魔界植物のイラストとその説明書きが

面白いとかなりの好評らしく……

半ページの連載を頂けることになりました。


うん、何度も言うけれども架空植物じゃないから!

リアルガチの植物スケッチだからね。


説明書きも魔界植物図鑑から引用しております。

多少は私の意見も入っていますが……。


これって……大丈夫なのかしら……

内心ドキドキしております。


こちらにいらしている異世界の方!

もしこの記事が目に留まっても……

スルーして頂けるとありがたいです、はい。


くれぐれも……

異世界の専門機関に通報とかはご遠慮ください!!


“魔界でこれ見つけちゃったから観察してみた”

というコラムらしい。


んん……微妙にダサいタイトル。

これでいいのか編集部よ。


大の大人が真剣に会議して決定したタイトルなのか?

う……うん、何も言いますまい。


最初はお断りしようと思ったのよ。

月刊連載なんか抱えたら色々と担当の方と

まめに連絡とらないといけないでしょ?


例えメールやラインのやり取りだとしても

異世界では何故か使えない電化製品が多いから

無理じゃない……。


が、しかしその雑誌が季刊誌らしく!

それなら年4回だからなんとかいけるかなって

つい引き受けちゃったのよね。


しかも3冊分の記事はすでに収めてあるから

最低半年間は連絡取れなくても問題ないのよ。


インスピレーションを鍛える為に

フィールドワークに出ていることが多くて

なかなか連絡取れません。


もちろん電波が悪いので通話もオンライン打ち合わせ

などもできませんが……

それでもいいですか?


なんて、怪しい言い訳をよく信じてくれたなって。


とにかくこの数日その為に時間の全てを割いていたので

特に寂しいとか思う暇がなかったわ。


もしかしたらこのまましばらくの間……

異世界には戻らないかもね。


それならそれでお互いに冷静になる機会も持てて

違う意味で気持ちの整理もつくのかしら。


そんな事を思いながらアイスを一口齧った。


うまっ!


しらない間に……

あの国民的モチモチアイスの期間限定味が出ていたのよ。


もちもちカリカリ味覚らしい……。


きっとクロノスさん達も好きだろうな……

あの国民達はお餅が大好きだからな……。

凄く売れそう……。


「………………」


はっ!駄目だやっぱりつい考えちゃうよね。



一方その頃……


「マジっスかぁ……」


凛桜の家があったであろう場所で

1匹のニャンコが項垂れていた。


“凛桜さん……あのことが原因で……

怒って元の世界に帰っちゃったッスか!?”


ノアムはその現実がなかなか受け入れられなくて

再度自分の目を擦ってみた。


が、しかし……

目の前にはただ開けた野原が広がるだけだった。


「あ……もう最悪ッス。

団長になんと言ったらいいんスか、これ」


確実に荒れる&落ち込み&不貞腐れるのコンボが

くるじゃないッスかぁ!


めんどくせぇ……

はあ……騎士団宿舎に帰りたくねぇ……。


“魔獣が出た体にして数日間森で野宿しようかな”


ノアムは天を仰ぎながらその場にふて寝した。



しかしなかなか帰ってこないノアムに痺れをきらし

カロスが迎えに来てしまった模様。


「ノアム……一体いつまで!!」


ノアムの寝姿を見つけたカロスは少し苛立たし気に

声を荒げたがすぐに次の言葉を飲み込んだ。


その気配に振り返ったノアムの顔は死んでいた。


「副団長……っ」


するとカロスは優しくノアムの肩をポンと叩いた。


「みなまで言うな……理解した」


「副団長……」


2人は無言で熱い握手を交わしていた。



田舎暮らしを始めて146~148日目。



相変わらず現実世界で生活をしている。


朝起きて……

日中はイラストを描いて……

そして昼食の後に少し家の事をした後に

夕方近くに黒豆達の散歩に出かける。


こんな何気ない日を過ごしていた。


これが普通なのかもしれない。


あの日々はもしかしたら夢だったのか?

くらいの勢いになりそうで怖い。



ビシッ、ビシッ、ブンッバンッ!


最後の音は思いのほか大きな音がしたので

羊獣人の文官が思わずビクついて書類を床に落とした。


「す……すみません」


羊獣人はずり落ちそうな眼鏡をクイッとあげてから

急いで書類を拾おうとしたが……

横から大きな手がそれらを拾い集めてくれた。


「いえ、こちらこそ申し訳ありません」


カロスが申し訳なさそうに頭を下げた。


「い……いえ……閣下の調()()()()()()()()()()

お聞きしてはいたのですが……

どうしても今日中にこの採決だけは頂かなくては

ならなくておしかけたのはこちらですから」


そう言いながら緊張からくる汗をハンカチで

一所懸命に拭いながら羊獣人は小さく畏まっていた。


「できたぞ……これで全部か?」


「はい、ありがとうございました」


羊獣人は確認もせずに書類を腕に抱え込むと

一礼しながらも脱兎のごとく団長室を後にした。


「ふう……」


その当の本人は険しい顔のまま相変わらず

不機嫌そうに尻尾を揺らしながら

ソファーへゴロリと横になった。


「団長……

お気持ちはわかりますがもう少し押さえて頂けないと」


クロノスは鋭い視線のままカロスを見上げた。


「…………。表ではちゃんとやっているだろう?

自分の縄張り内くらい自由にさせてくれ。

なんならお前が代わってくれるか?」


自嘲気味にそういってニヤリと笑った。


「また、そんな無茶な事を」


凛桜が現実世界に帰ったその日から

クロノスの機嫌は悪くなる一方だった。


もちろん公式な場所などではいつものように

礼儀正しく穏やかにふるまうのだが……。


一旦身内だけになるとその反動もあるのか

頗る機嫌が悪くなるのだ。


勿論その原因は凛桜との喧嘩&不在にある。


しかし根本的な理由はといえば……

いよいよ本格的にクロノスの爵位の継承と婚約話が

具体化されようとしていたからだ。


コ……コホンとわざとらしく咳をした後に

カロスがしっかりとクロノスの目を見ながら言った。


「今日は15時よりカトリーヌ様とのお茶会があります。

くれぐれもこの前のようにすっぽかしたり

しないでくださいよ」


「…………」


それを聞いているのか聞いていないのか無反応なまま

クロノスはカロスからふいに視線を外すとつまらなそうに

窓の外の景色を眺めていた。


そこにノアムが何かを抱えて部屋に入って来た。


「失礼します。

副団長!頼まれていたものを買って来たッス」


「ああ、ありがとう」


そういうとカロスは小さな花籠と小包をクロノスの

目の前のテーブルの上に置いた。


「なんだ?これは」


「カトリーヌ嬢への贈り物です。

相手は公爵令嬢なのですよ。

いくら団長がその気がなくとも手ぶらでは

失礼に当たります」


「…………」


そんな慇懃無礼な発言にムッとしたのか

しばらくクロノスとカロスは軽く睨みあっていたが……。


無言で起き上がるとそのプレゼントを無造作につかんで

クロノスはそのまま部屋を出て行った。


「はあ……相変わらず団長の機嫌がヤバイッスね」


「団長も葛藤しているのだと思います。

本当は何もかも捨てて凛桜さんといままでと同じように

幸せな日々をおくりたいと望んでいると思いますよ」


「そうッスね……。

そう出来たら幸せっすよね」


「かといって無責任に自分の立場を投げ出す事は

できない性格ですからね……」


「どうして凛桜さんは異世界の人で人族なんっスかね。

せめて同じ世界のトラ種族だったらって……

そうしたらまだ一縷の望みがありそうッスよねぇ」


「そうだな……」


自分が1番嫌いな身分や種族に縛られている事が

もどかしくてたまらないのだろう。


そんなクロノスに何もしてあげられない自分にも

腹が立つし情けない気持ちでいっぱいだった。


凛桜さん……どうか1日でも早く帰ってきてください!


そう願わずにはいられなかった。


クロノスが消えた扉を見つめながらカロスは

この世界の精霊に初めて心の底から祈った。






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