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151/219

151.ゴールド仕様になっております……

田舎暮らしを始めて134日目の続き。




「これだけ採れれば充分ね」


凛桜は籠の中にぎっしりと詰まったイチゴーヌを見ながら

満足そうに微笑んだ。


それぞれが背負っている籠の中身が満杯になったので

ひとまず今年のイチゴーヌ狩りは終了にしよう。


と、いう事で……

只今スーシェリの生息地から少し離れた所で

遅いお昼をとっています。


因みに今日のお弁当の中身ですが……


・ツナとコーンバター醤油おにぎり

・肉巻きおにぎり

・梅としらすと大葉のおにぎり


になっております!

行楽弁当のメインはやっぱりおにぎりよね。


後のおかずは……


チキンナゲットにポテトサラダでしょう

えびとエリンギの醤油炒めに……

かにかまとチーズ入り卵焼きになっています。


デザートは、カップ入り杏仁豆腐です。

ここに採ったばかりのイチゴーヌをいれてもいいかも。


「うま!

()()()()()()()美味いッス!!」


そう言いながらノアムさんは5つくらい

チキンナゲットを一気に手で取ると

それを躊躇なく口の中に放り込んだ。


「一気に食うな行儀が悪い……。

それに“チキンナゲッツ”だ!」


カロスさんが冷静にツッコミをいれた。


んん……微妙に惜しいよ!カロスさん。


まあ、ナゲットでもナゲッツでもいいか。


毎度おなじみのやり取りが行われ……

それを楽しそうに見ているクロノスさんと目があった。


「いつもありがとな。

本当にどれを食べてもうまい」


「よかった!いっぱい食べてね」


「ああ……」


3人は本当に気持ちがいいくらい

美味しそうにたくさん食べてくれる。


そこにきなこ達がそっとすり寄って来た。


「キューン」


どうやらおかわりの催促だ。

いっぱい走り回って活躍したもんね。


「これが最後よ。

あまり食べすぎるとわがままボディになっちゃうからね」


凛桜がお弁当とは別のタッパーから

きなこ達専用の薄味にしたおにぎりを取り出して

あげようとしたら手元がくるってしまい落としてしまった。


「あっ!ごめん」


凛桜が慌てて拾おうとしたがそれを何者かが

目にもとまらぬ速さで先に奪っていった。


「えっ?」


「ワフ!?」


そいつはそのまま目の前の木の上へと駆けあがっていた。


「ああああああ!!」


ノアムさんがそいつを指さしていきなり叫んだ。


「な、おまえ……急に耳元で叫ぶな!」


カロスさんが獣耳を押さえながら眉間に青筋を立てて

ノアムさんを睨みつけたが……。


「だってあれっスよ。

副団長も団長もよく見てくださいッス」


「あ?」


森の小動物か何かがおにぎりを奪っていったのだろう

としか思っていなかったクロノスだった。


が、あまりにもノアムが騒ぐので……

ノアムが指さす方向を見上げてから

更によく目を凝らしながらみた。


「ギュ!ギューン!!」


そこには……

戦利品と言わんばかりおにぎりを両手で掲げて

ドヤ顔を決めているたぬき?らしきものがいた。


「あのやろう……」


クロノスさんはドスの聞いた低い声で呟いた。


きなこ達も木の下で威嚇するように吠えている。


それもそうだろう……。


今回は不可抗力とはいえども……

またしても自分たちの餌を取られたのだ。


「あ……」


ようやく凛桜もそいつの姿を捉えることができた。


庭に侵入して来てきなこ達のドックフードを食べていた

あの盗人たぬきもどきか!!


「タヌフィテスです」


「えっ?」


「普段は大人しい種族なんですが……

あいつがボスになってから様々なところで

作物の被害がでているのです」


カロスさんが珍しく顔を歪めながら

苦々しそうにそう言った。



あの独眼竜のたぬきは新ボスなんだ。

確かに大きいしふてぶてしいなとは思っていたけれども。


「特にこれが好きなんっスよ。

そしてその一大産地が副団長の家が収める領地なんッス。

しかも今年の被害は甚大なんッス」


そう言いながらノアムさんは

おにぎりの中に入っているコーンを指さした。


コーン好きのタヌキか……。

まあタヌキは雑食だからね。


「そいつらがどうやら凛桜さんの住んでいる森の中を

拠点にして悪さしているらしくてな……

おそらくねぐらがあるとふんでいるんだ」


へえ……あの森の住人なんだ。

だから家の庭にも出没したのかしら?


「その事もあって先日凛桜さん家の周りも

念のために調査したんたんだが空振りに終わった」


「あいつらは警戒心が強く頭がいいので

なかなか罠にもかからないのです。

それでも何か所かには罠を設置したのですが

さっぱりでした……」


カロスさんはそう言いながら木の上の奴を

忌々しそうに睨んだ。


「ギュル!キュ!キュ!」


おう……。

そんな視線など気にもしないで

思いっきりおにぎり頬張って食べてるよ。


美味しいのだろう……。

なんか嬉しそうな鳴き声さえ聞こえる……。


「………………!!」


まあそんななめた態度にクロノスさん達をはじめきなこ達も

“あいつ絶対潰す!”

的な視線で睨みつけていますけど……。


どこ吹く風でおにぎりを夢中でたべているたぬきもどき。

いい根性してるわ、全く。


そうか!だからか!

家に来た時に鉄の檻のようなものをカロスさんが

担いでいたから密かに不思議に思っていたのよね。


あれはタヌフィテスを捕まえる罠だったのね。


異世界でも結構原始的な罠設置なんだな。


魔法とかで落とし穴作るとか?

専用の魔法道具とかで捕まえるのかと思っていたわ。


「結局姿さえ見ることも叶わなくてな

調査は空振りに終わったから……

一から作戦を考えなくてはならいところに

あいつが登場してきただろう」


そう言って……

クロノスさんは苛立たし気に髪をかき混ぜて

木の上のタヌフィテスを睨みつけた。


「森の中で気配の残留魔素や食べ散らかした餌などは

見つかったんですけどね。

まさかこんなところで出会うなんて」


カロスも顔を曇らせた。


「ん?姿が見えなかったって……」


凛桜は首をひねった。


「えっ?」


今度はクロノスが不思議そうに首をひねった。


「その……

あの集団なら家の庭にでますけど……」


「本当か!!」


「ええ、この前クロノスさんが来た日の朝に

黒豆たちの餌を貪り食べてました」


「………………」


3人の顔には“本気か”と“してやられた”

というような驚きと怒りが混じった

複雑な表情が浮かんでいた。


でもそれは束の間の事で……

急に顔を引き締めたクロノスがぼそっと呟いた。


「ノアム……準備はできたか?」


「もちろんッス。

いつでもいけるッス」


「カロスはどうだ」


「はい、大丈夫です」


なにやらこの短い時間でなにやら画策していた模様。


「凛桜さん達は危ないから……

あの反対側の木の根元辺りまでそっと

下がってくれないか」


そう耳元で囁かれた。


「はい……」


するとノアムさんが何もない空中に向かって

弦を弾く様な動作をした。


するとその弾いたところから無数の電流が

雷のように枝分かれしてタヌフィテスがいる木に

一気に向かっていった。


どうやら気づかない間に木の周りに見えない

糸状のものが無数に張り巡らされていたらしい。

そこに電流が流れる仕組みらしい。


「ノアムの得意技だ」


ほえ~凄いわ。

上下左右に張り巡らされているから

何処にも逃げようがないわね。


電流の檻の完成ね。


流石のタヌフィテスも焦ったように右往左往して

逃げ道を探していたが……。


かなり緻密に糸が張り巡らされている為に

僅かな隙間さえないように思われた。


捕まるのは時間の問題だろうと誰もが思っていた。


が、その攻撃が届く前に何者かが乱入してきた。


「えっ?」


大きな破裂音と眩いほどの閃光が迸った直後に

そいつはこともあろうか凛桜めがけて飛んできた。


嘘でしょ!!


どうやらノアムの攻撃をもろに食らったであろう

かなりの大きさの切り株だった……。


高級な乾燥機くらいの大きさありますけど!!


「何故にキングスーシェリがここに!!」


カロスさんの焦った声が聞こえたかと思ったら

猛ダッシュで自分めがけて走ってくるクロノスさん!


攻撃の矛先をタヌフィテスからキングスーシェリに

変えようと向きを変えるノアムさん。


そしてまさに巨木が自分めがけて落ちてくるのが

全てスローモーションで見えた。


駄目だ……終わった……。

こん棒を構える暇なんてないから。


何もかも間に合わないわ、これ……。


やだな……。

こんな凶悪な顔がついた切り株が思いっきり

身体や顔にもろに当たったら痛いだろうな……。


かなりの青痣とかになりそう。


なんでまたキング来ちゃうかな。

大きすぎるだろこやつ。


しかもイチゴーヌも無駄にでかいし

中には黄金のイチゴーヌも生ってるじゃん!!


キングだからか?

美味しいの?

ゴールデンイチゴーヌはやはり美味いのか!?


なんでキングってだいたいゴールド仕様なのよ!


きっと数秒の出来事だったはずだが他人事のように

そんな悠長なことをぼんやり考えていた。





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