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144.おかん属性

田舎暮らしを始めて131日目の続きの続きの続き。




ザッザッザッ……。


サッ!カサカサカサ……。


ザッザッ……ザザッ…………。


ガザッ! ビクッ! カサカサカサ……ピタ。



「………………」


確実に何かがついてきている。


ノアムさんとクロノスさんも気がついているようで

横で苦笑している。


先ほど家を出て少し森の中に入ったところから

何者かが後ろをぴったりついてきているのだ。


着かず離れず微妙な距離感でついてきてはいるのだが

なにせ色が派手な物体だから……。


チラチラと目の端に入っちゃうのよね。


凛桜はしばらく気がつかないふりをして

歩いてはいたのだが……。


このまま放っておくと王都までこの状態が続きそうだ。

だから打開すべく試しに不意打ちで急に後ろを振り返った。


「ギョロ!!」


まさか凛桜が急に振り返るとは思わなかったのだろう。

その物体は驚いた拍子に派手につまずいて転んだ。


「…………」


「………………」


思いっきり顔面からスライディングしたな……。

大丈夫か!?


が、そいつはそのまま何事もなかったように起き上がり

その近くにあった植物と同化した。


いやいやいやいや!!

今思いっきり目があいましたよね。


前からここに生えている植物ですが何か?

じゃないのよ、まったく。


顔の皮も至るところが剥けちゃって……

中身の桃の果実のような黄色が見えちゃっていますよ!!


荒い誤魔化し方だな……

無理にも程があるでしょうが……。


クロノスさんなんか笑いが堪えきれず吹いちゃっているし

ノアムさんに至っては腹を抱えて笑っちゃっています。


観念しましょうか、キングパパ。


「キング……フハッ!

もうこれ以上は……無理だぞ……ククク」


なんでバレたの?


と、言わんばかりの挙動不審になってキングパパはその場で

右往左往していたが……。


やがて観念したのか擬態をといてこちらへと

とぼとぼとゆっくり歩いて来た。


「ちわッス!キング」


ノアムも親し気に片手を上げた。


「ネコ……」


「クイーンと喧嘩したらしいッスね」


「…………!!」


ふぁあ……また直球に聞いちゃう?


その一言にキングパパの殺気が一気に跳ね上がった。


しかしノアムは気にせずに話を続けた。


「クイーン凄く悲しんでいたッスよ。

何があったんスか?」


「ギュロロロロ……」


低い唸り声をあげながらノアムを思いっきり睨んでいた。


なんでそんな事をお前に話さないといけないんだと

言わんばかりの殺気を放っていた。


「かなりお怒りようだな……」


クロノスさんはお手上げだと言わんばかり

両手をあげて肩を竦めていた。


そんなキングの態度などお構いなしにノアムは話を続けた。


「全部話しちゃった方が楽ッスよ」


キングはそんなノアムを一瞥すると吐き捨てるように言った。


()()……()()()二……ハナスコトハナイ」


えぇぇぇえぇぇ!!


キング怖っ!

ネコゴトキって言いましたか?


キングだからこそ言える傲慢な言い方!!


私だったらムッとしちゃうけれども

ノアムさんは全く意に介していないようだった。


「ヒュゥー言うっスね」


そう言って苦笑しながら頬をかいていた。


「キング……話してくれないと解決しないぞ」


クロノスさんの言葉には流石のキングも

強く出られないようで……

少し気まずそうに目をそらした。


「で、()()()()()()?」


「………………!!」


「言い方!!」


「直球か!!」


凛桜とクロノスが同時にノアムにつっこみをいれた。

と、同時にクロノスに思いっきり頭を小突かれていた。


キングもその質問に衝撃を受けたのだろう。

にわかに信じられない顔で硬直していた。


「団長……痛いっス……。

でも、こういうことはグダグダするよりスパッと

聞いちゃった方が早いッスから……」


小突かれたところをさすりながら……

ちょっぴり涙目になっているノアムさんが不満そうに答えた。


確かにそうだけれども……。


「ッ…………」


キングパパは不自然なくらい凛桜達から目を逸らした。


え、やだ、なにその感じ。

キングパパ……まさか本当にやってないよね!!


凛桜は改めてまじまじとキングパパの顔を真正面からみた。


「………………」


そんな視線に堪えられなくなったのだろう。


キングパパは再び信じられないくらい挙動不審になり

凛桜達から後ろに一歩後ずさりした。


「キングパパ!!」


凛桜は思わず語気を強めて名前を呼んで

つかつかとキングパパに詰め寄った。


「リオ……」


キングパパはその迫力に目をしろくろさせながら

更に逃げるようにズリズリと後ろに少しずつ

下がっていっている。


「ハナスコトハナイ!!

トクニ……ネコナンカニハ!!」


ぐっと眉間に皺を寄せて苛立たしそうにそう言った。


何ですと!?

まだ言うか!!


いくらキングパパでも言い過ぎですよ。


「キングパパ!!

いくら何でもノアムさんに失礼だから」


凛桜が少し声を荒げてそう言うと

一瞬申し訳なさそうな顔でこちらをみたが


「ハナサナイ!!」


そう叫んでついに……

キングは凛桜達にくるりと背中をみせたかと思ったら

そのまま逃亡をはかろうとした。


が、凛桜の怒りは頂点に達していた。


「逃げるなんて!お母さん許しませんよ!!

それになんですかノアムさんに対するあの態度は!!

お母さん悲しい……」


「ギョ……!?」


ん?


へ?


2人と1体が驚いた顔で私の事を見ていた。


「………………」


数十秒だったが何とも言えない空気が流れた。


そうよね……思わず叫んじゃったけれども……

いつから私はキングの母になったのだろう。


なんであんな言葉を叫んでしまったの私。

止めるにしてももっといい言葉があったでしょうに。


2人と1体は相変わらずぽかんと口をあけて

凛桜をみていた。


まあ、そうなるよね……。

言った本人が一番驚いているくらいですから。


でもいくら実力主義な世界と言っても

上が下を見下すような発言は嫌だな。


たとえあなたがフラワー種の頂点だったとしても

少なくとも私の周りでは許しません!!


お母さんはないよね……うん、まあ……。


いや、いいのよこの際……細かい発言の内容は

要は“逃がすかこの野郎”って事で。


「いいから、ここに来なさい」


凛桜は頗るいい笑顔でキングパパに手招きをした。


キングパパは相変わらず顔をひきつらせたまま

首を横にふって嫌だと意思表示をしていた。


「ムリ……」


「聞こえなかったかな?

来・る・よ・ね? ん?」


「………………」


それはそれは……

いい笑顔で手招きする凛桜さんはとても怖かった。


絶対にあの人を本気で怒らせちゃいけない!!

と、後にノアムはカロスに言ったとか……。


そしてクロノスには……

団長、何があっても浮気だけはやめてください。

そう強く懇願したらしい……。



目の前には天使のような微笑みをした悪魔な凛桜が……

キングパパは冷汗をかきながらごくりと唾を飲み込んだ。


凛桜はいつのまにか大きな切り株に座っており

その横の空いたスペースをポンポンと手でたたき

横に座る様に促していた。


そんな凛桜の無言の圧に逃げられないと思ったのだろう。

ビクビクしながらキングパパは凛桜の横に座った。


その様子を満足そうにみて頷くと

凛桜はキングパパの方に向き直り優しい声で言った。


「私たちは最初からキングパパを信じているよ。

何か訳があったんでしょう?」


まさかそんな言葉をかけられるとは

思っていなかったのだろう。


キングは戸惑いの表情を見せていた。


「俺達はキングを裁きにきたんじゃない。

クイーンと仲直りをしてほしくて来たんだぞ」


クロノスもそう言って力強く頷いた。


「口では怒っている風に言っていたっスけど

話を聞いた感触では……

心の中ではクイーンもキングの事を信じているみたいっスよ」


「ネコ…………」


そんなノアムに対してまだ葛藤はあるみたいだったが

キングパパは大人しく話に耳を傾け始めていた。


「さ、俺達に本当の事を話して下さいッス」


「ホントウノコト……」


キングパパは3人の顔を不安げに見上げていたが

やがてポツリポツリと話し出した。




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