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13.パン祭り

リス獣人のお兄ちゃんはやがて

ぽつりぽつりだが話はじめた。


「お母さんが病気なんです……。

お父さんはお薬代を稼ぐために大きな街にお仕事にいっています」


「うん……」


それで?というように凛桜は続きを促す。


「僕たちは、森で木の実を拾ったり薬草を摘んだりして

お薬を買えるようにがんばっています。

その時に森の動物達にここのお店の事をきいたんです」


うん、店じゃないけどね……。


「ここのご飯を食べると元気になるって。

だからここのパンを食べたら

お母さんも元気になるかなって……」


「お母さんはね、パンが大好きなの。

元気になって欲しいの」


妹ちゃんは涙を堪えてそう言った。


いや、うちのご飯にそんな効果はないはず。

私はそんなチートな能力は何一つ貰っていない。


ただ家が異世界に繋がっただけの一般人だから。


いやー恐ろしい。

どこでそうなってそんな話になっているのさ。


凛桜は遠い目になった。




困ったなぁ……。

何とか力にはなってあげたいけど……。


よくみると二人の手や足にはたくさんの擦り傷があった。

きっと木の実や薬草を一所懸命に摘んでいてついたものだろう。


(健気すぎて泣ける……)


その時、凛桜の頭の片隅にチラッとあるものが過った。


そうだ!裏技だけど少しくらいならいいよね?

お母さん思いのリスの兄妹にご褒美だ。



と、パンが焼けるお知らせタイマーが鳴った。


「パンが出来たよ~。

出来立てが美味しいから早速食べようか」


「はい!」


二人は嬉しそうに尻尾を揺らして目を輝かせた。



その後も二人はたくさんのお手伝いをしてくれた。

きっと普段からやっているのだろう、小さいのに手際がよかった。


しかし楽しい時間というものは、あっという間に過ぎるもので……

だんだんと日も傾いてきた。


「あまり遅くなるとご両親が心配するから……

そろそろお家に帰ろうか」


二人とも残念そうな顔をしていたが、紅に染まる空の色をみて

諦めがついたのだろう。


「今日はありがとうございました。

とても楽しかったです」


「です」


そう言って二人は丁寧にお辞儀をした。


「私も楽しかったよ、ありがとう。

それから、これお土産。

今日二人が焼いたくるみパンとアップルパイが入っています」


二人は、ぱぁぁぁと笑顔になった。


「それからもいでくれたトウモロコシとトマトとジャガイモ。

それと、これはお母さんの為の特別なスープだよ。

二人が収穫してくれたお野菜で作っています」


そう言って凛桜はバスケットをお兄ちゃんに渡した。


「こんなにいいのですか?」


驚いた顔で何度もバスケットの中身と凛桜の顔を

交互にみていた。


「お手伝いをいっぱいしてくれたお礼です。

暗くならないうちに気を付けて帰るんだよ」


「本当にありがとうございます」


二人は目を潤ませながら何度も頭をさげた。

そして最高の笑顔で手を振りながら庭の奥へと消えていった。


可愛らしい兄妹だったな……。

あのスープを飲んで少しでもお母さんの病気が治ればいいな。


凛桜は白蛇さんの鱗を少しだけ削り、その粉をスープにいれた。

万病に効くというあのレアアイテムだ。


ギリギリアウトの行為かも知れないが……

どうしても放っておけなかった。


そんな事を思いながら二人が消えた藪の中をみつめていたら

盛大にお腹がなった。


よし、私も夕飯は焼き立てのパン祭りにするか!


今日も新しいお客様が我が家に来店した。

って、うちは店じゃないから!!



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