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120/219

120.そう簡単にはいきません……

田舎暮らしを始めて123日目。




今日は泣いても笑っても最終日だ。

本日のお題は“人気投票”だ。


売り上げは関係ない。

どれだけ多く店に投票してもらえるかがカギだ。


そして昨日の売り上げ順位の結果だが……

結論から言おう。


ノワイテ亭はなんと2位に食い込んだ!!

かなりの快挙だと思う。


発表の時にかなりのどよめきが起こったからね。

自分たちにとっても周りにとっても

それくらい予想外の順位だったみたい。


やはりレオナさん達が来てくれたことが大きい。


売り子や裏方の人数が増えて店の回転率が飛躍的に

あがったことやレオナさんの知名度の高さが

お客さんを呼んでくれた事は言うまでもない。


自画自賛になっちゃうけれども……

もちろん味も美味しかったのもあると信じたい。


2位を獲れたという事で……

ノワイテ亭の持ち点は“2ポイント”だ。


そして栄えある1位の店はと言うと言わずもがな

あの残念なタレ目イケメンことクレール侯爵のおみせ

“ロズレ”だった。


その差“1ポイント”だ!


たかが1ポイントされど1ポイントだ。


これが受験だったら明暗を分けてしまうほど

天と地くらい差がある重き1ポイントだ。


だから侯爵たちに勝つためには何としても

今日はぶっちぎり1位を獲るしかない!!


あちらもその事をわかっているだろうから

更に追い込みをかけて来るだろうし……。


何を仕掛けて来るかもわからない。


凛桜は気合いを入れる為に両手で自分の顔を叩いた。


「うっし!!

今日も最善を尽くすぞ」


「キュキュ!!」


コウモリさんが合いの手を入れるが如く鳴いた。



本日も絶賛低血圧状態の魔王様にコッソリ

ノワイテ亭の前まで送ってもらった。


魔王様って本当に朝が弱いよね……。


目をしぱしぱさせているし……

なんなら若干動きが鈍い。

半分寝ているのかもしれない。


今全力で攻撃したら勝てるんじゃないか?

くらいの勢いだよ……。


どうか帰ったらゆっくり2度寝してください。



「おはようございます」


「凛桜さん、ジョルさんおはよう!!」


パパさんとソフィアさんが荷馬車に今日の商品を

ちょうど乗せている所だった。


「今日もよろしくお願いいたします」


「こちらこそお願いいたします」


「キュ!キュ!」


店の中では眠いのかルルちゃんが舟をこぎながら

朝ご飯を食べていた。


確かに昨日は可愛らしい売り子として大活躍だったもんね。


身体は疲れているけれども精神的には興奮していたのだろう

寝付けなかったのかもしれない。


大丈夫か?

このままいくと目玉焼きに顔をつけちゃいそうで

目が離せませんが……。


その点ユートくんは朝からシャキッとしている。


「凛桜さん、ジョルさん。

おはようございます」


「おはよー」


「キュ!!」


「会場に着いてからでかまいませんので

本日の商品の詳細についてもう一度確認してもいいですか?」


「もちろんだよ。何でも聞いて」


本当に真面目でいいこだな。

ノワイテ亭の将来は安定ね!!


またもや親戚のおばちゃん目線で凛桜は嬉しそうに頷いた。



会場に着くと昨日より更に熱気が増していた。


どの店もまだ逆転のチャンスがあるからだろう。


歩いているとたくさんの声が至る所から飛んできた。

賞賛の声の方が多かったが……

中にはやっかみをふくめた揶揄も聞こえたのも事実だ。


それはそうだ。

とどのつまりみんなライバルなのだ。


本当はどんなことをしても“グロワール”が欲しいのだ。


大半の人は心でそう思うだけで実行にはうつさない。

ただ……一部の心のない人はその一線を越えてしまう。


でもこちらは正々堂々と戦うだけだ。


そんな事を思いながら準備をしているともう開園時間だ。


開会の合図と共に今日もたくさんの人が朝早くから

会場入りをしてきた。


と、開店と同時にノワイエ亭には軽く行列ができている。


毎年夏と冬に有明で行われる某祭典のようだ……。


本日のノワイエ亭の新刊は……

いや、違う違う!!


新作のメニューを多数揃えてお待ちしておりますよ。


「いらっしゃいませ~」


ルルちゃんの可愛い声が響いている。


うちの黒豆達も行列整理に余念がない。


「昨日かみさんから聞いてな。

とんでもなく美味い菓子があるそうじゃねぇか。

今日も“くるみゆべし”はあるのか?」


「はい、ございますよ。

こちらになります」


「おお、それを5つと……

あと今日の新作の商品はどれになる?」


「こちらでございます」


今日のノワイエ亭のお品書きはこうなっております。


メインはと言うと……


・ゴロゴロくるみとイチジクのベーグル


・サーモンとくるみとクリームチーズのベーグル


・ローストビーフ改めローストビッグサングリアと

レタスのくるみ味噌のベーグル


・3種のナッツ(くるみ・アーモンド・ピスタッチオ)

入りのシンプルベーグルだ。


怒涛のくるみベーグル推しでいこうと思います。


それから他にも新作商品を用意した。

こちらはすべて限定1000個限りだ。


午前中に500個、午後に500個販売する予定だ。

値段は1つ350アルク。


・くるみとりんごとレーズンのサラダ


・水菜とカリカリベーコンとくるみのサラダ


小さなカップに入った野菜サラダたちだ。


レオナさん曰く

女子はヘルシーな物も食べたいそうだ。


なので昨晩急遽作ってみました。


ヘルシー繋がりでもう2品。


・ヒューナフライシュのくるみ味噌がけ


・蒸し野菜のくるみ味噌がけ


ヒューナフライシュの胸肉を蒸し焼きにして

甘辛いクルミ味噌をかけました。


蒸し野菜の方は、家にあった野菜をど~んと入れて

ただくるみ味噌をかけたという手抜き……

いや!んん……簡単料理です、はい。


人参とかはハート形にくりぬいたし

パプリカは星形よ。


色とりどりで見た目がキュートなので

女子のハートにはささると思う……たぶん。


副菜にもよし酒のつまみにもよし!


こちらも350アルクで限定2000個だ。


数は多く出せないけれども種類で勝負することに決めました。


たくさんの商品があればどれか心にささるものが

あるんじゃないかなって。


今日は人気投票だからね。


それこそ小さなお子さんからご高齢の方まで

それぞれみんな1票持っている。


ある意味選挙だね、うん。


もちろんくるみゆべしもマフィンも残り分が

少しだけあるので……

それも小出しで売って行こうと思う。


もうあるもの全部投入する感じ。



「そうか……

ならその肉の挟まったベーグルとやらを6つ

3種のナッツベーグルを4つ。

あとくるみとりんごとレーズンのサラダを2つくれや」


「はい、ありがとうございます」


「俺は肉が好きだが、娘やかみさんは

太るとかいって草と菓子しか食わねえからな」


そう言って犬獣人のおじさまは豪快に笑いながら帰って行った。


それからも……

ローストビッグサングリアとレタスのくるみ味噌の

ベーグルは飛ぶように売れた。


やっぱりみんな結局肉が好きなのね。


その割に、他のベーグルの売り上げは今1つ伸びない。

なんでだろう……。


甘い物が好きな国民なはずなんだけどな……。


「凛桜さん、このままいくとローストビッグサングリアの

ベーグルが午前中で売り切れてしまいます」


ユートくんが困ったように眉尻をさげた。


「えぇ!!」


少しでも多く商品を作ろうと凛桜が

ローストビッグサングリアを高速でベーグルに

投入している最中の事だった。


「凛桜さん……

ヒューナフライシュのくるみ味噌がけもあと残り30です」


ソフィアさんが在庫チェックしながらそう言ってきた。


なんで?

なんで肉ばっかり売れるのだろう……。


それにものの1時間もしないうちに商品が売り切れそうだなんて。


どうしよう……。


午前中は限定1000個と看板に銘打ったから

ヒューナフライシュのくるみ味噌がけが売り切れても

しかたがないけれども。


こんな早い段階で商品が品薄なのはあまりよろしくない。


「凛桜さん、抹茶くるみマフィンは売り切れました。

本当にこれで完売です。

クルミキャラメルマフィンとバナナクルミマフィンも

あと残りわずかです」


「本気か……」


「お客さんも残念そうに帰って行く方が出てきました」


焦ったようにパパさんも叫ぶ。


なんでこんな急に売り切れラッシュなのよ。


計算を見誤ったか!!

まずい!!

非常にまずい!!


凛桜の背中に冷たいものが走った。


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