水族館デート
やぁ、俺は22歳の一般男性だよ。今日は4歳下のMちゃんと水族館に行くんだ。楽しみで楽しみで仕方がないよ。
シャワーも浴びて寝癖も直したし、朝ごはんもたんまり食べたし、待ち合わせの駅に行こう。駅まで15kmあるが、俺は体を鍛えるために走っていくことにした。
駅に着くと、こちらに手を振るMちゃんの姿があった。オレンジ色のビキニを着ている。今日も綺麗な金髪で、可愛いよ。
いやいや、ここは駅だぞ。なんでビキニなんだ。っていう俺も紫のパンツ一丁だけどな! ははは!
2人で電車に乗ると、列車内は騒然とした。
「本物だ」
「デートかな、2人って付き合ってるのかな」
「友達以上恋人未満らしいよ」
「俺は女の方は嫌いだなぁ」
良くも悪くも俺たちは有名人なので、列車内は俺たちの話題で持ち切りだった。
水族館に着いたので2人とも顔パスで入った。Mちゃんはタコから見たいと言うので、俺たちはタコの水槽に向かった。
「かわいい〜」
Mちゃんが喜んでいる。俺もタコは好きだ。他の客も好きなようで、水槽には人だかりが出来ていた。タコって見れば見るほど人間とは思えないよね。人間じゃないか。あの、エイリアンみたい。俺は水槽越しにタコを撫でてみた。
「☆」
ダメだな、次に行こう。Mちゃんがハリセンボンを見たいと言うので、入口の方まで戻った。ハリセンボンの水槽はガラガラだった。誰も見ていなかった。でも俺はここの生き物が全部好きだ。俺がいればハリセンボンもタコも同じだからだ。
「ギョギョギョギョって驚いてる! かわいい〜」
Mちゃんも楽しんでいるようだ。良かった良かった。次はカメが見たいって言ってたな、場所調べとかないと⋯⋯
「あーっ! マンボウくんもいる! チョット待って〜」
大はしゃぎのMちゃんを見ているだけで幸せな俺だった。俺たちは予定通りカメのところに向かう。
「カメさんの甲羅の上にちっちゃなカメちゃんが乗ってる〜! かわいい〜」
カメがこちらに寄ってきた。自分のうんこ食べてる。かわいいな。俺は水槽越しにカメの頭を撫でてみた。
「♪」
おっ⋯⋯! ああ〜。次行こう、次はサメだ。サメってカッコイイよなぁ。俺もこんなにでかくなりたい。
「お茶目なサメさん、かわいい〜」
Mちゃんさっきから「かわいい〜」しか言わないんだけど。同じことしか言わないのって、楽しくないんじゃないかなって思っちゃうんだけど、考えすぎ?
隣の水槽にエビがいる。エビって美味しいよね。Mちゃんが顔パスで水槽に入っていった。エビの腰をマッサージしてほぐしているようだ。マッサージでどうにかなるの? あ、エビが真っ直ぐ立ち上がった。すごいなMちゃん。
「うっそーん」
Mちゃんが水槽の中で何か言っている。
「クソ女め!」
「帰れ!」
ジジイとババアの罵声が聞こえる。こんな所にいちゃいけない。俺はMちゃんを連れて深海魚コーナーに向かった。
「グロ〜い」
Mちゃんは引いている。本物のアンコウはこんなにグロテスクなんだな。俺たちは一瞬だけ見てジュゴンのところへ向かった。
ジュゴンは食事中だった。丸っこくてかわいい。ジュゴンって食えるのかな。
「かぁわいい〜!」
Mちゃんが食事中のジュゴンをガラス越しに撫でている。
「♡」
あっ!
「うおおおおお!」
「ヒャッホーゥ!」
「いえあああああ!」
他の客が力の限り喜んでいる。よほど嬉しかったのだろう。混んできたので、俺たちはエンゼルフィッシュを見に行くことにした。
「そばに来て頬にチュッてしたぁ〜! かわいい〜」
「あ、Mちゃん魚群だよ!」
俺はMちゃんに叫んでいた。エンゼルフィッシュの後ろを魚群が通過したのだ。エンゼルフィッシュの目が燃えている!
プルリ
客たちは水槽をバンバン殴っている。野蛮な奴らだ。俺たちは気味が悪かったのでカニの水槽へ向かった。
あ、ナマコだ。ナマコの水槽もあるんだね。
「ギィヤアアアアア!」
しまった、Mちゃんはナマコが苦手なんだった! 早くカニの所へ行かないと!
膝を曲げ横歩きをするカニ達。超美味そう。この水族館の中で1番美味いんだろうなぁ。
「かわいい〜! 次は隣の水槽ね!」
隣にはクジラがいた。あ! ピンクのクジラもいる! 珍しい! Mちゃんは楽しそうに眺めている。
「Mちゃん、そろそろお腹空かない?」
けっこう長居していたので俺はもう腹ペコだ。
「1番大事なもの見てないでしょ!」
Mちゃんはそう言うと外に出た。怒らせちゃったか!? 俺はMちゃんの後を追った。外に出ると、イルカショーのステージがあった。そうだった、Mちゃんはイルカが大好きなんだった。イルカって食えるのかな。
イルカショーを見終わった俺たちはフルーツパフェを食べて球を飛ばす楽しいお店に寄って帰った。