表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら、異世界召喚被害に遭った  作者: 天原 重音
前日譚 ~半年前について~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/18

付き合い切れないので、家出します

 このあとも、王家派所属の貴族狩りは改革派の手によって進められた。一ヶ月が過ぎる頃には、国内はほぼ安定した。

 王族の愛人をやっていたものは全員処刑(堕胎に関わっていたものは火刑)、王家派に属する家の三歳以下の子供は養護院行き、それ以外は全員奴隷落ちか毒殺が事前に決められていた。養護院行きの年齢は十歳以下でいいんじゃないかと思ったが、『遺恨と後の火種は遺すべからず』と言う宰相の言でこの年齢になった。

 しかし、実際に処罰を下す直前の調査で、三歳以下はほぼおらず、四歳から十歳の子供の総数は三十人にも満たない数で、ほぼ全員が何かしらの虐待を受けていた事が発覚。

 この事実に加えて、十一歳から十五歳の子供の数に至っては――二年前の戦争で大多数が徴兵され、捨て駒にされていた事を差し引いても――百にも満たない。

 実際の数と届け出の数が合わない事に不審を抱いた宰相が決めた再調査で恐ろしい事実が発覚した。

 十五歳以下の人口が届け出数以下だった原因は二つ。

 一つ目は、宗教的理由と法で禁止されている堕胎が何度も行われていた。

 二つ目は、避妊と堕胎に失敗して生まれた子供だからと虐待を受け、死亡しても届け出が提出されていなかった。

 この事実を知り、別の意味で改革派は頭を抱えた。

 十五歳までの子供(ほぼ全員)に精神治療が施され、終了後は改革派貴族の家に養子として迎え入れられるか養護院に行く事が決まった。

 更に、王家派の徹底的な家庭調査を行った結果、虐めや虐待を受けていたものが『年齢を問わず』に大量に見つかり、いかに王家派が腐り切っていたかが判る結果となった。

 高齢で虐げられていたものの殆どは自らの意思で修道院に行く事を決めた。十六歳以降の結婚適齢期のものは改革派貴族で理解を示した家に嫁入りか婿入りした。また、『家は王家派だが跡継ぎが真っ当』の場合は、そのまま残して家を継がせた。

 事実を知ったもの達は『王家派はどこまで腐り堕ちていたのか』と、ため息を零した。

 王家派の貴族の約八割がこれで没落し、巻き込みで関わりの有った商家も潰えた。残りの二割は真っ当な人間は当主になった事で没落を逃れた。

 忘れていたけど、ウィシャート家関係の王家派は『忙しい時に色々とやらかしてくれたお礼』として、全員宰相に差し出した。お蔭で一族のゴタゴタがスッキリとした。代わりに分家は全滅したけど。

 改革中、近隣の周辺国の動きはない。事前に脅し倒した結果だろうね。デモンストレーションとして、城を部分破壊したのが功を奏した。

 暫くの間は静かだった。改革派の連中は過労死しそうなぐらいに忙しそうだった。

 実際に、彼らの部下の文官で何人か過労で倒れて自宅療養になったものが数十人を超えて出た。倒れた奴は十日間の強制療養で王都の家に帰らせたが、一日二日で復職しようとするので、療養の意味がない。慢性的な人手不足で復職はありがたいから、流石に帰れと言い難い。

 これは文官だけの問題ではなく、武官にも言えた。

 特に、九割以上が一夜で消えた近衛騎士団の再編成に追われる軍部の上層部は『あーでもない、こーでもない』と議論している。

 王家派の近衛騎士で、実家は改革派(もしくは中立派)で近衛騎士に成る為に派閥移動したものは一兵卒として前線送りとなっている。一見すると文句が出て来そうな処罰だが、家に処罰を下さない事を条件に前線送りにしている。個人で受ける罰と家単位で受ける罰で、どちらが重いかは言うまでもない。幸いな事に家を思うものばかりだったので特に問題は発生しなかった。

 近衛騎士団再編成に合わせて、各騎士団の人事異動も行われた。

 文官武官共にてんやわんやとなった一ヶ月だ。

 自分は大人一同には悪いが、暇だった。とは言っても完全に暇だった訳ではない。少しだが、両方の手伝いはした。

 具体的に言うと、書類の整理に騎士団長選出試験官役、辺境伯達からの意見書纏め、国境沿い偵察などをやった。

 暇潰しの作業をする傍らに見ていたが、一ヶ月で良くここまで足並みを揃えられたものだ。王家派の腐敗っぷりを見ると、最低でも半年以上は掛かりそうなのに。

 一体どれ程前から準備をしていたのやら。

 そう感心していたのも束の間。

 宰相からの久し振りに呼び出しに応じて王城に出向いた。宰相の執務室には、改革派の重鎮が勢揃いしていて、何時ぞやかの日を思わせる。

 呼び出しの内容を宰相に尋ね――人目を気にせずに額に手を当ててため息を吐いた。

 何人かが口を開こうとしたが、宰相が手で制した。

「本気で言っているの?」

 呼び出しの内容を聞き、これ程までに準備が整っていて、何故実行しなかったのか理由が判明した。

 単純に、次の王に祭り上げる人間が決まらなかったからだ。リーダー格の宰相がやればいいのに。

 断固お断りとだけ言って帰る。『強制的に祭り上げるつもりなら、宰相にやれと命じる』と脅し文句を言う事も忘れない。

 国家転覆計画は成功した時点で他国から良く思われないと言うのに。今になって、これまでの王家とは違う事を示す為に『王族が降嫁した事の無い家の人間』を王に祭り上げても意味は無い。自分も国家転覆計画に参加している身なので、王家の血が流れてない事を主張しても良くは思われないだろう。『元』王太子妃だし。

 付け加えると、この一年間の防衛戦で他国から悪魔か何かのように忌み嫌われている。そんな自分が王となると、この国は周辺国から益々嫌われそうだ。

 その辺りに気づいていない宰相じゃないと思うんだが、何かしらの思惑が有るんだろう。

 ゼノヴィア・ウィシャートが『十四歳の子供』と言う事実を理解していても。

 

 でもね。そんな向こうの都合なんざ知った事ではない!


 何しろこっちは、改革派に無理矢理取り込まれて、褒美と言う名目で愚物と婚約させられて。四六時中毎日暗殺者が送り込まれ、近衛騎士共は仕事をしないから、自力で返り討ちにし続けた。挙句の果てに、女官や侍女が遊び半分で飲食物に毒を混入させる。

 王太子妃教育と称して宰相の仕事を手伝わされ、隣国が侵略して来たら単身で追い返しに向かわされる。どちらも強制だ。

 しかも、何を成しても労いも気づかう言葉も何もない。押し付けて置きながら『出来て同然だ、やって同然』としか言わない。

 何の罰ゲームだよ。

 ぶっちゃけると、改革派との信頼関係は無いに等しい。『仲間』と言うよりも、『仲の悪い同僚』と言った感じだ。

 目的達成となった以上、改革派の要求を聞く気はない。

 荷物を纏めて国から出る事にした。

 出て行く際に必要となる書類と『家出します』の書き置きも忘れない。

 その全てを宰相の執務机に残して、国から去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ