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転生したら、異世界召喚被害に遭った  作者: 天原 重音
前日譚 ~半年前について~

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15/18

色々と終わった翌朝

 翌日。朝と言うには遅い時間に目が覚めた。部屋の部分改装で併設して貰ったシャワールームに入る。やや熱めのお湯を浴びて目を覚まし、汚れを落として行く。新しい下着を身に着け、髪をタオルで軽く拭き、魔法で乾かしながら部屋に戻る。気が抜けていたからか、部屋にこびり付いた血の匂いが鼻腔に届いた。

 ――今日、この部屋から出て行く。

 約一年間過ごした部屋だが、感慨はない。やっと出られると言う歓喜は有るが。

 度重なる暗殺者との戦闘が原因で、部屋はボロボロではないが、血の匂いが濃く漂っている。部屋は変えて貰えなかった。宰相も許可を出してくれなかった。宰相曰く、『使えない部屋を増やしたくない』からだった。

 これは、本来ならば護衛として動いてくれる筈の近衛騎士一同が動いてくれなかった事が大きい。あいつら仕事をサボったのだよ。このレンフィールド王国に限り、近衛騎士は『貴族階級(身元が確りとしている)男』でなければなれないのが決まりだ。そして、一人を除いた全員が王家派だった。

 これまで仕事をサボって咎められなかったがそれも昨日まで。

 半年前、改革派に引き抜いた――正しくは、自分の置かれている現状を知って寝返った――元中立派の近衛騎士団長アイアンズ侯爵の下、新たに再編成が進められる。終わった頃には、高齢を理由に近衛騎士団長の地位を退き、爵位を改革派の親族に譲って引退する予定だ。

 中立派云々を言うのなら、我がウィシャート侯爵家も実質中立派。実質が付くのは、爵位を引き継いだ年齢が十歳で、爵位を狙う親族一同を黙らせたり、一族の足並みを揃えたりとバタバタしていたので、ぶっちゃけ、政争に関わる暇も余力も無かった。

 そこへ他国からの侵略戦争が始まり、……そこから先の四年間の事はもう思い出したくもない。

 魔法師兵として徴兵受けて、上層部は無能で、徴集の魔法師は捨て駒扱いで――ただ一人、生き残ってしまった。

 その後、宰相を始めとした改革派に目を付けられ、王太子と無理矢理婚約させられて、昨日まで毎日、王太子妃の仕事(と言う名の宰相の手伝い)に忙殺され、暗殺者を返り討ちにして、他国からの侵略が起これば陣頭指揮者として前線に連れて行かれて、全くもって、休む暇がなかった。

 普段着のカジュアルな服を着ながら思う。

 働き過ぎだ、と。

 これからはスローライフを送りたい。否、スローライフを送るのだ。ウィシャート家は元々、侯爵位唯一の王家派だったが、自分が強制的に改革派に取り込まれた事で、改革派となり今回の政変を逃れている。でも、宰相がメスを入れると言っていたから何人か処刑コース確定かな? でも、当家の分家で改革派の家はない。やっぱ、全潰しか? 馬鹿が多かったし。

 家が潰れようがどうでも良い。一番忙しい時に、色々とやらかした奴らだし。寧ろ宰相に差し出すか。

 着用を終え、手を組み軽く伸びをする。荷物は全て宝物庫に入れている。

 お馴染みの黒コートを羽織り、部屋を出た。



 厨房に顔を出して自分の食事を作り、食堂で食べる。城内での食事には何が入っているか判らなかった為、自分の食事は可能な限り自分で作っている。料理長からの厨房使用許可は宰相経由で捥ぎ取った。この程度の協力ぐらいはして欲しいものだ。

 食事を取ったあと、宰相の執務室に向かう。粛清の進み具合を知る為だ。状況によっては国から出難くなる。

 執務室にノックしてから入ると、改革派の重鎮が勢揃いしていた。全員の視線が一斉に集まる。

 宰相 ヒューストン侯爵。

 元帥 ダスティン公爵。

 総騎士団長 スミス伯爵。

 前近衛騎士団長 アイアンズ侯爵。

 外務大臣 エアハート公爵。

 財務大臣 カーンズ公爵。

 総侍従長 ジュノー伯爵。

 この七人が重鎮だが、六の公爵家と十六の侯爵家が改革派の中核を担っている。なお、侯爵家はウィシャート家を含めて十六家存在する。

 強制的に巻き込まれたので、自分は改革派と言う自覚がない。いや、自認していない。

「進み具合はどうですか?」

 挨拶せずに話しかける。年齢差を考えれば失礼だが、自分は無理矢理改革派に取り込まれたも同然で、彼らの事を快く思っていない。向こうもそれは承知しているので、多少の失礼で協力が得られるのならば安いと割り切っている。

「会場で捕縛したものの処理は終わった。一時間後に王家の処刑を始める」

「全て終える前に王家も処すのですか?」

「こればかりは早々にやってしまった方が良い」

「そうですか」

 進みに問題は無く、国家の象徴である王族の処刑も恙なく行われるだろう。その辺りの宰相の手腕は信用しても良い。

 これ以上聞く事はなさそう。さっさと国からも出て行こう、と背を向けた時、待てと宰相から制止が掛かった。

「まだ何か?」

 振り返って訊ねる。

 王家の処刑方法は既に決定している。処刑方法で今更話し合う事はない。

 国王と王太子は絞首刑として城壁に生きたまま吊るす。王妃と王女は近親相姦や堕胎までも行っていた事が調査で明らかになったので、宗教理由でこちらは火刑。

「王と王太子に一発叩き込んでも良いが、やるか?」

「吊るす前に気の済むまで殴って良いって事?」

 宰相の問いに意訳返答すると、重鎮一同がドン引きした。違うのかと、一同を見回せば宰相が代表して答える。

「……そうとも取れるな」

 まぁ、徴兵関連で自分が王を恨んでいる事ぐらいは、流石に知っているか。

 ――ただ一人生き残って、『独り生還した恥知らず』と数多の罵声を浴びた。

 戦場に出てもいない人間に、捨て駒にされた人間の気持ちが判るのか? 

 金で親に売られたと知って、絶望しながら戦場に突撃して散った、自分と同い年の少年兵達。彼らを売った馬鹿な親は、裏から手を回して全員悲惨な目に合わせた。国に売って捨てたくせに、何故もう一度会えると思っていたのか。本当に訳の分からない親共だった。

 子供を売った本当の恥知らずは、寧ろそっちだろうに。

 嫌な過去だ。

 宰相から詳細な予定を聞く。王と王太子はまだ地下牢にいて、これから移送する。王妃と王女の火刑は既に済んでいる。

 あの二人を気の済むまで殴るのなら、アレを使うのが良いだろう。

 詳細を聞いた自分は道具の入手の為に移動した。



 そして、……王と王太子を城壁の上で、集まった平民の目の前で気の済むまで殴った。正確には、安物の皮のサンダルで顔と尻が腫れ上がるまで徹底的に叩いた。

 王族が児童のように叩かれている様を見て、平民から『もっとやれ!』と声が上がる。平民から見えないところで、改革派の貴族はドン引いていたけど、もうどうでも良い。

 仕上げとして、尻に山芋に似たヌルヌル毒芋を突き立てて城壁から蹴り落とす。王族が揃って『あ゛ー!?』と悲鳴を上げる様を見た平民は大笑いだ。蹴り落としたけど、元々首に縄が括り付けられていたので、そのまま首吊り状態となる。

 王族の無様な末路を見て、平民から喝采が上がる。

 改革派の貴族(男性)は尻を抑えてドン引く。

 実に対照的な光景だ。

まだ続きます。

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