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エピソード:45 シュリエータ・ウォルパールのつぶやき

練習的な短めの余話です。

 私はウォルパール魚人王国の王女シュリエータ。五百年以上続く魚人王国の歴史上でも最も美しいと称えられる人魚姫。


 いいのですよ、人間。水中で呼吸すら出来ない哀れな存在ですが、この私の(つがい)になる事を許しましょう。誇りなさい。あなたの外見を。そして感謝なさい。あなたの幸運を。


 え、いらない?

 気は確かですか?

 確か?いえいえ、私の目に留まり、声をかけられるだけで気を失う者すらいるのですから、あなたが動転して私の申し出を断るという暴挙を許しましょう。


 動転してない?許しもいらない?

 神々の主神を決める争いに巻き込まれて異世界から連れてこられた?もしそうだとして、あなたは何をしていたのです?釣りの神の加護を得たから釣りをしていた?それでどう戦い抜くのです?わからない?やはりあなたの気は動転しているのですね。正常な判断を下せていないようです。


 とりあえず家臣達と合流します。幸い、ここはヴェローネにほど近い位置にあるようですし。


 ジロー・ウラシマ。それが私の見初めた少年。少年の可愛らしさと青年の凛々しさの絶妙な均衡。造形の美しさだけで言うなら婚約者として認めたロマオ殿も負けてはいないでしょう。しかしロマオ殿自身でさえ、ジローの希有な魅力を認めて身を引いて下さった。


 なのに、ジローは私の求婚を受け入れないでいた。信じられない。その間、事態はこじれにこじれ、私の婚約話の代わりに、兄オルルッカと、ロマオ殿の妹君の婚約話が進んだ。


 その最初の顔見せの前日、私が地上で滞在する館に、一人の黒髪黒目の少女が訪れて、ジロー宛の手紙を残していった。ジローに問いただすと、確かに知り合いらしい。恋人同士という間柄ではないにしろ、私に対する態度とは明らかに違って好意的だった。


 許せませんとも。その顔を見て、その願いを断ち切って、悔しさに歪む顔を笑い飛ばして溜飲を下げるつもりだったのに。

 なのに、水の大神エイミアの加護を受けている者らしく、知らなかった私も従者も兵士達も残らず水に囚われ、囚えていたジローは解放されてしまった。


 オルルッカ兄様やリュグノー宰相にくどくどとお説教されてしまった。幸い、マイという者はジローに恋愛感情は持ってないようだったけれど、兄の婚約相手となる筈のラ・ルジュレがジローに惹かれてしまった。


 ウォルパールの王都に戻ったら、父様(とうさま)にまでひどく叱られてしまった。デスゲームとジローが言ってたのは本当の事だったらしい。悔しいけれど、エイミア様の加護を受けてるマイは国賓扱いとなり、ジローはその友人という事でやっぱり賓客扱いで、特に私は彼に近づいてはいけないと言い渡されてしまった。


 マイ達は、同じ学舎に通う生徒だったらしい。その知り合い達一人一人が神からの加護を受け、その象徴となるメダルを奪い合う。最後の一人のみが勝者。その一人に最初に加護を与えていた神が次の主神となる。


 その意味では、なんでジローじゃなくて、マイがちやほやされるかはわかる。ジローの釣り針にかかってしまった、ウォルパールのかつての王都を破壊した大海蛇ウルカディアまでを調伏せしめてしまったのだから。

 海竜とも呼ばれるウルカディアは、全長が数キロにも及び、体の直径が百メートル近いという、文字通りの怪物。その身震いだけで津波が起き、沿岸の諸都市を滅ぼしかねない生ける災厄。


 海における絶対的な王者(ウルカディア)を負かしたマイは、その力を用いながら沿岸諸国の街々を超局地的な津波で飲み込み、標的となるメダル持ちだけを陸上で溺れ死にさせて、ユーツェル連邦共和国に散在していたライバル達を根こそぎ刈り尽くしていった。


 何とか文のやりとりは許してもらったジローからの便りによると、マイの得たメダルは100枚を余裕で越えたらしい。それでマイが最終的な勝者になれそうかというと、250枚を軽く越え、過半数の300枚へと近づいていっている絶対的な首位がいるらしい。

 ジローの枚数は、2枚。あまりにも少ない。マイがジローの為に何枚か、彼が月に一枚稼げなかった保険として取り分けているとも聞いたが、ジローが最終的に生き残れるかどうかは、かなり微妙だろう。

 マイが、最終的な勝者の権利として得る願いで彼を生き返らせればまだ。ただその場合、ジローは必然的に、マイの物になるだろう。


 私は何度も考えた。なぜ、水の大神の加護をジローが得なかったのかと。聞く話によれば、加護を得ている相手を倒せば、その加護はメダルを得た者へと移動する。ならば、ジローでも構わないではないか?

 最初に得た神の加護の象徴たるメダルは譲渡も交換もできないらしい。ならば、殺してでも得るしかないではないか。マイも、もしも彼女がジローを憎からず想っており、恋や愛の感情をわずかにでも抱いているのであれば、我が身よりも彼を優先すべきではないのか?

 そしてマイの持つ水の大神の加護や百を越す神々の加護や、ウルカディアの力が合わさって初めて、ジローが生き残る目は出てくるだろう。


 こんな話を真正面からジローにしても、いやウォルパールの他の誰にしても、私がさらに遠ざけられるだけだ。最悪、私がマイに殺されるまである。そんな危険は犯せない。

 マイが得ている加護の数々は、まさしく超常の力だ。暗殺しようとしても力押ししようとしても跳ね返されてしまうだろう。


 でも、望みが無い訳ではない。デスゲームの首位を行く相手は、すでに東大陸のポルジオ王国と北大陸のラングロイド帝国を制しているらしい。ユーツェル連邦共和国でウォルパール魚人王国が有数の強国とはいえ、陸の国々の大半は、マイを担いで首位の存在に目をつけられ、マイが倒されてしまった時の事を恐れている。


 マイを、首位の存在に倒させる訳にはいかない。そのメダルは、エイミア様の物を含めて、ジローに譲り渡させなければならない。マイもジローも、自分達の意志では絶対にそんな事はしない。もしジローが人質に取られても、マイはたぶんだけど、自分が得た物を手放さないだろうし、ジローもそんな事は願わないだろう。


 うん、だからこそ、私が最初に味方につけるべきだったのは、まずはラ・ルジュレ。次に、マイだった。


 そしてうまくいくかどうかかなり危うかった計画は、ジローがコーチョーなる人物を釣り上げた事によって、実現の目が出てきた。

短めですみません。この後は書けてて、その後も書いてる途中ですが、その内容からすると今回の内容は空振り気味ではあるものの、完全にすかってる訳でもないので、悩みましたが掲載しておきます。(次のはたぶん早めに・・・)

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