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23話 俺の番は聖女だったのか

シエン視点です。数話続きます。リラとはまた違った見え方になっております。ですので、間違いではありません。(何がとは申しませんが) 


シエンside 1 

 炎国とは違うシーラン風の屋敷の外に出た。炎国では魔樹の花が満開になっている季節だが、この国はまだ肌寒い風が吹き、冷えた空気が頬を撫でた。


 毎回の事なんだが、ここに来るのはすごく嫌だ。嫌なんだが、来ないという選択肢ができない。

 唯一、俺の闇を浄化できる人物がここにいるからだ。


 では、何が嫌かって?俺の失敗が原因なのだが、初めてあった時、今までの苦しみが無くなり、体が自由に動くようになり、思わず『俺の聖女になって欲しい。』と言ってしまったことだ。

 その後、体質とは全く関係ないことで、俺は生死の境を彷徨うことになってしまった。その時の事は思い出したくないから省くが、それからというもの、大兄や他の4人から重圧的な視線を向けられ続けている。それがもう恐ろしくて嫌なんだ。


 別に聖女に興味なんてないし、美人には違いないが人形の様に表情がない。たまに表情が変わっても、それが腐った魚の目をしているのだ。そんな女の側にいるなんて無理だ。


 今回も無事に生きて屋敷を出ることができたから、さっさと転移で炎国に戻ろうかと思ったが、何かザワザワと心を掻き立てる感じが先程からしている。何かよくわからないが、気になる。しかし、あまりこの国に留まり続けると、浄化した闇がまた溜まって来てしまう。


 考えた末、少しだけ気になるモノを見に行くことにした。どうやら、移動しているようで、南に向って動いている。


 坂を下って行くまではよかったのだが、平坦の道になってから、行き交う人が多くなり歩きにくくなって来た。フードを深く被っているために、視界が狭く幾度か人にぶつかってしまう。

 国では民の方から避けてくれるので、こんなに沢山の人の中を歩くのは俺にとって至難の技だ。


 いや、いつもの事だが、何故か上から植木鉢が降ってきたり、荷車が向って来ているのを避ければ、溝に落ちるし、脇道に入ると猫の集団に襲われるという災難を乗り越えて、気になる気配を追い続けていた。


 気になる気配が大分近づいてきて、姿を捉えられるところまで追いついた。水色の髪に青色のワンピースを着ている少女の後ろ姿を捉えることができた。

 番だ。あれは俺の番だ!


 急いで声を掛けようとして、ふと思い出した。あの聖女に言われた言葉だ。

 『シエンさん。貴方のツガイを見つけても、自分がツガイだと言ってはなりません。相手の人をよく見て、貴方の言葉で語りかけてください。でないと、嫌われますよ。』と。


 嫌われるのは嫌だ。そう、躊躇していると番が路地に入ってしまった。急いで追いつこうとしていると、視界がブレた。やばい。人混みの中にいすぎた。

 しかし、おかしい。綺麗に浄化してもらったのに早すぎる。懐を探ると唯一残っていた護符兼財布が無くなっていた。人にぶつかったときに盗られてしまったようだ。

 探しに行こうにも体が重く、地面が近づいて来る。そこで意識が途切れた。



 体に何かあたったような振動で目が覚めた。しかし、ヤバかった。目が覚めなかったらこのまま死んでいただろう。

 顔の横に何か置かれたようだが、この気配は昨日感じた気配!あっ。遠ざかってしまう。


 顔を横にしてみれば、パンが一つ置かれていた。そう言えば、昨日の昼から何も食べていなかったな。重い腕を動かして、パンを掴んで、口に運んで一口食べる。


 美味しい。


 パンを食べて初めて美味しいと思った。炎国の主食はパンではなくお米なので、普段食べることが無いのだが、何度か食べる機会があったのだ。しかし、コレを食べるのならお米だけでいいと思ったぐらいだ。


 あまりにものおいしさに、思わず起き上がって一気に食べてしまった。足りない。


 あれ?起き上がれている。体が幾分か軽くなっている。もしかして、パンに浄化作用があったのか?


 俺の番は聖女だったのか。



 日が傾き路地の隙間に横から日が差すようになって来て、ようやく俺の番が帰ってきた。話を聞いてもらおうと手を伸ばせば、頭に衝撃が走り、意識が途切れた。



 また、何かがあたったような振動で目が覚めた。本当にヤバイな。俺このまま死ぬんじゃないのだろうか。俺の聖女である番を見つけたのにそれは嫌だ。

 その番が近くにいる気配が!手を伸ばせば何かを掴んだ。取り敢えずこの前もらった浄化作用のあるパンが欲しい。


「食べ物を恵んでください。」


 かすれ声だったが聞き取ってくれただろうか。


「パンが欲しければ表の店で買え。何でタダでやらなければならない。一度施しをしたのだから、いいだろ?」


「お金を取られてしまって、買えない。」


「それは災難だったな。私は仕事に行くから足を離せ。」


「お願い『ギュルルルル』。」


 お腹がすごい音で鳴ってしまった。恥ずかしい。


「これをやるから手を離せ。」


 そう言って番はパンを差し出してくれた。これで動けるようになれば、話を聞いてもらえるだろうか。そう思い顔を上げるが誰もいなかった。


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