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18話 覚悟は必要ない?

 分かってしまった。シエンは一番始めに言っていた。私が作ったパンに浄化する作用があると、はっきり言って私の作ったパンにそのような作用はないのだが、私がいつもパンを作りながら思うことがある。


 私のパンを食べて幸せな心になってくれたらいいと。


 私はこの世界に転生して不幸だと思ったことはないが、満足しているかと言えばそうではなかった。一番の原因は毎日食卓に上がる硬いパンなのだが、あの世界の記憶を持つ私にとっては物足りない世界だった。


 そんな私が一番幸せを感じるのが、お米様を食べているときだ。人にとって幸せと感じることは人それぞれ違うように、私のパンを食べたことで少しでも美味しいと感じて、日頃の不満が減り、幸せと思う事ができたならいいなと思っていたのだ。


 多分これがシエンの言う私のパンに浄化作用があると言っているのだろう。しかし、ジェフさんは私がスキルを中途半端に使っているという。確かに私はスキルを使おうと意識してパンを作っていない。


 いつもランチで食べるジェフさんの作った料理は美味しい。だけど、今、私の目の前にあるボロネーゼは別物だ。なんと言えばいいのだろう。全てにおいて満たされていくと言えばいいのか。私の不甲斐なさを恥ずかしいといえばいいのか。

 多分これはジェフさんが私に道を示せるようにと思いながら作った料理なんだろう。


『心を与えし者』か。


 世界の意思に踊らされる覚悟か。


「ジェフさん。ありがとうございます。」


「わかったならいい。」


 そう言って私の頭をぐしゃぐしゃと撫でていった。去り際に『そんなに睨まなくてもいいだろ。』と言っていたが、私は睨んでいないぞ。少々目つきは悪いかもしれないが


 その後は黙々と食べていた。何も話さず黙々と。その間、私の頭の中にはぐるぐるとある言葉が回っていた。私の定めとはなんだと。多分今回のことが大きく関わっているのだろう。

 私の好きなモノを作り人に与えること。そして、称号の『心を与えし者』。


 ただ、聖女様の言葉が頭を過る。私は今までと同じ様にすればいいのではないのかと思うのだが、簡単なことではないと言われた。

 覚悟か。


「リラちゃん、パフェ持ってきたにゃ。」


 ミーニャさんが食後のデザートを持ってきてくれた。


「ミーニャさん。覚悟ってなんですかね。」


 パフェを置いて去ろうとしているミーニャさんに思わず聞いてしまった。ミーニャさんに聞いてどうする!


「覚悟にゃ?リラちゃんは難しいことを考えているのかにゃ?」


「あ、いえ、なんでもないです。」


「リラちゃんは夢はあるかにゃ?私は家の宿屋を継ぐことにゃ。今はここで料理と客のあしらい方の勉強中にゃ。」


 料理はわかるが、客のあしらいって・・・。ここに食べに来るのは大半が冒険者だ。そんな客ばかりがくる宿屋なのか?

 私の夢か・・・パフェを一口食べる。やっぱこれだよね。


「美味しいものが食べたい。」


 うん。この一点に限る。時々、めっちゃ美味しいものがダンジョンに転がっていることがあるのだ。昨日手に入れたジェネラルオークの肉もそうだが、黄金のりんごも美味しかった。


「それは覚悟がいることかにゃ?」


「いらない。」


「じゃ、必要にゃいんじゃにゃいのかにゃ?」


 相変わらず『な』が『にゃ』になって聞き取りにくいな。

 覚悟はいらないか。元々、仕事としてパンを作って売っていたのに、それと同じことを定めとされているだけじゃないか。

 覚悟はいらない。うん。気が楽になった気がする。


「ミーニャさん。ありがとうございます。」


「お役に立てて嬉しいにゃ。」


 そう言ってミーニャさんは尻尾を立てて去って行った。

 しかし、私は隣で黙って座っているシエンに聞かなければならないことがある。


「質問なんだが、シエンが話した内容だと、別に私でなくてもいいよな。」


 そうなのだ。シエンの話した内容だと、料理スキルを持っているものだと浄化が可能だということだ。

 シエンを見てみればすごく傷ついた顔をしていた。何故だ。話の内容からいって、シエンを浄化する人物はシエンが探せばいい。そして、その人物が料理スキルを持っていればいいということだ。私である必要性は全くもってない。 


 シエンはテーブルに突っ伏して何かボソボソ言っているが、よく聞き取れない。『なんで分からないんだ。』とか『言っては駄目ってキツすぎるだろ。』とか言っている。

 話す気がないなら、お腹もいっぱいになったし帰っていいかな。


「話が終わったなら、私は帰る。結論は私でなくても大丈夫ということだった。」


 そう言って立ち上がったら、腕を掴まれてしまった。いや、もう話は終わっただろ?



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