2.助けてよ
「愛してる」
「私もだよ、かずくん」
私には、恋人がいる。
勿論、お父さんに話したことなどない。
「ねえ、今度さ家行っていい??ほら、今日は俺の家来てくれたじゃん。だから、今度は真紀の家行ってみたいな〜」
どきっ。
だめだ、家はだめ。お父さんがいる。私に彼氏がいるなんてバレたら、何をされるかわからないよ。
「むりかもしれないけど、考えとく!」
かずくんには、嫌な思いをさせたくない。私の、大切な人だから。
__________________…
「おい、早く来い」
「はい…」
「まったく、なんであいつなんかに文句言われないといけないんだよ」
お父さんが今めちゃくちゃイラついているのには、理由がある。
昨日、夜の生活音がうるさい、と隣の部屋の中村さんに注意されたのだ。私とお父さんが行為をしている音のことだろう。うちのマンションは、かなり壁が薄いみたいだ。
だから今夜は、ラブホテルに来ている。
18歳未満は入れないらしいけど、お父さん曰く、私は大人びているから大丈夫らしい。
嫌だな。かずくんともこんな所来たこともないのに。なんで私の初めては、お父さんに奪われるの。
「この部屋だ。」
三階の305号室だ。
はあ、嫌だな。今からしないといけないのか。
お父さんとそういうことをすることに、段々と慣れる、というか違和感を感じなくなって来ている。
私はもう、ダメなのかもしれない。
そんな事を考えていた時。
「ちょっとー、お客様」
「なんだ?店員か、何の用だよ」
「そちらのお客様は、未成年ですよね?」
私のことだ。え?なんでバレたの
「あなたも、実の娘に手を出しちゃダメですよ」
すると、警察の人がこちらに向かって来た!隠れていたらしい。
そして、お父さんは取り押さえられた。
「な、なんでだ?俺は何もしていない!悪くない!」
「さぁ、立て。警察署まで同行してもらう」
脳をフル回転させても、今の状況は理解できそうにない。
え?お父さんに犯されて、今日たまたまラブホテルにきたら、警察にお父さんが連行された…。
「大丈夫だよ、今まで辛かったね。もう、お父さんとは離れられるよ」
さっき助けてくれた、ラブホテルの店員さんが、声を掛けてくれた。
「もう、私は、大丈夫なの……?お父さんに怒られないの?大丈夫なの…?」
「大丈夫だよ、僕が守る」
涙がでてきた。ああ、そうか、そうだよね。
私、今までとっても辛かった。しんどかった。嫌だった。
でももう、大丈夫なんだ……
「うっ、うわあああん!」
私は泣いた、とにかく泣いた。
周りの人なんて気にせずに声を荒げて泣いた。
泣き疲れたのか、いつのまにか眠ってしまっていた。